- 著者
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秋廣 高志
- 出版者
- 島根大学
- 雑誌
- 研究活動スタート支援
- 巻号頁・発行日
- 2009
本研究の目的は、ナス科植物の果実にグルタミン酸が高蓄積するメカニズムを明らかにすることである。トマトの緑熟果実にはGABAが高蓄積し、赤熟期に入ると急速に代謝される。その一方で、グルタミン酸は赤熟期に高蓄積することが知られている。本研究ではGABAからグルタミン酸を合成する酵素(GABAアミノ基転移酵素;GABA-TK)がこの現象に深く関与していと考え、GABA-TKタンパク質をゲノム情報が整備されたイネから単離することとした。まず一年中利用可能な材料である杯盤由来のイネカルスを、実験材料として用いることが可能であるかについて調査を行った。その結果、トマトの約1/100程度ではあるが酵素活性が存在することが分かった。続いて、GABA-TK活性が最も高い培養条件を明らかにする目的で、カルス中のGABA含有量の変化を継時的に調査した。その結果、継代後5日目にGABAが急速に代謝されることが分かった。この結果から、経代後5日目のカルスを初発材料にし、GABA-TKタンパク質を精製することが最適であると判断した。GABA-TKの酵素活性を指標として、硫安沈殿、陰イオン交換クロマトグラフィー、脱塩、バッファー交換、限外濾過の条件検討を行った。この条件検討と並行して、GABA-TK酵素活性の測定方法の高感度化についても検討を行った。これまでは、GABA-TKの反応産物であるグルタミン酸をグルタミン酸脱水素酵素で分解し生成するNADH量を蛍光分光光度計で測定していた。この方法は感度は高いがバックグラウンドが高く、特異性も低い。そこで、グルタミン酸を蛍光標識物質NDFで標識した後、超高速液体クロマトグラフィーを使って分離し、蛍光分光高度計で検出する方法の構築を行った。その結果、100fmol程度のグルタミン酸を測定することができる実験系の構築に成功した。