著者
立花 孝志
出版者
青林堂
雑誌
ジャパニズム
巻号頁・発行日
vol.36, pp.56-59, 2017-04
著者
上田 泰之 田中 洋 亀田 淳 立花 孝 信原 克哉
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2014, 2015

【はじめに,目的】投球障害肩の治療・予防を考える上で,投球動作中の肩関節に加わる力学的ストレスを3次元的に求め,それに関連する運動学的・動力学的因子を検討することが重要である。これまで投球動作中の肩関節に加わる圧縮力については検討されているが,それ以外の前後方向・上下方向への力学的ストレスついてもそれらに関連する因子を検討する必要がある。本研究の目的は,投球動作中の肩関節に加わる圧縮力,前後方向および上下方向の力学的ストレスに影響を与える運動学的・動力学的因子について明らかにすることである。【方法】対象は次の条件を満たす中学・高校生の野球投手81名とした(年齢15.0±1.4歳,身長172.0±9.8 cm,体重63.2±9.8 kg,右63名・左18名)。1)投球動作の測定時に疼痛がない,2)肩・肘関節の手術経験がない,3)測定より6カ月以内に肩・肘関節の疼痛や障害のために投球動作を禁止された期間がない。投球動作の測定にはモーションキャプチャ・システムを用いた。解剖学的骨特徴点の皮膚上に36個の赤外光反射マーカーを貼付し,投球マウンド周辺に設置した7台の高速CCDカメラ(ProReflex MCU-500+,Qualisys Inc., Sweden)と2台のハイスピードビデオカメラ(HSV500C<sup>3</sup>,nac Image Technology,Japan)を用いて測定を行った。運動学的・動力学的パラメータを算出するために,胸部,上腕及び前腕座標系を設定し,胸部に対する上腕座標系の回転,上腕に対する前腕座標系の回転をオイラー角で示し,それぞれを肩関節,肘関節角度とした。また,水平面上での両肩峰を結ぶベクトルV<sub>s</sub>,両上前腸骨棘を結ぶベクトルV<sub>p</sub>それぞれとマウンドプレートとの成す角度を肩甲帯回旋角度,骨盤回旋角度とした。さらにV<sub>s</sub>とV<sub>p</sub>との成す角度を体幹回旋角度とした。肩関節,肘関節に加わる関節間力ならびにトルクはニュートン・オイラー法を用いて推定した。統計学的解析には,SPSS 12.0J(エス・ピー・エス・エス社,日本)を使用し,ステップワイズ法による重回帰分析を行った。投球動作時の肩関節に加わる最大圧縮力,最大前方関節間力および最大上方関節間力を従属変数とした。独立変数はトップ・ポジション(TOP),非投球側足部接地(FP),肩関節最大外旋位(MER),ボール・リリース(BR)時の肩関節および肘関節の関節角度,肩甲帯回旋角度,骨盤回旋角度,体幹回旋角度,肩関節および肘関節へ加わるトルクの最大値とした。【結果】最大肩関節圧縮力を従属変数とした場合,p<0.01でありR<sup>2</sup>=0.67であった。標準偏回帰係数はBRでの肩関節水平内転角度が0.60,BRでの体幹回旋角度が-0.51,MERでの骨盤回旋角度が-0.40,最大肩関節外旋トルクが-0.33,最大肘関節外反トルクが0.31,TOPでの肩関節水平内転角度が-0.23,最大肩関節内転トルクが-0.22,BRでの肘関節屈曲角度が-0.20,FPでの体幹回旋角度が0.17であった。肩関節最大前方関節間力を従属変数とした場合,p<0.01でありR<sup>2</sup>=0.63であった。標準偏回帰係数はFPでの肩関節水平内転角度が-0.84,最大肩関節水平内転トルクが0.41,FPでの肘屈曲角度が0.25,最大肩関節外旋トルクが-0.18,最大肩関節内転トルクが-0.16であった。肩関節最大上方関節間力を従属変数とした場合,p<0.01であり,R<sup>2</sup>=0.69であった。標準偏回帰係数は最大肩関節外転トルクが0.59,FPでの肩関節内転角度が0.55,FPでの肩関節外旋角度が-0.51,TOPでの肩関節内転角度が-0.36,BRでの肩関節内転角度が0.32,FPでの肘関節屈曲角度が0.32,FPでの骨盤回旋角度が-0.20,最大肩関節外旋トルクが-0.19,BRでの肩関節外旋角度が0.14であった。【考察】投球動作時に加わる力学的ストレスに影響する因子は,そのストレスの加わる方向により異なることが示された。肩関節の圧縮力にはBRでの肩関節水平内転やBRでの体幹回旋角度,肩関節最大前方関節間力にはFPでの肩関節水平外転や最大肩関節水平内転トルク,肩関節上方関節間力には,最大肩関節外転トルクやFPでの肩関節内転角度が影響を与える因子であった。また,それぞれの肩関節に加わるストレスに影響する因子として,FPでの肩・肘関節の関節角度が挙げられることから,この時点での投球動作に着目することは肩関節に加わる力学的ストレスを軽減させるために重要であることが定量的に確認された。【理学療法学研究としての意義】本研究の結果は,投球障害肩の疼痛部位や病態に応じた理学療法の一助となると考える。また,投球動作を詳細に分析することで,今後起こりうる投球障害肩を予測し,予防するためにも有用である。
著者
上田 泰之 田中 洋 亀田 淳 立花 孝 乾 浩明 信原 克哉
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.101-108, 2017 (Released:2017-04-20)
参考文献数
28

【目的】投球動作中の肩関節離開力,前後および上下方向の力学的ストレスに影響を与える因子を明らかにすること。【方法】対象は野球選手81 名。肩関節最大離開力・前方・上方関節間力を従属変数とし,肩関節,体幹,骨盤に関する因子27 個を独立変数とした重回帰分析を行った。【結果】肩関節離開力を従属変数とした場合,ボール・リリースでの肩関節水平内転角度,体幹回旋角度など6 個の因子が選択された。肩関節前方関節間力を従属変数とした場合,非投球側足部接地での肩関節水平外転角度と肩関節水平外転トルクの因子が選ばれた。肩関節上方関節間力を従属変数とした場合,肩関節最大外旋位での肩関節外旋トルク,ボール・リリースでの肩関節外転トルクなど7 個の因子が選択された。【結論】肩関節離開力に影響する因子は報告されていたが,本研究では肩関節前方・上方関節間力についても検討した。その結果各々の力学的ストレスに対し影響する因子は異なることが示された。
著者
立花 孝
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.683, 2008-08-15

●インピンジメント(impingement)とは インピンジメントは「~に突き当たる,衝突する」という意味で,整形外科領域においてもその意味の通りに一般的な言葉としても使用されるが,殊に肩に関するある病態を表す言葉として半ば固有名詞的に認識されている.つまり,肩甲骨肩峰下と上腕骨頭との間(第2肩関節)で生じる衝突に由来する障害のことをimpingement syndrome,impingement lesions,あるいは単にimpingementと表現する. 従来より,この肩峰下での障害に対して,肩峰切除術が諸家により提唱されてきた(Watson-Jones,Smith-Petersen,McLaughlin).切除する範囲は報告者により異なるものの,肩峰を全層的に切除(acromionectomy)したため,三角筋の起始部を失ったことによる弊害が起こった.これに対し,Neer1)は衝突が起こるのは肩峰下面の前方1/3のみであるとの見地から,三角筋起始部を温存し,衝突する部分のみを水平にそぎ落とす方法(anterior acromioplasty)を提唱した.これ以降,インピンジメントという言葉が“Neer”とセットで固有名詞化していったようである.さらにNeer(1983)は,烏口肩峰アーチ(つまり棘上筋の出口)の形状が原因のものをoutlet impingement,そして元来インピンジメントの主役であった石灰沈着や大結節の変形治癒などをnon-outlet impingementと分類した.前者を3つのステージに分け,急性の肩峰下滑液包炎(スポーツによるオーバーユースなど)をステージ1,慢性の肩峰下滑液包炎や腱板炎(五十肩など)をステージ2,腱板不全断裂,腱板完全断裂,骨棘形成をステージ3として,インピンジメントが重症化していくなかで腱板が滑液包側から断裂していくとした.これに対し,腱板不全断裂はそのほとんどが関節面側にあり滑液包側ではないことから,断裂が滑液包側から起こるという説には異論を唱え(Uhthoff,信原2)),ステージ3を否定する者もある.
著者
本田 俊介 立花 孝 西川 仁史 峯 貴文 長井 大治 船曳 久由美 小林 佐智 野村 星一 中村 真理
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.A1025, 2004 (Released:2004-04-23)

【はじめに】 肩関節は人体最大の可動域を持つ多軸性関節であり、その動きを3次元的に捉えることは難しい。そして結帯動作について、指椎間距離という指標はあるが、その実測値は不明瞭であり、結帯動作として記述した報告が少ない。そこで今回下垂位から最大結帯位に至るまでの連続的動作の実測値を導き出し、肩甲骨の動き及び上腕骨の内旋や伸展の関連度合いを理解する事を目的として、Motion Captureを用いた3次元的動作分析を行った。【対象と方法】 健常成人男性10名(平均年齢27歳,平均身長171cm)の右肩関節を対象とした。体表指標点として、体幹に4点(第7頚椎,第7胸椎,胸骨頚切痕,剣状突起)、肩甲骨に5点(烏口突起,肩鎖関節,肩峰角,棘三角,下角)、上腕骨に3点(三角筋粗面,内・外上顆)と内・外側茎状突起に2点の計14点の反射マーカを貼付した。撮影は立位にてまず下垂位を撮影し、以降結帯動作をとってもらい、被検者の母指先端が尾骨、第5腰椎、第12胸椎、第7胸椎の位置に達した所で撮影した。その際皮膚上のマーカと実際の骨上とはずれが生じているため、各々の撮影場面でマーカを定位置に張り直した。なお、体幹側屈の代償を抑えるために反対側も同様の動きを行ってもらった。使用システムはQualisys社製ProReflex ,MCU-500で7台のCCDカメラを使用。サンプリングレートは60Hzである。そしてQToolsを用いてデータ解析を行った。【結果】 まず肩甲骨の動きについて、前傾は下方回旋と比べて序盤動きが大きいものの、最終的には16.9°で、下方回旋とほぼ同じ数値を示した。上腕骨の動きについて、まず内旋は0°から41.4°と初期に大きな動きを行う特徴を示し、最終的に47°で、肩甲骨の動きに対して1対2.8という比率を示した。伸展は下垂位-3.1°から最終的に26.7°まで変化した。外転は、最後の第12胸椎から第7胸椎の相では変化が少ないという特徴を示した。【考察】 肩甲上腕関節の運動について、まず内旋に着目すると母指先端が尾骨から第7胸椎に到達するまでに6.6°しか内旋しておらず、下垂位から母指先端が尾骨に到達するまでにほぼ最大に近い内旋を行っている事がわかった。次に外転と伸展について、この2つの運動は、臼蓋に接触した小結節を徐々に前方から下縁に向かって移動させている事に貢献しているものと思われる。また、第12胸椎から第7胸椎の相で内旋と外転は殆ど変化が無い事から、肩甲上腕関節運動の限界が示唆され、第12胸椎以降は肩甲骨運動によって行われていると思われる。肩甲骨の前傾と下方回旋については、臼蓋の関節面を前下方へ向けるためのもので、小結節の移動を行いやすくさせると同時に、見かけ上の上腕骨の内旋及び伸展を補強していると考える。
著者
春名 匡史 板野 哲也 立花 孝 田中 洋 信原 克哉
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2015, 2016

【はじめに,目的】Wind-up期である,踏み出し脚の膝が最も高く挙がった時点(以下KHP:Knee Highest Position)における体幹アライメントや身体重心位置が,early cocking期である踏み出し脚接地時(以下FP:Foot Plant)に影響を及ぼすといった報告が散見される。しかし,この点を定量的に検討した報告はほとんど見当たらない。そこで今回,KHPにおける体幹アライメント・身体重心位置が,FPの体幹アライメントに実際に影響を与えるか否かを定量的に検討した為報告する。【方法】対象は,踏み出し脚の膝を軸脚側の上前腸骨棘より挙上して投球を行った様々な競技レベルの野球選手55名とした(年齢9-30歳)。左投手は右投手に変換して分析を行った(以下左右は右投手を想定して記載する)。KHPにおける上半身重心位置,骨盤左回旋・後傾角度,体幹伸展・右側屈角度の5つの変数群と,FPの骨盤左回旋角度,体幹伸展・右側屈角度の3つの変数群に対し,正準相関分析を行った。なお,重心位置と体幹・骨盤角度では単位が異なる為,変数は標準化を行った。上半身重心位置は合成重心法により算出した点の,水平面上における軸脚足部長軸方向の位置を,つま先方向を正として求め,軸脚足部長軸の長さで規格化した。骨盤運動はカメラ座標系に対する骨盤座標系の回転を,体幹運動は骨盤座標系に対する胸部座標系の回転をそれぞれオイラー角で表現した。有意水準は5%とした。【結果】正準相関分析の結果,第1正準変量では,正準相関係数がr=0.656(p=0.002)で,正準負荷量は,KHPの変数群では上半身重心=-0.017,骨盤左回旋=0.518,骨盤後傾=-0.915,体幹伸展=0.963,体幹右側屈=0.007であり,FPの変数群では骨盤左回旋=0.072,体幹伸展=0.914,体幹右側屈=-0.268であった。KHPの体幹屈曲伸展,骨盤前後傾,骨盤回旋,上半身重心,体幹側屈の順に,FPにおける体幹伸展への影響度が高かった。第2正準変量以下は正準相関係数が有意でなかった。【結論】本検討の結果より,KHPにおいて体幹がより伸展位,骨盤がより前傾位であると,FPの体幹伸展が大きくなると考えられた。しかし,有意な正準相関係数が認められ,正準負荷量が高値であったものは,FPの変数群では体幹伸展のみであった。FPでの不良動作として頻繁に述べられる,「体の開き」を表すと考えられるFP骨盤左回旋等は,KHPによる有意な影響はみられなかった。つまり,KHPによるFPへの影響は,定量的には限定的であった。この為,実際の臨床において,KHPの影響によりFPの不良な体幹アライメントが生じていると考える時は,慎重な検討が必要である。