著者
城川 雅光 笠井 あすか
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.461-467, 2014-06-30 (Released:2015-01-23)
参考文献数
9

2004年度から2012年度の小笠原諸島の急患搬送記録を調査し,現状と課題を検討した。搬送例は合計266例であった。搬送患者の特徴は,外傷,脳血管障害,虫垂炎など手術やICU管理を要する症例が多かった。搬送時間は,全島平均で9時間34分と長時間を要する。一方,空港のある硫黄島からの患者搬送は,地理的に遠いにも関わらず,父島と母島の平均搬送時間と比較して45分程度短い。また搬送要請の過程で,結核患者の搬送が問題となっていた。空港建設が進まない現状で搬送時間短縮に有効な手段の一つとして,航続距離,巡航速度,着陸場所の条件を満たすティルトローター機の就航が考えられる。感染症患者搬送については,病原体や利用する航空機を問わず安全性を確保する上で,簡易アイソレーターの搭載が有効であろうと考える。しかし航空機搭載基準を満たしている製品は,国内で取扱い中止となっており,既存の製品で運用試験を行うことが課題である。
著者
城川 雅光 笠井 あすか
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.461-467, 2014

2004年度から2012年度の小笠原諸島の急患搬送記録を調査し,現状と課題を検討した。搬送例は合計266例であった。搬送患者の特徴は,外傷,脳血管障害,虫垂炎など手術やICU管理を要する症例が多かった。搬送時間は,全島平均で9時間34分と長時間を要する。一方,空港のある硫黄島からの患者搬送は,地理的に遠いにも関わらず,父島と母島の平均搬送時間と比較して45分程度短い。また搬送要請の過程で,結核患者の搬送が問題となっていた。空港建設が進まない現状で搬送時間短縮に有効な手段の一つとして,航続距離,巡航速度,着陸場所の条件を満たすティルトローター機の就航が考えられる。感染症患者搬送については,病原体や利用する航空機を問わず安全性を確保する上で,簡易アイソレーターの搭載が有効であろうと考える。しかし航空機搭載基準を満たしている製品は,国内で取扱い中止となっており,既存の製品で運用試験を行うことが課題である。
著者
山内 繁 笠井 あすか
出版者
首都大学東京小笠原研究委員会
雑誌
小笠原研究年報 (ISSN:03879844)
巻号頁・発行日
no.40, pp.73-87, 2017-05-31

2015年より小笠原父島二見港において、港湾衛生管理ガイドラインに基づく港湾衛生調査をめざした現地調査を実施している。本年も、ねずみ族及び蚊族の生息調査を行った。ねずみ族調査では、計12匹のクマネズミが捕獲された。クマネズミはペスト菌及び腎症候性出血熱ウイルスの媒介種であり、その病原体及び抗体の保有はなかったが、捕獲率は非常に高かった。蚊族調査は、成虫調査での捕集はなく、幼虫調査でヒトスジシマカ、アカイエカ群、ネッタイイエカの捕集があった。現行の港湾衛生管理ガイドラインでは、蚊族成虫調査にドライアイスを用いた炭酸ガス・ライトトラップ法を推奨しているが、父島ではドライアイスの入手が困難であるため① イースト菌発酵を用いた炭酸ガス・ライトトラップ法、② BG センチネル2を用いたトラップ法について、従来の方法との比較検討を行った。その結果、BGセンチネル2についてはドライアイスを用いた現行の方法と遜色のない結果を得た。今後、二見港では定期的な港湾衛生調査の継続が必要であり、ドライアイスを使用しない成虫調査の方法を選択していきたい。
著者
竹内 真人 笠井 あすか 横塚 由美
出版者
首都大学東京小笠原研究委員会
雑誌
小笠原研究年報 (ISSN:03879844)
巻号頁・発行日
no.41, pp.111-124, 2018-07-31

東京検疫所では、2015年より小笠原父島二見港において、港湾衛生現地調査として、ねずみ族及び蚊族の生息状況調査と検疫感染症の病原体検査を実施している。2017年はベクターサーベイランスの一環として、父島の山林部を含む広域及び母島沖港においても蚊族調査を実施した。ねずみ族については、本土よりも高いクマネズミの捕獲率が示されており、自治体による駆除活動が行われているにも関わらず、捕獲率の低下の傾向は2015年からの3年間においてはみられなかった。捕獲されたクマネズミの病原体検査は陰性であったが、うち1頭で寄生虫の猫条虫が検出された。捕集蚊における病原体検査でも、検疫感染症の病原体は全て陰性であった。父島の港湾区域では、アカイエカ群とヒトスジシマカの幼虫が多くの調査区で確認され、父島山林部においても多くのヒトスジシマカの成虫が捕集された。母島で捕獲された蚊族では、ヒトスジシマカの成虫と幼虫が高い割合を占めていた。これらのことから、ヒトスジシマカが父島と母島で優先種として生息していることが明らかになった。また、母島の蚊族の複数種でヒトへの吸血が確認されたことは、蚊が媒介する感染症の拡散の可能性を示唆する。