著者
神尾 博代 中俣 修 古川 順光 信太 奈美 来間 弘展 金子 誠喜 柳澤 健
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.A1243, 2007 (Released:2007-05-09)

【目的】転倒の危険が少なく、より安定した立ち上がり動作を獲得することは重要である。片麻痺患者の場合、麻痺側を前方に位置した立ち上がり動作を日常生活活動として指導することが多い。そこで、足部位置を変化させることによって、その動作を遂行するためにどの程度の下肢関節モーメントが必要とされるのか把握することが必要であると考えられる。本研究では、足部を平行位にした場合と前後に置いた場合の立ち上がり動作を比較し、下肢関節モーメントについて分析することを目的にした。【方法】対象は健常成人11名(男性7名、女性4名)とした。ヘルシンキ宣言に基づいて、被験者に実験の目的・危険性等を説明し書面にて承諾を得た。立ち上がり動作の計測には、三次元動作解析装置VICON370(Oxford Metrics社製)および床反力計(kistler社製)を用いた。背もたれのない座面高を下腿長の高さとする、椅子からの立ち上がり動作を課題とした。このとき、上肢は体側に自然下垂位とし、スピードは被験者の最も楽に立ち上がれる速さとした。また、足部位置は肩幅の広さとし、一側足部を前方に置いた右前型、左前型、平行位に置いた揃え型の3種類とした。各試行とも3回ずつ行った。この時の下肢の股関節・膝関節の伸展モーメントの最大値をもとめ、各試行間での比較検討を行った。統計解析は分散分析および多重比較を行った。有意水準は5%未満とした。【結果および考察】揃え型、右前型、左前型における股関節・膝関節の最大伸展モーメントの平均値(SD)は、左股関節では揃え型が74.5(16.0)Nm、右前型が107.7(22.7)Nm、左前型が79.9(29.5)Nmであった。右股関節では揃え型が69.1(17.7)Nm、右前型が77.3(25.8)Nm、左前型が93.6(20.1)Nmであった。左膝関節では、揃え型が57.1(11.9)Nm、右前型が83.4(15.6)Nm、左前型が7.7(8.0)Nmであった。右膝関節では揃え型が63.1(18.0)Nm、右前型が11.1(10.1)Nm、左前型が91.8(22.6)Nmであった。一側下肢を前方に出すことで前方側の膝関節モ-メントは有意に小さくなった。しかし、前方側の股関節伸展モーメントは揃え型と比べてほとんど変化が見られず、後方側の股関節・膝関節モーメントは揃え型よりも有意に大きなモーメントを必要とすることがわかった。臨床場面で、麻痺側下肢を前方に出した位置での立ち上がり動作を指導する場面があるが、これらの結果から非麻痺側である後方側の股関節・膝関節伸展モーメントが十分に発揮できないと立ち上がることが困難になると考えられる。今後、片麻痺患者について検討することで確認を行いたいと考える。なお、本研究は本学の研究倫理審査委員会の承認を受けて実施した。
著者
神尾 博代 山口 三国 信太 奈美 古川 順光 来間 弘展 金子 誠喜
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.Eb1258, 2012 (Released:2012-08-10)

【はじめに、目的】 生活習慣病発症予防に効果があるとされる身体活動量は、1日当たりおよそ8,000~10,000歩に相当すると考えられている。しかし、ライフスタイルの変化や交通手段の進歩により、日本人の1日の歩数は男性、女性とも目標値に達するどころか、1日平均歩数は減少している。身体活動量の点から見るとパラメータとして歩数を増大させるだけではなく、歩容を変化させる方法もある。そこで、本研究では歩容調整によって、体重、体脂肪率、BMIを減少させることができるかについて検討することを目的とした。【方法】 健常若年女性24名を対象とし、ランダムに運動・ウォーキング実施群(Ex群)と対照群(C群)の2群に12名ずつ割り付けた。Ex群には日常生活の中で気軽に行える簡単な体操と歩容調整の指導をし、日常生活内で実施させた。体操の内容は1.立位での股関節の伸展、2.立位での重心の前方移動、3.背伸び、4.立位での前方リーチの4種類とした(山口式エクササイズに準拠)。また、歩行指導時の注意点は1.けり出し時、骨盤を後方回旋させず、股関節・膝関節をしっかりと伸展させる。2.けり出し時、踵が外側を向いたり内側を向いたりしないように真っ直ぐに蹴る。3.背すじを丸めたり、反りすぎたりしないようにするとした(山口式スタイルアップウォークに準拠)。C群には指導をせず、通常通りの日常生活を指示した。また、両群に生活習慣記録機(スズケン社製KenzライフコーダPLUS)を腰部に装着させ、起床時から入浴時を除く就寝まで、2週間継続して計測した。指導実施前と2週間経過後の身長・体重・BMI・体脂肪率を測定し、各項目の介入前後の差を求めた。また、2週間の歩数・総消費量・強度別の活動時間を計測した。ライフコーダの強度1~3を低強度(3METs以下)、強度4~6を中等強度(3~6METs)、強度7~9を高強度(6METs以上)とし、それぞれの1日の平均活動時間をもとめた。各項目は有意水準5%にて両群の平均値の差の検定を行った。【倫理的配慮、説明と同意】 被験者に対し実験の目的・方法・予想される結果・期待される利益・不利益・危険性・中途離脱の権利等について十分な説明を行い、実験参加の承諾書にて同意を得た。本研究は首都大学東京荒川キャンパス研究安全倫理委員会の承認を得て実施した。【結果】 1日の平均歩数(S.D.)は、Ex群が8598.2(1303.5)歩、C群は9146.9(2750.8)歩であり、歩数に有意差は無かった。しかし、Ex群の介入前後の体重およびBMIの差の平均(S.D.)は体重差-0.7(0.7)kg、BMI差-0.3(0.3)であり、C群の-0.1(0.6)kg、0.0(0.2)に比べて有意に減少していた(p<0.05)。また、体脂肪率の差の平均(S.D.)はEx群-1.7(1.0)%、C群は-0.8(1.3)%と減少傾向が見られた。また、2群間の3つの強度の1日当たりの平均活動時間(S.D.)はEx群が低強度54.8(11.1)分/日、中等強度29.0(7.6)分/日、高強度2.4(1.8)分/日、C群が低強度57.8(15.7)分/日、中等強度30.9(12.5分/日)、高強度3.6(2.1)分/日となり、有意差はみられなかった。総消費量の平均値もEx群1774.3(129.9)kcal、C群1847.6(209.9)Kcalと有意差がなかった。【考察】 Ex群とC群では、歩数や活動レベルを示す運動強度などの量的側面に関して、有意な差がみられなかった。しかし、Ex群でエクササイズ後の体重、BMIが有意に減少していることから、歩容調整により歩行に質的変化が生じ、歩行に使用していた筋活動に違いが生じたのではないかと考えられた。通常、生活動作としての歩行は、移動目的だけを満たす動作となることが多い。しかし、意図的に歩容としての身体の振る舞いを意識することで、歩行に参加する筋活動の増加が得られたものと考えられた。歩行は移動の手段であって、通常速度では運動としての負荷は低くなるが、歩容を意識変容させることで、筋活動の参加が増し、負荷運動として用いることができたのではないかと考えられた。今まで、生活習慣病の予防について歩数やスピードに着目されがちであったが、歩行そのものの質も重要であることが明らかになった。【理学療法学研究としての意義】 歩行を指導する際に、無理なくより効果的に生活習慣病の予防として歩行を活用していくために、量や運動強度だけではなく、歩行の質についての重要性が明らかになった。
著者
浅井 葉子 金子 誠喜 大津 慶子
出版者
日本保健科学学会
雑誌
日本保健科学学会誌 (ISSN:18800211)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.51-58, 2005-06-25 (Released:2017-10-27)
被引用文献数
2

椅子からの立ち上がり動作における体幹前傾角度の下肢関節モーメントへの影響を検討した。健常成人男性10名を対象に, 1)通常の立ち上がり, 2)できるだけ体幹を前傾しない立ち上がりを課題運動として設定し三次元動作解析装置を用いて計測を行った。体幹前傾角度の影響はすべての関節モーメントで認められ, 殿部離床時の体幹前傾角度と股関節最大伸展モーメントにもっとも大きな相関があった。2)では股関節伸展モーメントの減少と膝関節伸展モーメントの増加, 最大股関節・膝関節伸展モーメントの発揮の位相ずれ, 身体重心の後方化が認められた。そのため膝関節伸展筋の負担が増加すると思われた。さらに体幹の分節的運動性も関節モーメントに与える影響があることが示された。よって立ち上がり動作における体幹の分節運動獲得の必要性も示唆され, 各症例の機能障害にあわせた動作指導方法について確立していくことが今後の課題と考えられた。
著者
中俣 修 古川 順光 細田 昌孝 金子 誠喜
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.A0149, 2004 (Released:2004-04-23)

【目的】2関節筋であるハムストリングスは、股・膝関節角度の組み合わせにより下肢運動を制約する。この筋の柔軟性と動作との関係については立位体前屈動作に関する報告が多く、歩行との関係は明らかではない。歩行時の遊脚相後期は股関節屈曲・膝関節伸展運動の組み合わせの運動が生じるため、柔軟性低下は下肢運動を制約すると考えられる。そこで、本研究ではハムストリングスの柔軟性と歩容との関係について、歩幅および骨盤に対する遊脚側下肢の運動角との関係の検討を目的とした。【方法】本研究の実施にあたり本学研究倫理審査委員会の承認を受けた。対象は本研究に対して同意を得た健常男性15名(平均年齢21.5歳、平均身長171.3cm、平均体重63.4kg)であった。ハムストリングスの柔軟性は、背臥位膝関節伸展位での他動的股関節屈曲角度(SLR角)を指標とし、ゴニオメーターにて5°単位で測定した。被験者の体表上の骨指標部に反射マーカーを貼付後、トレッドミルAR-200(ミナト医科学)上を1)60 m/分、2)80 m/分、3)100 m/分、4)120m/分にて2分間歩行した。歩行開始1分目から30秒間を三次元動作解析装置VICON370(Oxford Metrics社製)にて計測し、10歩行周期分のデータを分析に用いた。分析には、右下肢のSLR角、右歩幅(身長により正規化した左右外果間の最大距離の矢状面への投影距離)、骨盤に対する股・膝関節の関節角度により決定される下肢全体の運動角度の指標として右歩幅算出時点での右下肢の下肢屈曲角(上前腸骨棘と第2仙椎棘突起を結ぶ線分と大転子と外果を結ぶ線分のなす角度の矢状面への投影角の歩行時と立位姿勢との差分)を用いた。SLR角度と各歩行速度における歩幅および下肢屈曲角度との相関の分析にはピアソンの相関係数を用い、危険率5%未満を有意とした。【結果】右SLR角度(平均値)は70.3°であった。右歩幅(平均値)は、1)30.5% 、2)35.1% 、3)39.6%、4)42.4% 、下肢屈曲角(平均値)は、1)18.1°、2)20.4°、3)23.3°、4)24.9°と歩行速度の増加に伴い増加した。SLR角と歩幅および下肢屈曲角には全ての歩行速度において有意な相関を認めなかった。【考察】今回の結果から、歩幅および下肢屈曲角はハムストリングスの柔軟性に関連せず、歩行速度に応じて一定範囲の変化で調整されるものと考える。今回、股・膝関節の影響の総和として下肢屈曲角度を指標としたため、各関節運動への影響について、さらに詳細な検討が必要である。【まとめ】ハムストリングスの柔軟性と歩行時の歩幅、遊脚相後期の骨盤に対する下肢全体の運動角には関連を認めなかった。
著者
中俣 修 山﨑 敦 古川 順光 金子 誠喜
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.A3O2034, 2010

【目的】体幹部は身体重量の約50%を占める大きな身体領域である。そのため、体幹筋には、体幹の姿勢の平衡状態を維持するために外力に応じて筋出力を調整する機能が求められる。立位では、体幹部の重心線が腰椎のすぐ近位を通過するため、姿勢保持に作用する体幹筋活動が小さい。しかし、変化は少ないながら腹横筋、内腹斜筋には、背臥位から立位への姿勢変換に伴い筋活動の増加を認め、この活動は内臓器の支持、仙腸関節の安定性に関与するとされる。立位における体幹筋活動、鉛直方向の運動負荷に対する体幹筋活動の特徴を明らかにすることは、重力に抗する姿勢保持メカニズムを考える上で重要であると考えられるが、鉛直方向の運動負荷と体幹筋の活動との関係を分析した報告は少ない。そこで、本研究では、跳躍動作により体幹部への鉛直方向の運動負荷を加えた際の腹筋群の筋活動に注目し、鉛直方向の運動負荷に対する腹筋群の活動の特徴を分析することを目的とした。<BR>【方法】対象は健常な大学生男性8名(平均年齢21.6歳、平均身長172.7cm、平均体重61.9kg)であった。体幹筋群の筋電位の計測にテレメーターシステムWEB-5000(日本光電社製)、腰部および膝関節の運動の計測に電気角度計(Biometrics社製)、動作中の加速度の計測には3軸加速度計(MicroStone社製)を用いた。体幹右側の腹直筋、外腹斜筋、内腹斜筋、脊柱起立筋(胸部)、多裂筋(腰部)を被験筋とした。座位にて腹筋群および背筋群の最大等尺性筋収縮(MVC)時の筋電図信号の計測を行った後、腰部および膝関節部に電気角度計、胸骨前面に3軸加速度計を取り付けた。課題動作は跳躍動作とした。被験者には両手を胸の前方で組ませ、体幹部を直立に維持した状態で縄跳びを跳ぶ程度の跳躍動作を15~20回程度反復させた。計測した筋電位・関節角度・加速度の信号をA-D変換器 (AD instruments社製)を介してコンピュータに取り込んだ。体幹の加速度変化および膝関節運動の特徴から跳躍動作の周期(跳躍周期)を決定し、連続した3回の動作を任意に抽出した。跳躍周期における各筋の積分筋電図値を算出した後に跳躍周期の時間で除し、単位時間あたりの積分筋電図値(跳躍動作積分筋電図値)を算出した。さらに跳躍動作積分筋電図値を、MVC実施時の単位時間あたりの積分筋電図値を用いて正規化し、跳躍動作積分筋電図値(%MVC)を算出した。3周期の平均値を分析に用いた。跳躍動作における腹直筋、外腹斜筋、内腹斜筋の跳躍動作積分筋電図値の相違の分析には、Kruskal-Wallis検定を用い、有意差を認めた場合にはBonferroniの不等式による修正を利用し多重比較を行なった。<BR>【説明と同意】研究への参加にあたり、被験者には書面および口頭にて十分な説明を行った後、実験参加の同意を得て実施した。<BR>【結果】跳躍動作積分筋電図値(%MVC)の平均値(標準偏差)は、腹直筋:3.5(1.9)%、外腹斜筋:9.4(5.4)%、内腹斜筋:28.9(9.5)%であった。筋間の筋活動量には有意差を認め(P=.025)、腹直筋、外腹斜筋、内腹斜筋の組み合わせ全てに有意差を認めた(P<.01)。<BR>【考察】跳躍動作周期における筋活動量の分析結果から、腹直筋の筋活動が小さく、内腹斜筋の筋活動が大きい特徴を認めた。この特徴は、ドロップジャンプについて分析を行なった河端らの研究結果とも類似したものであった。今回、計測を行った内腹斜筋部位は、骨盤内を横行するため直接的な脊柱運動への関与はなく、主として骨盤部の安定性、内臓器の支持に関与するとされる。跳躍動作では立位と比較し体幹部にはより大きな圧迫負荷が加わること、内臓器に作用する慣性力が作用する。そのため内腹斜筋部に大きな筋活動を生じたと考えられる。今回の結果より、鉛直方向の運動においては、腹筋群の役割は異なり、腹直筋よりも側腹筋、特に内腹斜筋の役割が大きく関与すると考える。<BR>【理学療法学研究としての意義】本研究では跳躍動作時の体幹筋活動を分析することにより、鉛直方向への運動刺激に対する腹筋群の活動の特徴を検討した。立位姿勢を保持するメカニズムの検討、立位姿勢の指導や荷重位での体幹筋トレーニングを検討する視点として意義が大きいと考えられる。<BR>
著者
桑原 知佳 柴 喜崇 坂本 美喜 佐藤 春彦 金子 誠喜
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.38, no.7, pp.505-515, 2011-12-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
22

【目的】発達に伴い変化する背臥位からの立ち上がり動作の完成までの,動作パターンおよび動作所要時間の変化を縦断的に調査し,発達に伴う健常児の立ち上がり動作の変遷を明らかにする。【方法】健常児11名を対象とし,平均年齢4歳0ヵ月から1年ごとに6年間継続して立ち上がり動作を観察し,動作パターン,個人内の動作パターンの一致率,動作所要時間の変化を調査した。【結果】立ち上がり動作パターンは,階段状に難易度が高い動作に変化し,8歳10ヵ月以降変化が生じなかった。動作が変化した時期には,個人内でも様々な動作パターンが観察された。また,動作所要時間は発達に伴い短くなり,動作パターンの変化が終了後も短くなった。【結論】縦断調査により,立ち上がり動作は,非線形に変化をしながら9歳頃に完成することが明らかになった。動作獲得においては,個人内・個人間の多様性に富み,個々に適切な動作を選択しながら発達していくことが示唆された。
著者
望月 久 金子 誠喜
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.205-213, 2009 (Released:2009-05-28)
参考文献数
17
被引用文献数
10 2

[目的]パフォーマンスに基づく臨床的なバランス能力評価指標開発のための実施したアンケート調査の結果を報告する。[対象]バランスに関する研究報告がある理学療法士23名より回答を得た。[方法]郵送法にてアンケート調査を実施した。質問項目はバランスの定義,バランス能力測定の枠組み,臨床的なバランス能力測定法に必要な条件,バランス能力測定の現状などとした。[結果]バランスの定義やバランス能力測定の枠組みは理学療法士間での意見の違いがあった。臨床的なバランス能力評価指標としては,測定時間の短いこと,結果の客観性,結果の臨床的意味などが重視されていた。また,現在使用されている評価指標についても,測定の簡便性や結果の臨床的な有用性など,実用性の面では種々の問題があることが確認できた。[結語]今回の結果を参考に,より実用的な臨床的バランス能力評価指標を考案したいと考えている。
著者
中俣 修 山﨑 敦 金子 誠喜
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.38 Suppl. No.2 (第46回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.AbPI2117, 2011 (Released:2011-05-26)

【目的】身体の鉛直方向への運動を反復する跳躍動作については、主に下肢関節運動に着目され研究がなされている。動作中にほぼ直立位に保持されている体幹部では観察される関節運動は少ないものの、身体長軸方向に繰り返し加わる負荷に対して体幹姿勢を保持するための姿勢制御が必要となる。このような体幹長軸方向に加わる運動負荷に対する体幹運動の特徴を明らかにすることは、重力に抗した姿勢保持や運動時の体幹機能を考える上で重要であると考える。そこで本研究では跳躍動作における体幹運動を、1)身体全体の運動との関連性、2)跳躍高による影響という観点から分析することを目的とした。【方法】対象は健常な大学生男性6名(平均年齢21.2歳、平均身長171.6cm、平均体重57.1kg)であった。計測には、3次元動作解析装置(VICON MX)および床反力計を用いた。身体標点としてVicon社の Plug in gait full bodyモデルにより定められた所定の35点に反射マーカーを貼付した。課題は4種類の動作ピッチ(100・120・140・160回/分)での跳躍動作とした。被験者には肘関節伸展位・前腕回外位・手指伸展位、肩関節軽度外転位とさせた状態で15~20回程度跳躍動作を反復させた。被験者には跳躍高を調整してメトロノームのピッチ音に合わせて動作を行うように指示した。Plug in gait full bodyモデルにより算出した胸郭角度、骨盤角度、脊柱角度(胸郭と骨盤の相対角)の矢状面成分を体幹運動の指標として、身体重心の鉛直方向空間座標(以下、重心鉛直位置)、床反力計の鉛直方向成分の左右合計値(以下、床反力鉛直成分)を身体全体の運動の指標として用いた。床反力鉛直成分の変化をもとに接地時点から再び接地するまでを跳躍周期、接地している期間を接地相、離地している期間を離地相と定義した。跳躍周期における胸郭角度、骨盤角度、脊柱角度、重心鉛直位置と床反力鉛直成分の関係について分析した。また動作周期中の胸郭角度・骨盤角度・脊柱角度の変化角度(以下、胸郭運動角、骨盤運動角、脊柱運動角)、重心鉛直位置の鉛直方向の移動距離(以下、重心移動距離)について連続する3周期分の平均値を算出し統計学的分析に用いた。動作ピッチによる胸郭運動角、骨盤運動角、脊柱運動角、重心移動距離の相違の分析には、Friedman検定を用いた。【説明と同意】研究への参加にあたり、被験者には書面および口頭にて説明を行った後、書面にて実験参加の同意を得て実施した。【結果】重心鉛直位置は接地相にて最下点、離地相にて最高点を生じる周期的な変化を示した。床反力鉛直成分は身体重心の最下点付近でピークとなった。接地相において重心鉛直位置が最下点、床反力鉛直成分が最大となる際に胸郭角度・脊柱角度が最大屈曲、骨盤角度が最大後傾となり、その後伸展・前傾運動に転じた。離地相の初期に胸郭角度・脊柱角度が最大伸展、骨盤角度が最大前傾となった。これらの特徴は動作ピッチによらず類似していた。動作ピッチ(100・120・140・160回/分)による重心移動距離の平均値(cm)は26.8・19.7・14.6・10.8であり、重心移動量に相違を認めた(p<0.05)。動作ピッチ(100・120・140・160回/分)による運動角の平均値(°)は、胸郭運動角:7.7・5.7・3.7・3.4、骨盤運動角:5.5・5.4・4.8・5.0、脊柱運動角:12.5・10.0・8.1・7.9、で動作ピッチの小さい方が運動角が大きい傾向にあったものの統計学的には有意差を認めなかった。【考察】本研究では跳躍動作における体幹運動について、身体全体の運動との関係、跳躍高との関係に着目した。その結果、身体重心および床反力鉛直成分の変化と関連して運動を生じることが確認できた。特に接地相においては重心が最下点に達した後、上行する運動へと切り替わる際に大きな鉛直方向の負荷を受けることとなる。この際に体幹では一定の姿勢が保持されるのではなく、床反力の変化と協調的に若干の運動を生じていた。これは脊柱に加わる衝撃吸収や下肢にて発揮させる力を効率的に体幹に伝えることに作用する反応と考える。【理学療法学研究としての意義】跳躍動作では身体全体の運動と関連して体幹運動が協調的に生じていた。この結果は、抗重力位での身体運動における体幹の運動学的特徴を明らかにする一助になると考える。
著者
神尾 博代 山口 三国 信太 奈美 古川 順光 来間 弘展 金子 誠喜
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Eb1258, 2012

【はじめに、目的】 生活習慣病発症予防に効果があるとされる身体活動量は、1日当たりおよそ8,000~10,000歩に相当すると考えられている。しかし、ライフスタイルの変化や交通手段の進歩により、日本人の1日の歩数は男性、女性とも目標値に達するどころか、1日平均歩数は減少している。身体活動量の点から見るとパラメータとして歩数を増大させるだけではなく、歩容を変化させる方法もある。そこで、本研究では歩容調整によって、体重、体脂肪率、BMIを減少させることができるかについて検討することを目的とした。【方法】 健常若年女性24名を対象とし、ランダムに運動・ウォーキング実施群(Ex群)と対照群(C群)の2群に12名ずつ割り付けた。Ex群には日常生活の中で気軽に行える簡単な体操と歩容調整の指導をし、日常生活内で実施させた。体操の内容は1.立位での股関節の伸展、2.立位での重心の前方移動、3.背伸び、4.立位での前方リーチの4種類とした(山口式エクササイズに準拠)。また、歩行指導時の注意点は1.けり出し時、骨盤を後方回旋させず、股関節・膝関節をしっかりと伸展させる。2.けり出し時、踵が外側を向いたり内側を向いたりしないように真っ直ぐに蹴る。3.背すじを丸めたり、反りすぎたりしないようにするとした(山口式スタイルアップウォークに準拠)。C群には指導をせず、通常通りの日常生活を指示した。また、両群に生活習慣記録機(スズケン社製KenzライフコーダPLUS)を腰部に装着させ、起床時から入浴時を除く就寝まで、2週間継続して計測した。指導実施前と2週間経過後の身長・体重・BMI・体脂肪率を測定し、各項目の介入前後の差を求めた。また、2週間の歩数・総消費量・強度別の活動時間を計測した。ライフコーダの強度1~3を低強度(3METs以下)、強度4~6を中等強度(3~6METs)、強度7~9を高強度(6METs以上)とし、それぞれの1日の平均活動時間をもとめた。各項目は有意水準5%にて両群の平均値の差の検定を行った。【倫理的配慮、説明と同意】 被験者に対し実験の目的・方法・予想される結果・期待される利益・不利益・危険性・中途離脱の権利等について十分な説明を行い、実験参加の承諾書にて同意を得た。本研究は首都大学東京荒川キャンパス研究安全倫理委員会の承認を得て実施した。【結果】 1日の平均歩数(S.D.)は、Ex群が8598.2(1303.5)歩、C群は9146.9(2750.8)歩であり、歩数に有意差は無かった。しかし、Ex群の介入前後の体重およびBMIの差の平均(S.D.)は体重差-0.7(0.7)kg、BMI差-0.3(0.3)であり、C群の-0.1(0.6)kg、0.0(0.2)に比べて有意に減少していた(p<0.05)。また、体脂肪率の差の平均(S.D.)はEx群-1.7(1.0)%、C群は-0.8(1.3)%と減少傾向が見られた。また、2群間の3つの強度の1日当たりの平均活動時間(S.D.)はEx群が低強度54.8(11.1)分/日、中等強度29.0(7.6)分/日、高強度2.4(1.8)分/日、C群が低強度57.8(15.7)分/日、中等強度30.9(12.5分/日)、高強度3.6(2.1)分/日となり、有意差はみられなかった。総消費量の平均値もEx群1774.3(129.9)kcal、C群1847.6(209.9)Kcalと有意差がなかった。【考察】 Ex群とC群では、歩数や活動レベルを示す運動強度などの量的側面に関して、有意な差がみられなかった。しかし、Ex群でエクササイズ後の体重、BMIが有意に減少していることから、歩容調整により歩行に質的変化が生じ、歩行に使用していた筋活動に違いが生じたのではないかと考えられた。通常、生活動作としての歩行は、移動目的だけを満たす動作となることが多い。しかし、意図的に歩容としての身体の振る舞いを意識することで、歩行に参加する筋活動の増加が得られたものと考えられた。歩行は移動の手段であって、通常速度では運動としての負荷は低くなるが、歩容を意識変容させることで、筋活動の参加が増し、負荷運動として用いることができたのではないかと考えられた。今まで、生活習慣病の予防について歩数やスピードに着目されがちであったが、歩行そのものの質も重要であることが明らかになった。【理学療法学研究としての意義】 歩行を指導する際に、無理なくより効果的に生活習慣病の予防として歩行を活用していくために、量や運動強度だけではなく、歩行の質についての重要性が明らかになった。