著者
田中 洋平 Yohei Tanaka
雑誌
淑徳大学人文学部研究論集 (ISSN:21895791)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.138-120, 2021-03-15

本論では茨城県稲敷市の天台宗寺院・不動院に残された「江戸崎不動院門徒分限帳」全三冊を基礎史料として、近世における同院の配下寺院について、その経営実態を分析した。特に天台宗教団内における寺格に注目し、寺格別に各寺院の檀家数や檀家から得られる収入、所持耕地などに関しての考察を進めている。そこからは、従来の研究史のうえで等閑視されてきた寺格によって、右記の分析項目に著しい差異が生じている実態を明らかにした。具体的には、寺請や葬祭を執行することができる住持によって営まれる「末寺」寺院では、一定の葬祭檀家と所持耕地を有しており、これによって寺院経営が維持されていたのに対し、寺請や葬祭の執行が原則として許されていない住持によって営まれる「門徒」寺院の場合には、檀家、所持耕地からの収入ともに充分ではない様子を数量的把握によって描出している。
著者
田中 洋平 Yohei Tanaka
雑誌
淑徳大学人文学部研究論集 (ISSN:21895791)
巻号頁・発行日
vol.第4号, pp.97-108, 2019-03-15

本論では中等教育段階における歴史教育と歴史学研究の結節を企図し、高等学校で使用されている日本史教科書の記述について、歴史学的知見からこれに検討を加えた。具体的には、近世宗教史分野の研究成果を整理するとともに、これに新たな研究知見を付与したうえで教科書の記述を再検討している。ここでは、これまでの研究史及び『肥後藩人畜改帳』の分析から、寺檀制度の成立に照応させつつ、それを担う寺院が建立されたことを確認し、にもかかわらず、そうした寺院がどの段階で造営されていったかという点について、教科書中には記述がないことを指摘した。併せて近世宗教史研究のうえで長らく議論されてきた「近世仏教堕落論」についても、これを教科書に記載したうえで、歴史事象に関する生徒間の討論を深化させるための素材とすることができる可能性について言及した。
著者
田中 洋次 澤田 佳宏 山本 聡 藤原 道郎 大藪 崇司 梅原 徹
出版者
農村計画学会
雑誌
農村計画学会誌 (ISSN:09129731)
巻号頁・発行日
vol.30, no.Special_Issue, pp.255-260, 2011-11-15 (Released:2012-11-15)
参考文献数
18
被引用文献数
12 4

To clarify the current status of irrigation pond abandonment and the problem for aquatic plant conservation, we investigated the percentage of abandoned pond in local area, the relationship between the depth of pond and aquatic and meadow plants diversity at farm village on hilly terrain in northern part of Awaji Island. The investigation was carried out by interviewing 133 pond manager and by field survey. We found half of ponds had been abandoned already, and, we verify the strong correlation between depth of pond and species richness of aquatic plants.
著者
田中 洋 安藤 元博 髙宮 治 江森 正文 石田 実 三浦 ふみ
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.24-42, 2019-06-28 (Released:2019-06-28)
参考文献数
42

本論文はCMO(チーフマーケティングオフィサー)が日本企業において企業業績にどのような貢献をしているかを実証的に分析するとともに,CMOの地位が現在どのように変化しているかを文献調査で明らかにすることを目的としている。CMOが企業業績に正の影響を与えていることが近年米国で報告されているが,日本ではまだ研究がほとんどなされていない。実証分析の結果,日本企業において,CMOを設置している企業の割合は約8–11%であり,設置率は業種によってばらつきがあった。またCMO設置企業と非設置企業とでは,前者がより規模において大きいことがわかった。また,CMO設置あり・なしは,企業の2年間売上伸張率に正の影響があり,CMO設置は4.7%の売上増収効果をもっていた。また,企業規模が小さな企業ほど,CMO設置あり条件が売上変化率により大きな影響を与えている。文献調査では米国消費財企業においてCMOに代わりCGO(チーフグロースオフィサー)が設置される傾向が2010年代に目立つようになった。CMOへの詳細インタビューを通じて,これらの結果を仮説モデルとしてまとめ,CMO/CGOの設置がどのように企業業績に影響を与えるかを考察した。
著者
塩田 精一 足立 二雄 豊田 奉節 田中 洋行
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.1989, no.409, pp.131-138, 1989-09-20 (Released:2010-08-24)
参考文献数
11
被引用文献数
2 1

A new airport is under construction off the coast of the present Tokyo International airport to cope with the increase in passengers and to reduce the noise problem. The construction site is located on the place which has recently reclaimed by soft clay with high water content.The paper describes the settlement of the ground treated by band drain, the design method for structures under ground settling by consolidation and the behaviour of braced excavations.
著者
田中 洋一 山川 修
雑誌
研究報告教育学習支援情報システム(CLE) (ISSN:21888620)
巻号頁・発行日
vol.2018-CLE-25, no.1, pp.1-5, 2018-06-08

SECI モデル及び e ポートフォリオ ・ リテラシースキルを用いた授業設計について報告する.
著者
田中 洋
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.7-20, 2020-01-11 (Released:2020-01-11)
参考文献数
34
被引用文献数
1

本稿は,ブランドと想像力について,想像力とは何かを問うとともに,ブランドと想像力について新たな研究パラダイムを構築するための消費者行動モデルを提案する理論的論文である。研究レビューから,想像力が重要な概念とされながらも,マーケティング論ではあまり扱われてこなかったこと,諸学での想像力についての考察で共通していることとして,想像力が人間の行為として重要であること,感情・思考・感覚・知覚・記憶などと関連しながら,同時にこれらを統合する力として働いていること,想像力が人間特有の遺伝形質であり,脳神経科学から再帰性という概念を用いることによって想像力の在り方がよりよく理解できることなどを明らかにした。そのうえで新たなブランドの定義を示したうえで,ブランドと想像力についての新たな研究パラダイムを提案して実証研究への道筋を示した。
著者
藤田 大輔 我部山 キヨ子 田中 洋一 岡田 由香
出版者
大阪教育大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2004

H県N市における乳幼児健康診査対象児(4か月児・1歳6か月児・3歳児)の2164名の母親に、文書でインターネットを利用した育児支援コミュニティ開設の趣旨を説明し、同意の得られた対象に、「育児に関する調査」と題した質問紙調査を実施した。その結果、育児支援ネットコミュニティ参加申し込み者は276名で、その内訳は、乳幼児健診全対象者に対して、初産婦が25.7%、経産婦が17.3%と、初産婦で申し込み希望が多く関心が高かった。育児支援コミュニティの利用状況を示すホームページへのアクセスは、月平均約100件で、初産婦が66.2%で、経産婦が33.8%であった。月曜日と水曜日のアクセスが比較的多く、全体の約6割を占めていた。逆に土曜・日曜日は5%前後と少なかった。また、最も多い時間帯は、12時〜17時で35.2%であった。掲示板の書き込み内容は、子どもの病気や予防接種について、保育園入園の時期などが挙げられた。初産婦の質問に対し、経産婦が体験談を通してアドバイスをする傾向にあった。育児支援コミュニティの利用希望者の心理特性では、利用を希望しない者に比べ、手段的支援ネットワークが有意に低く、ストレス反応が有意に高い傾向であった。逆に、育児に対する否定的感情は低く、育児に関する情報や解決策入手の数は多い傾向が観察された。この傾向は、サイト開設後の調査においても変わらなかったが、特性的自己効力感と情緒的支援ネットワークは、サイト開設後の方が比較的高い傾向であった。以上より、手段的支援の認知が低く、ストレスが高い傾向で、育児情報を探索する傾向にある者が、育児支援サイトを利用する傾向が認められた。結果、育児支援サイトを利用することで、体験者の励ましや助言から、情緒的な支えを得ることで育児に自信をもって対処しようとする効果が期待されることが示唆された。
著者
福元 崇真 乾 明夫 田中 洋 野添 新一
出版者
一般社団法人 日本女性心身医学会
雑誌
女性心身医学 (ISSN:13452894)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.308-315, 2016-03-31 (Released:2017-01-26)

発達障害は,従来遺伝と環境という二つの要因が相互に関係して発症すると考えられ,特に遺伝要因が重要視されてきた.しかし近年,海外を初め,我が国の調査では発達障害,あるいは発達障害の疑われる子どもの増加が報告されている.遺伝要因を考慮すれば一定になるはずの発達障害の増加が指摘されていることから,遺伝要因を重要視する見方は徐々に弱まっており,代わりに最近,調査・報告による環境要因の重要性が見直されつつある.本研究の目的は環境要因に注目し,発達障害および発達障害様相を持つ児童の母親(以下,障害あり群)と健常児童の母親(以下,障害なし群)を対象に後方視的質問紙調査を行い,妊娠後期(28週目)と出産後1年半での養育環境における母親の育児ストレスと児童の抱える発達障害様相との関連性を明らかにすることである.調査には,養育者が育児中に生じる心の状態を尋ねる「育児不安尺度(中核的育児不安,育児時間)」と,養育者の育児環境について尋ねる「育児ソーシャルサポート尺度(精神的サポート)」を使用し,有効回答数は154名であった.養育している児童の診断の有無,育児支援関連施設の利用経験の有無などによって選定し,障害あり群47名(41.4±6.5歳),障害なし群107名(40.4±4.9歳)の2つの群の妊娠後期と出産後1年半における育児不安・育児ソーシャルサポートの得点についてt検定,2要因分散分析を行った.その結果,1)妊娠後期において,障害あり群の精神的サポート得点は有意に低く(p<0.05),2)出産後1年半において,障害あり群の中核的育児不安得点は有意に高かった(p<0.05).今回の結果から,妊娠後期における配偶者(夫)からの育児に関する妊婦(妻)への精神的サポートの低さが,胎児の養育環境を介して発達障害ないし発達障害を呈する症例に何らかの影響を与えていた可能性が示唆された.
著者
上田 泰之 田中 洋 亀田 淳 立花 孝 信原 克哉
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2014, 2015

【はじめに,目的】投球障害肩の治療・予防を考える上で,投球動作中の肩関節に加わる力学的ストレスを3次元的に求め,それに関連する運動学的・動力学的因子を検討することが重要である。これまで投球動作中の肩関節に加わる圧縮力については検討されているが,それ以外の前後方向・上下方向への力学的ストレスついてもそれらに関連する因子を検討する必要がある。本研究の目的は,投球動作中の肩関節に加わる圧縮力,前後方向および上下方向の力学的ストレスに影響を与える運動学的・動力学的因子について明らかにすることである。【方法】対象は次の条件を満たす中学・高校生の野球投手81名とした(年齢15.0±1.4歳,身長172.0±9.8 cm,体重63.2±9.8 kg,右63名・左18名)。1)投球動作の測定時に疼痛がない,2)肩・肘関節の手術経験がない,3)測定より6カ月以内に肩・肘関節の疼痛や障害のために投球動作を禁止された期間がない。投球動作の測定にはモーションキャプチャ・システムを用いた。解剖学的骨特徴点の皮膚上に36個の赤外光反射マーカーを貼付し,投球マウンド周辺に設置した7台の高速CCDカメラ(ProReflex MCU-500+,Qualisys Inc., Sweden)と2台のハイスピードビデオカメラ(HSV500C<sup>3</sup>,nac Image Technology,Japan)を用いて測定を行った。運動学的・動力学的パラメータを算出するために,胸部,上腕及び前腕座標系を設定し,胸部に対する上腕座標系の回転,上腕に対する前腕座標系の回転をオイラー角で示し,それぞれを肩関節,肘関節角度とした。また,水平面上での両肩峰を結ぶベクトルV<sub>s</sub>,両上前腸骨棘を結ぶベクトルV<sub>p</sub>それぞれとマウンドプレートとの成す角度を肩甲帯回旋角度,骨盤回旋角度とした。さらにV<sub>s</sub>とV<sub>p</sub>との成す角度を体幹回旋角度とした。肩関節,肘関節に加わる関節間力ならびにトルクはニュートン・オイラー法を用いて推定した。統計学的解析には,SPSS 12.0J(エス・ピー・エス・エス社,日本)を使用し,ステップワイズ法による重回帰分析を行った。投球動作時の肩関節に加わる最大圧縮力,最大前方関節間力および最大上方関節間力を従属変数とした。独立変数はトップ・ポジション(TOP),非投球側足部接地(FP),肩関節最大外旋位(MER),ボール・リリース(BR)時の肩関節および肘関節の関節角度,肩甲帯回旋角度,骨盤回旋角度,体幹回旋角度,肩関節および肘関節へ加わるトルクの最大値とした。【結果】最大肩関節圧縮力を従属変数とした場合,p<0.01でありR<sup>2</sup>=0.67であった。標準偏回帰係数はBRでの肩関節水平内転角度が0.60,BRでの体幹回旋角度が-0.51,MERでの骨盤回旋角度が-0.40,最大肩関節外旋トルクが-0.33,最大肘関節外反トルクが0.31,TOPでの肩関節水平内転角度が-0.23,最大肩関節内転トルクが-0.22,BRでの肘関節屈曲角度が-0.20,FPでの体幹回旋角度が0.17であった。肩関節最大前方関節間力を従属変数とした場合,p<0.01でありR<sup>2</sup>=0.63であった。標準偏回帰係数はFPでの肩関節水平内転角度が-0.84,最大肩関節水平内転トルクが0.41,FPでの肘屈曲角度が0.25,最大肩関節外旋トルクが-0.18,最大肩関節内転トルクが-0.16であった。肩関節最大上方関節間力を従属変数とした場合,p<0.01であり,R<sup>2</sup>=0.69であった。標準偏回帰係数は最大肩関節外転トルクが0.59,FPでの肩関節内転角度が0.55,FPでの肩関節外旋角度が-0.51,TOPでの肩関節内転角度が-0.36,BRでの肩関節内転角度が0.32,FPでの肘関節屈曲角度が0.32,FPでの骨盤回旋角度が-0.20,最大肩関節外旋トルクが-0.19,BRでの肩関節外旋角度が0.14であった。【考察】投球動作時に加わる力学的ストレスに影響する因子は,そのストレスの加わる方向により異なることが示された。肩関節の圧縮力にはBRでの肩関節水平内転やBRでの体幹回旋角度,肩関節最大前方関節間力にはFPでの肩関節水平外転や最大肩関節水平内転トルク,肩関節上方関節間力には,最大肩関節外転トルクやFPでの肩関節内転角度が影響を与える因子であった。また,それぞれの肩関節に加わるストレスに影響する因子として,FPでの肩・肘関節の関節角度が挙げられることから,この時点での投球動作に着目することは肩関節に加わる力学的ストレスを軽減させるために重要であることが定量的に確認された。【理学療法学研究としての意義】本研究の結果は,投球障害肩の疼痛部位や病態に応じた理学療法の一助となると考える。また,投球動作を詳細に分析することで,今後起こりうる投球障害肩を予測し,予防するためにも有用である。
著者
田中 洋太郎 勝山 正則 長野 龍平 鷹木 香菜 谷 誠
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.125, 2014

滋賀県南部の桐生試験地において、鉛直及び横方向の地中水移動過程における溶存有機態炭素の動態解明を目的に、土壌水、地下水、渓流水を採取し、三次元蛍光分析を行った。検出されたピークは、難分解性フルボ酸様物質(A)、易分解性フルボ酸様物質(C)、変質性フルボ酸様物質(M)、アミノ酸様物質(T)であった(Wu et al., 2009)。土壌水のフルボ酸様物質の蛍光強度は表層0-20cmの鉛直浸透過程で分解・吸着によって急低下した。下層では蛍光強度が表層に比べ緩やかに低下するとともに、ピークM,Tが複数回確認された。地下水帯表層でも強度の低下が継続した。しかし、地下水帯下層では再び蛍光強度が上昇し、ピークC,Mが下層土壌層 と同程度の強度になった。Katsuyama et al. (2005)は、地下水帯下層が斜面部で基岩に浸透した地下水によって涵養されることを示したが、本結果はこの水が土層の蛍光特性を保持したまま移動することを示唆する。飽和帯地下水帯での横方向移動から渓流流出に至る過程では蛍光強度の変動は小さかった。以上から、DOC蛍光特性は地下水帯に至るまでに概ね決まるとともに、渓流へのDOC供給源を考える場合、地下水帯の層位に着目した質の評価が必要である。
著者
窪田 充見 磯村 保 中川 丈久 島村 健 島並 良 八田 卓也 青木 哲 池田 千鶴 嶋矢 貴之 興津 征雄 前田 健 田中 洋
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本科研では、社会においては、個人の利益に解消されないが、集団的な利益や集合的な利益があるのではないか、そして、そうした集団的利益・集合的利益を保護するためには、どのような法制度を設計することが考えられるのかといった問題に取り組み、消費者法、環境法、知的財産法などの分野における具体的な問題について成果を公表してきた。これらを踏まえると、私法と公法という枠組みを超えて、法の実現に関わる私人の役割を考える必要があることが明らかとなった。
著者
田中 洋次 澤田 佳宏 山本 聡 藤原 道郎 大藪 崇司 梅原 徹
出版者
THE ASSOCIATION OF RURAL PLANNING
雑誌
農村計画学会誌 (ISSN:09129731)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.255-260, 2011
被引用文献数
4

To clarify the current status of irrigation pond abandonment and the problem for aquatic plant conservation, we investigated the percentage of abandoned pond in local area, the relationship between the depth of pond and aquatic and meadow plants diversity at farm village on hilly terrain in northern part of Awaji Island. The investigation was carried out by interviewing 133 pond manager and by field survey. We found half of ponds had been abandoned already, and, we verify the strong correlation between depth of pond and species richness of aquatic plants.