著者
深澤 瑞也 竜崎 崇和 亀井 大悟 川合 徹 川西 秀樹 菅野 義彦 篠田 俊雄 田倉 智之 土谷 健 友利 浩司 長谷川 毅 本間 崇 矢内 充 脇野 修 村上 淳 米川 元樹 中元 秀友
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.57-60, 2021 (Released:2021-03-03)
参考文献数
3

透析患者の高齢化および長期間化によりシャント系アクセスの作製困難症例が増加しており,カテーテルでの透析を余儀なくされる患者も多い.一方,透析用カテーテル挿入手技は現在の診療報酬上,注射コードに分類されており保険点数はついているもののDPC施設ではその期間内,消耗品であるカテーテル代も含めて保険請求ができない.一方,中心静脈へのカテーテル挿入手技においては体表超音波装置やX線透視装置などの周辺機器の使用や,医師・看護師・技師も含めた人的な負担を要すること,また血管損傷などによる死亡例も含めた重篤な合併症を呈することもあり,改善が必要と考える.そこで保険委員会として今般,手技のタイムスタディーを含めた現状把握を行い,診療報酬改定への足掛かりとなるべく実態調査を行った.本結果を基に,外科系学会社会保険委員会連合を通して改定の要望を提出する方向である.
著者
水口 斉 脇野 修 川合 徹 菅野 義彦 熊谷 裕生 児玉 浩子 藤島 洋介 松永 智仁 吉田 博
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.191-201, 2021 (Released:2021-05-28)
参考文献数
30

セレン(selenium)は必須微量元素であり,セレノシステイン,セレノメチオニンとしてセレン含有たんぱく内に組み込まれセレン含有たんぱくとして作用を発揮する.セレン欠乏症では心機能低下,動脈硬化,感染症,甲状腺機能低下,皮膚症状,筋肉症状が認められる.セレン欠乏症は長期静脈栄養・経腸栄養剤を用いる患者において重要であり,2018年セレン欠乏症の診療指針が策定された.透析患者にもセレン欠乏症が認められ,血清セレン低値は死亡と関連し,特に本邦のKAREN研究では感染症死と関連があることが報告されている.その一方で透析患者への介入研究はこれまで報告が少なく,栄養状態の改善のみが報告されている.セレン欠乏は透析患者の2大死因である感染症と心血管病にかかわる可能性があり,今後透析患者における基準値の策定および治療介入の可能性も検討すべきである.
著者
脇野 修
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.105, no.5, pp.793-801, 2016-05-10 (Released:2017-05-10)
参考文献数
15

慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)における高血圧のパターンは夜間高血圧,dippingの消失,仮面高血圧といった血圧日内変動の異常,血圧変動性の亢進が特徴であり,自由行動下血圧測定(ambulatory blood pressure monitoring:ABPM)による24時間血圧測定や家庭血圧測定が重要である.さらに,治療抵抗性であり,その原因として塩分貯留,レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系の亢進のみならず,交感神経活性の亢進,血管内皮機能障害,血管構造異常といった機序も関与する.
著者
金子 友香 徳山 博文 脇野 修 木田 可奈子 林 松彦 林 晃一 伊藤 裕
出版者
The Japanese Society for Dialysis Therapy
雑誌
日本透析医学会雑誌 = Journal of Japanese Society for Dialysis Therapy (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.44, no.10, pp.1047-1052, 2011-10-28
被引用文献数
1

慢性腎不全維持血液透析中,低栄養,鉄過剰症,骨髄異形成症候群(MDS)など複数の免疫能低下に寄与する要因が重なり,メチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)によるシャント感染・敗血症を契機に多発膿瘍の合併に至った症例を経験した.透析患者のシャント感染を契機に,本症例のような重症多発性化膿性膿瘍を合併することはまれであり,文献的考察を加え報告する.症例は67歳,女性.慢性糸球体腎炎を原病として,慢性腎不全の進行に伴い,1988年に血液透析導入となった.1993年骨髄穿刺の結果骨髄異形成症候群と診断され(染色体異常なし),2007年から適宜赤血球輸血を施行されていた(合計40単位).2010年1月14日血液透析施行中40度の発熱があり,両下肢痛と腰部痛が出現した.インフルエンザ迅速試験陰性で解熱鎮痛薬を処方されるも改善せず,1月19日WBC 8,600/μL,CRP 46.75mg/dLであり,精査加療目的で同日当院へ緊急入院した.Vancomycin hydrochloride(VCM),meropenem hydrate(MEPM)を開始したが,第3病日,血液培養でMSSAが検出されたため,第4病日からcefazolin sodium(CEZ)へ変更した.Gaシンチグラフィ,MRI,CTなど各種画像検査および眼科検査で,シャント部皮下膿瘍,腰部硬膜外膿瘍,腰部脊椎炎・椎間板炎,多発化膿性関節炎,腰部化膿性筋炎・傍脊柱筋筋肉内膿瘍,多発性細菌性肺塞栓,右眼内炎が認められ,シャント皮下膿瘍から播種性に全身膿瘍をきたしたと考えられた.CEZを継続したところ,血液培養は陰性化し,各感染巣は縮小,消失した.本症例は維持透析,MDS,低栄養,鉄過剰症などのさまざまな易感染性の要素を有していたため,非常にまれな重症多発性感染巣が形成されたと考えられた.このような複数の易感染傾向を有する患者では特に日常の感染対策が必須である.今後,易感染性の末期腎不全患者の増加が見込まれるが,感染症の予防という点から,感染のリスク要因を極力排除し,症状出現時における早急な検査,診断を進めることが重要である.
著者
徳山 博文 鷲田 直輝 脇野 修 原 義和 藤村 慶子 伊藤 新 上山 菜穂 乃村 元子 林 晃一 伊藤 裕
出版者
The Japanese Society for Dialysis Therapy
雑誌
日本透析医学会雑誌 = Journal of Japanese Society for Dialysis Therapy (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.43, no.8, pp.649-653, 2010-08-28
被引用文献数
1

症例は46歳,女性.41歳時に骨盤部胞巣状軟部肉腫の治療に伴い右骨盤半裁,人工股関節置換術を施行された.2005年に腎動脈狭窄に対して経皮的腎血管拡張術を施行されたが徐々に腎機能が悪化し,2007年1月に腹膜透析(CAPD)が導入された.2008年3月に転倒し,右大腿骨骨折にて当院整形外科に入院,観血整復固定術・自家腓骨移植術を施行された.5月15日より腹痛を認めたが腹膜炎の所見は認めず,5月21日退院となった.5月29日外来受診時は血液検査所見に異常所見はなかったが,5月30日より腹痛出現,徐々に症状増悪し,6月5日当院を受診し腹膜炎疑いにて緊急入院した.抗生剤の点滴静注(ceftazidime hydrate(CAZ)1 g/日,cefazolin sodium(CEZ)1 g/日,vancomycin hydrochloride(VCM)1 g/日)および腹腔内投与CAZ 1 g/日,CEZ 1 g/日)を施行したが,症状改善せずCAPD排液細胞数は540/μLから940/μLへ上昇した.第5病日,排液細菌培養にて複数菌が判明し,第6病日には腹痛が増悪し,排液は黄色混濁し排液細胞数5,200/μL,腹部CTにてfree airを認め緊急手術となった.大腿骨頭置換のボルトの背側の骨盤腔の間隙に小腸が嵌頓し,回腸末端部より30 cm口側に嵌頓部の穿孔を認めた.術後は集中治療室にて持続的血液透析濾過を施行し,同時にエンドトキシン吸着を施行した.術後経過は順調であり,腹膜透析から血液透析へ移行した.本症例では抗生物質の無効,CAPD排液の色調異常,CAPD排液培養から複数菌の検出などから,通常の細菌性急性腹膜炎ではないと判断し,腹部CTで確定診断に至った.骨盤あるいはその支持組織への侵襲手術後の骨盤内間隙に腸管嵌頓を誘発し,CAPDの中止を余儀なくされた症例を経験した.