著者
福地 龍郎
出版者
山梨大学教育学部
雑誌
山梨大学教育学部紀要 (ISSN:24330418)
巻号頁・発行日
no.31, pp.137-154, 2021-02-22

日本で最も活動的な変動地帯である日本アルプスの縁に位置している糸魚川-静岡構造線(糸静線)活断層系沿いで発生している地震の詳細な震源分布図(平面図及び断面図)を作成し,2011年東北地方太平洋沖地震(M9.0)後の地震活動性を評価した。その結果,諏訪湖の北西方地域の糸静線活断層系沿いにおける地震活動は現在でも活発であり,2つの地震空白域が依然として存在することが判明した。また,糸静線活断層系沿いで発生する地震から求められる発震機構(メカニズム解)は,西北西-東南東方向の圧縮軸を持つ横ずれ断層型の地震が諏訪湖周辺で起こっていることを示しており,糸静線活断層系の中で最も活動的な牛伏寺断層が活動した場合,牛伏寺断層と同じく,西北西-東南東方向~東西方向の圧縮軸を持つ横ずれ断層である釜無山断層群が連動して活動する可能性が高いことが判明した。一方,2020年4月以来,長野・岐阜県境付近で発生している一連の地震活動については,2020年8月末現在,糸線活断層系沿いの地震活動には全く変化が見られないことから,これら一連の地震活動が糸静線活断層系に与える影響はほとんどないと考えられる。
著者
岡田 真介 坂下 晋 今泉 俊文 岡田 篤正 中村 教博 福地 龍郎 松多 信尚 楮原 京子 戸田 茂 山口 覚 松原 由和 山本 正人 外處 仁 今井 幹浩 城森 明
出版者
社団法人 物理探査学会
雑誌
物理探査 (ISSN:09127984)
巻号頁・発行日
vol.71, pp.103-125, 2018 (Released:2018-12-28)
参考文献数
43
被引用文献数
2

活断層の評価を行うにあたっては,断層の地下形状も重要な情報の1つである。地下数十m以深の情報は,主に物理探査の結果から得ることができる。これまでには,物理探査は横ずれ活断層にはそれほど多く適用されてこなかったが,本研究では各種の物理探査を行い,横ずれ活断層に対する物理探査の適用性について検討した。対象地域は,近畿地方北西部の花崗岩地域に分布する郷村断層帯および山田断層帯として,4つの測線において,多項目の物理探査(反射法地震探査・屈折法地震探査・CSAMT探査・重力探査)を実施した。その結果,反射法地震探査は,地表下200〜300 m程度までの地下構造を,反射面群の不連続としてよく捉えていた。しかし,活断層の変位のセンスと一致しない構造も見られ,他の物理探査の結果と比較する必要があることがわかった。屈折法地震探査は,原理的に断層の角度を限定することは難しいが,横ずれ活断層の運動による破砕の影響と考えられる低速度領域をよく捉えることができた。CSAMT探査では,深部まで連続する低比抵抗帯が認められ,地下の活断層の位置および角度をよく捉えていたが,活断層以外に起因する比抵抗構造変化も捉えていることから,他の探査との併用によって,その要因を分離することが必要である。重力探査は,反射法地震探査と同様に上下変位量の小さい横ずれ活断層に対しては適さないと考えられてきたが,測定の精度と測定点密度を高くすることにより活断層に伴う重力変化を捉えることができた。