著者
吉藤 歩 竜崎 崇和
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.129-136, 2022 (Released:2022-02-28)
参考文献数
58
被引用文献数
1 1

2020年以降,日本でも,新型コロナウイルス感染症(COVID‒19)は猛威を振るい,多くの死者を出した.透析患者は低免疫ゆえに罹患すると重症化し,致死率も高い.COVID‒19の発症・重症化予防のためワクチン接種は極めて有効である.日本では,mRNAワクチンが主に使用され,高い発症予防効果,入院・重症化・死亡抑制効果を有する.透析患者でも,2回のワクチン接種により大幅に死亡率が低下した.しかし,2回目のワクチン接種から時間が経過し,抗体価が低下し,感染する事例が増加している.とくに,透析患者はワクチン接種により抗体価が上昇しにくく,低下しやすいこと,細胞性免疫や記憶免疫の異常などから感染が重症化する可能性も指摘されている.2021年12月より日本でも3回目の追加接種が開始された.追加接種により抗体価は2回目の接種後よりも有意に増加し,変異株に対しても有効であるという報告もある.欧米からは,透析患者における追加接種の有効性が報告されている.今後,3回目のワクチン接種の普及が進み,感染の再拡大が抑えられることを期待する.
著者
深澤 瑞也 竜崎 崇和 亀井 大悟 川合 徹 川西 秀樹 菅野 義彦 篠田 俊雄 田倉 智之 土谷 健 友利 浩司 長谷川 毅 本間 崇 矢内 充 脇野 修 村上 淳 米川 元樹 中元 秀友
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.57-60, 2021 (Released:2021-03-03)
参考文献数
3

透析患者の高齢化および長期間化によりシャント系アクセスの作製困難症例が増加しており,カテーテルでの透析を余儀なくされる患者も多い.一方,透析用カテーテル挿入手技は現在の診療報酬上,注射コードに分類されており保険点数はついているもののDPC施設ではその期間内,消耗品であるカテーテル代も含めて保険請求ができない.一方,中心静脈へのカテーテル挿入手技においては体表超音波装置やX線透視装置などの周辺機器の使用や,医師・看護師・技師も含めた人的な負担を要すること,また血管損傷などによる死亡例も含めた重篤な合併症を呈することもあり,改善が必要と考える.そこで保険委員会として今般,手技のタイムスタディーを含めた現状把握を行い,診療報酬改定への足掛かりとなるべく実態調査を行った.本結果を基に,外科系学会社会保険委員会連合を通して改定の要望を提出する方向である.
著者
竜崎 崇和 松下 雅博 半田 みち子 古川 智洋 猿田 享男
出版者
The Japanese Society for Dialysis Therapy
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.45-51, 1998

カルシウム拮抗薬ベシル酸アムロジピンの血液透析患者における有用性と血液透析による透析性を検討した. 対象は維持血液透析施行中の高血圧を合併した慢性腎不全患者で, 観察期透析前血圧が収縮期血圧160mmHg以上または拡張期血圧95mmHg以上の外来患者19例. 2~4週間の観察期の後, アムロジピンを2.5~7.5mg/日の量にて投与開始. 服薬は夕食後の1日1回投与とし, 12週間の投薬期間中透析前後で血圧を測定し比較した. その間, 他の降圧薬を服用している患者では降圧薬の変更を禁止し, その後も除去率やクリアランスの測定を施行した例では薬剤の変更は行わなかった.<br>アムロジピンの血清濃度の測定を第1週および第2週目に透析前に施行, 4週以上投与された安定期-1と, 12週以上投与された安定期-2にクリアランステストを施行し, 除去率も計算した.<br>アムロジピン5mg/日服用の15例では, 観察期の透析前収縮期圧, 拡張期圧は, 199±4/95±3mmHgであった. アムロジピン服用開始1週後より有意に血圧は低下し, 12週後には170±5/83±3に低下した. また, 心拍数は観察期には81±2拍/分であったが, 服用開始1週間後に有意に減少し75±2となった. 服用開始2週目以降は観察期と比べ有意な変化は認められなかった. また, 透析後の血圧および心拍数の変動では服用開始1週以降に収縮期血圧で有意な低下を認めたが, 拡張期血圧は第4週と8週に有意な低下を認めただけであった. 透析後の心拍数については, 有意な変化は認められなかった.<br>透析前アムロジピン血清濃度は5mg/日服用者で, 第1, 2, 4週以降, 12週以降でそれぞれ, 6.8±0.8ng/ml, 7.1±0.7, 8.1±1.0, 8.6±1.2であったが有意な差は認められなかった.<br>透析後のアムロジピン血清濃度は透析前の値と比較しても, また, 透析が行われなかった場合の予測値と比較しても有意に低下していた. 透析による除去率は14%から18%であったが, 透析開始1時間という一時点でのクリアランスでは負の値を示した.<br>アムロジピン投与にて血液透析患者の透析前血圧は投与1週間後より12週間まで有意に低下した. また, 少なくとも投与12週間までの間では, 5mg/日の投与量では有意な蓄積傾向はなく, 血液透析による除去率は14~18%であった.<br>結論: ベシル酸アムロジピンは透析患者においても通常投与量で長期投与にても蓄積なく, 安全に降圧し得ると思われた.
著者
二木 功治 西尾 和三 會田 信治 岡林 賢 中野 泰 竜崎 崇和 大曽根 康夫 鹿住 祐子
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.100, no.12, pp.3637-3639, 2011 (Released:2013-04-11)
参考文献数
5
被引用文献数
3 7

症例は64歳,女性.咳嗽を主訴に近医受診.胸部CT上,多発小結節影および気管支拡張像が認められ,当院紹介受診した.気管支洗浄液にて抗酸菌陽性となり16S rRNAおよびrpoB遺伝子の相同性からMycobacteruim shinjukuenseと同定された.本菌株はTranscription Reverse-transcription Concerted method(TRC法)で結核菌群偽陽性を示した.クラリスロマイシン,リファンピシン,エタンブトール3剤併用療法を開始し,画像所見および自覚症状の改善が得られた.