著者
石井 圭史 川口 哲 渡邊 吾一 神谷 智昭 石川 一郎 山下 敏彦
出版者
南江堂
雑誌
臨床雑誌整形外科 (ISSN:00305901)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.1-4, 2012-01-01

急性腰痛で受診した47例を対象に、MRI撮像により椎体骨折と診断した28例(男2例、女26例、平均76.8歳;椎体骨折群)とそれ以外の19例(男5例、女14例、平均76.2歳;非椎体骨折群)に分け、sit-up-lie-down(S-L)テストの有用性について検討した。S-Lテストは患者を診察台に寝かせ、起き上がり或いは寝そべりのいずれかで腰痛が誘発されれば陽性とした。その結果、椎体骨折群28例中26例が陽性で、椎体骨折に対する感度は92.9%、特異度52.6%であった。棘突起叩打痛が有ったのは64.3%であった。日整会腰痛評価質問票で感度80%を超えたのは腰椎機能障害6項目4項目、歩行機能障害5項目中2項目で、疼痛visual analogue scaleは両群間で有意差はなかった。座位・仰臥位X線では椎体骨折群28例中23例で椎体前壁高変化を認め、非椎体骨折群には変化がなく、感度82.1%、特異度100%であった。S-Lテストは椎体骨折の簡便な診断法として有用であることが示された。
著者
高田 雄一 神谷 智昭 渡邉 耕太 鈴木 大輔 藤宮 峯子 宮本 重範 内山 英一
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.Ab0445, 2012 (Released:2012-08-10)

【はじめに、目的】 足のアーチ構造は1Gの重力場でヒトの歩行時に有用な働きをしている。後脛骨筋は足アーチを支える重要な動的支持組織であると報告され、後天性扁平足の主な原因は後脛骨筋機能不全だと言われている。足ア−チは骨・関節・靱帯による静的なサポートと筋肉による動的なサポートが互いに協力することにより、重力に逆らい直立二足歩行する人体の重さを支えている。適度な弾性をもった足ア−チは歩行時の衝撃を緩和し、より中枢の関節を保護している。この力学的特性を解明するためには、1回の荷重負荷試験から求められる足アーチの単なる破断強度ではなく、日常生活で実際に骨・関節・靱帯にかかる生理的負荷領域での繰り返し負荷試験(fatigue test,疲労試験)により足アーチの疲労特性を調べることにより、はじめて、より適切な生理的負荷領域での足アーチの力学特性を解明することができる。本研究の目的は反復垂直荷重時に、足内側縦アーチに対する後脛骨筋の動的な効果を検討することである。【方法】 未固定凍結下肢標本を14肢使用した。平均年齢は82歳(59-92歳)だった。標本は7肢ずつ、後脛骨筋牽引群と後脛骨筋非牽引群の2群に分けた。足アーチの疲労特性を計測するために、医療機器開発メーカーであるメディセンス(株)と共同で繰り返し荷重システム、制御・解析アプリケ−ションの開発を行った。万能試験機(株式会社 島津製作所,AG-I)、LEDマーカ(株式会社 パナソニック,1.6 x 0.8 mm 矩形赤色発光ダイオード)とCCDカメラ(株式会社メディセンス,解像度640x480 pixels)で構成する微小変位解析システム、反復荷重負荷システムと組み合わせによる繰り返し荷重−変位解析システムの開発を行った。下腿を中1/3で切断し、専用ジグで固定した標本に万能試験機を用いて、0-500N,1Hzで反復軸荷重を10,000サイクル負荷した。舟状骨高の計測は舟状骨内側に設置したLEDの位置情報を経時的に測定し、それを座標軸に変換して記録した。後脛骨筋牽引群は軸荷重に同期したステップモ−タ(株式会社 メディセンス,最大トルク 6 kg・cm, 回転速度 60 deg / 0.1 sec)荷重負荷システムを用い後脛骨筋腱中枢部をワイヤーでロ−ドセルを介して反復荷重した。そして垂直荷重に同期して、後脛骨筋の筋収縮を模した0-32Nの牽引力が発生するように設定した。最小荷重時と最大荷重時の足ア−チの高さの変化は舟状骨高を足底長で除したBony Arch Index(BAI)で評価し、BAI<0.21をlow archとした。後脛骨筋牽引群と後脛骨筋非牽引群でそれぞれ1,000 cyclesごとの値で両群間を比較し、統計処理はstudent‘s t-test により、有意水準は 5%とした。【倫理的配慮、説明と同意】 遺体は、死亡後24時間以内に本学医学部解剖学第二講座に搬送され、本人の生前同意と死亡後の家族の同意が得られている。【結果】 最大荷重時BAIの初期値は後脛骨筋牽引群0.239±0.009、後脛骨筋非牽引群0.239±0.014だった。両群共に最初の1,000サイクルでBAIは大きく低下した。その後、後脛骨筋牽引群の平均BAIはほぼ一定の値で経過し、10,000サイクルで0.212±0.011となった。一方で後脛骨筋非牽引群のBAIは徐々に低下し続け、3,000サイクルでlow archの基準となるBAI<0.21になった。7,000サイクル以降で両群間に有意差を認め、後脛骨筋牽引群は内側縦アーチが維持されていた。【考察】 本研究結果で後脛骨筋牽引群の平均BAIは、最終的に荷重時BAI>0.21を維持した。このことは反復荷重条件においても後脛骨筋が内側縦アーチ保持に重要であることを示した。一方、後脛骨筋非牽引群では最終的にlow archの基準に至ったことから、静的支持組織のみでは内側縦アーチ保持が困難であることがわかった。【理学療法学研究としての意義】 本研究は扁平足変形の主原因である後脛骨筋機能不全に対する運動療法やその予防に有用な情報を提供すると考えられた。
著者
大坪 英則 鈴木 大輔 神谷 智昭 鈴木 智之 山下 敏彦 史野 根生
出版者
金原出版
巻号頁・発行日
pp.1481-1488, 2018-11-01

要旨:近年,膝前十字靱帯(ACL)再建術では,形態的にも機能的にも正常靱帯に近い靱帯を再建するために,正常靱帯付着部に骨孔を作成し自家腱を移植固定する解剖学的再建術が行われている。われわれは,新鮮屍体膝を用いた解剖学的研究を行い,ヒト正常ACLは,前内側線維束(AM束)と後外側線維束(PL束)の2線維束に分けられ,さらにAM束は内側部分(AM-M束)と外側部分(AM-L束)に分けられ,3線維束を構成することを明らかにした。さらに,線維束の配列と断面積計測,付着部位置および面積計測,MRIによる生体内画像解析,透過型電子顕微鏡(TEM)によるコラーゲン線維の微細構造についての詳細な検討を行い,ACL 3線維束の解剖学的な特徴を明らかにした。これの結果は,各線維束が力学的に異なる役割を担っていることを示しており,靱帯再建術式の決定や移植腱の選択においては,これらの線維束構造の機能解剖学的特徴を十分に考慮すべきである。