- 著者
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神馬 征峰
- 出版者
- 日本健康教育学会
- 雑誌
- 日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
- 巻号頁・発行日
- vol.21, no.3, pp.253-261, 2013 (Released:2014-09-05)
- 参考文献数
- 5
- 被引用文献数
-
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背景:健康教育やヘルスプロモーションによる行動変容は最重要課題の一つである.しかしながら,これらの戦略をもってしても,行動変容が難しい場合がある.本稿では行動変容の一つの手段として,Positive Deviance Approachを紹介することを目的とする.内容:他の人たちと同じ課題を抱えているにもかかわらず,その課題をよりうまく解決する人を positive deviant,その行為をpositive devianceという(本稿では以下いずれもポジデビと称する).1990年,米国のNGO,Save the Childrenがベトナムの4つの村で栄養調査を行った結果,3歳未満児の64%が栄養不良であった.ということは,36%は栄養不良ではない,ということでもある.この36%の中でポジデビを探した結果,見えてきた特徴は以下のようであった.「田んぼや畑からお金のかからない食品を入手している」,「汚れたら子供の手を随時洗わせている」,「子供が1日に食べる回数を2回から4,5回に増やしている」.これに基づいたポジデビ・アプローチをとることによって,7年間で 50,000人以上の子供たちの栄養状態が改善した.その後さらにこのアプローチは,院内感染対策,乳幼児死亡改善策,肥満対策,妊婦の栄養対策などに用いられ,困難な行動変容課題を克服してきた.結論:ポジデビ・アプローチは行動変容が困難な健康課題を克服するための手段として有効に使える.日本でも今後これが広がっていくことを期待したい.老人対策,震災後の地域保健対策,学校のいじめ対策などに,このアプローチは使える可能性がある.