著者
福島 孝治 近藤 洋一郎
出版者
物性研究刊行会
雑誌
物性研究 (ISSN:07272997)
巻号頁・発行日
vol.94, no.2, pp.137-169, 2010-05-05

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著者
福島 孝治
出版者
日本神経回路学会
雑誌
日本神経回路学会誌 (ISSN:1340766X)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.305-312, 2007-12-05 (Released:2008-11-21)
参考文献数
13
被引用文献数
1 1

物理のいろいろな分野にスケーリング理論と呼ばれる理論が沢山あり, それぞれの分野で重要な寄与を与えている. 今の世界から長さを2倍大きくすると, 物事はどのようにみえるか? この素朴な問いに答えることが, 「スケーリング理論」に共通する基本的な考え方である. ここではスケーリング理論を概観しながら, その特徴を解説してみたい. 特に, スケーリング理論の考え方を用いて, 計算機実験により有限のスケールで得られた情報から無限大の世界の性質を抽出する方法を紹介する.
著者
田村 亮 長谷 正司 福島 孝治
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.76, no.10, pp.652-657, 2021-10-05 (Released:2021-10-05)
参考文献数
11

「物質のハミルトニアンを知りたい」,物性研究者なら誰でも思うことだろう.しかし,対象物質の実験結果を説明できるハミルトニアンを構築するのは,一筋縄にはいかない.ハミルトニアンの関数系,含まれるパラメータ値を決定するためには,多くの試行錯誤が必要となるためである.この煩雑な作業を回避するにはどうしたらよいだろうか.近年注目されている機械学習をはじめとしたデータ駆動手法の利用が一つの道筋だろう.我々は機械学習を利用することで,実験・観測データからハミルトニアンを推定する手法を開発した.ハミルトニアンを推定するために,実験データが与えられた際のハミルトニアンの事後確率を定義する.ベイズ推定を利用することで,この事後確率は,ハミルトニアンが与えられた際の測定ノイズを含めた実験データの尤度(計算物質科学手法により評価可能)および事前分布で表すことができる.事前分布は,推定するハミルトニアンに対する事前知識を表し,推定対象に適した分布を導入する必要がある.このようにして定義された事後確率を最大とするハミルトニアンが最も実験・観測データを説明できると推定される.しかしながら,この事後確率の最大条件探索は,使用する計算物質科学手法によっては簡単ではない.あるパラメータの組における事後確率の値は,対象とする物理量を計算物質科学手法により評価することで得られる.そのため,計算に時間がかかる場合,最大条件を見つけるのは困難である.これを克服するために,機械学習が使える.機械学習を利用することでできるだけ少ない試行回数でよりよい条件を探索することができるベイズ最適化を,事後確率の最大条件探索に利用した.テストケースとして,1次元量子スピン系に対して適用した.ベイズ最適化を用いることで,物理学でよく利用されるマルコフ連鎖モンテカルロ法や勾配法よりも物理量の計算回数が少なくても,よりよい最大条件を見つけ出せることがわかった.一方で,ベイズ最適化を用いると実験データを説明できるハミルトニアンを高速に導出することはできるが,事後確率の最大条件だけでは,観測ノイズを見積もることはできない.そこで,マルコフ連鎖モンテカルロ法によって事後確率を詳しく解析することで観測ノイズを求め,推定されたハミルトニアンに誤差をつける手法を開発した.このように開発された手法の有用性を示すために,実際の実験系への適用として,低次元量子スピン系KCu4P3O12に対して高磁場測定で得られた磁化過程および帯磁率の実験結果から,スピンハミルトニアンを推定した.その結果,推定されたスピンハミルトニアンは,実験データをよく再現できた.また,磁気的相互作用の誤差も見積もることができた.推定されたスピンハミルトニアンを用いることで,実験室レベルでは直接見積もることが難しい,スピンギャップや磁気エントロピーなども予測することができる.つまり,“高価”な実験なしに物質を理解できるため,ハミルトニアン推定は物質開発のコスト削減に繋がり,新物質の発見を加速させるだろう.また,この手法は,ハミルトニアンが定義でき,入力する実験・観測データを計算できる計算手法があれば利用することができる.物理学における様々な分野において,広く応用できる手法である.
著者
福島 孝治
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究は、データ駆動型の研究方法を物性物理の分野で展開することである。まず磁化曲線の観測データを入力として、これまでの経験的な理論モデルの構築に機械学習の技法を援用する方法を提案した。複数の候補から適切なモデル選択が可能となった。その結果、スピン構造など実験的に観測が難しい情報へのアクセスが可能となり、その後の実験計画に役立てられるようになった。さらに、扱う系を量子系に展開するためにはベイズ最適化の手法が有力であることがわかった。一方、大規模施設からのデータを想定して、中性子散乱実験のスペクトルから緩和時間分布を推定する問題に着手し、実データ解析も含めた新しい方向性を示すことができた。