著者
金 炫禛 伊勢 紀 増澤 直 福田 正浩 小川 博 安藤 元一
出版者
日本湿地学会
雑誌
湿地研究 (ISSN:21854238)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.17-27, 2019 (Released:2019-06-21)
参考文献数
49

希少動物の保全計画を策定するには広域における生息環境の情報が求められることから,地理情報システム(GIS)を用いて日本の環境におけるカワウソの生息可能性を探った.韓国におけるカワウソの痕跡に基づいた生息地情報をもとに日本の環境における本種の生息適地を類推することを目的に,韓国全域におけるポテンシャル・ハビタット・マップを作成した.日本においても広い範囲でカワウソの生息適地が抽出され,その環境は韓国のカワウソの糞がよく見つかる環境に似ていた.本研究の結果からは,日本にも韓国のカワウソの生息地と類似した環境があることが明らかになったため,日本における現在の環境でカワウソは生息できると考えられる.
著者
小松 輝久 三上 温子 鰺坂 哲朗 上井 進也 青木 優和 田中 克彦 福田 正浩 國分 優孝 田中 潔 道田 豊 杉本 隆成
出版者
日本海洋学会
雑誌
沿岸海洋研究 (ISSN:13422758)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.127-136, 2009-02-27

海面に浮遊している藻類や海草のパッチは流れ藻と呼ばれ,世界の海で見られる.日本周辺では,ホンダワラ類がそのほとんどを占めている.ホンダワラ類は,葉が変形し,内部にガスを貯め浮力を得ることのできる気胞を有しており,繁茂期には数メートルにまで成長する.沿岸から波などにより引き剥がされた後,その多くは海面を漂流し,流れ藻となる.東シナ海の流れ藻の起源を,固着期と流れ藻期のアカモクの分布調査,遺伝子解析,衛星位置追跡ブイ調査をもとに推定した.その結果,中国浙江省沖合域の島嶼沿岸から流出している可能性が示された.ホンダワラ類の流れ藻は,漂流中も光合成,成長などの生物活動を行っている.伊豆半島下田地先のガラモ場での現地調査および陸上水槽実験を通じて,流れ藻の発生時期とその量,成長,成熟,光合成速度,浮遊期間を調べた.最後に,ホンダワラ類にとっての流れ藻期の生態的意義について議論した.