著者
笠原 政治
巻号頁・発行日
2002-03

科学研究費補助金研究成果報告書, 課題番号12610307, 2000年度~2001年度, 基盤研究(C)
著者
笠原 政治
出版者
横浜国立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

森丑之助は1890年代の後半以降,20年間近く台湾山地先住民族(現在の正式名称は「台湾原住民」)の実地調査を行った人物である。台湾研究の開拓者であり,日本における文化人類学の先駆者であるが,今日の学界ではその名前はほとんど知られていない。単行本として出版された写真集『台湾蕃族図譜』(1915年),タイヤルの民族誌『台湾蕃族志第一巻』(1917年)を含めて,その著作を日本で入手することが甚だ困難になっている。本研究では,森丑之助の著作の収集とデータベース化,森研究に関する現地(台湾)研究者との意見・資料の交換を進めるとともに,『森丑之助著作集』(仮称)の編集・刊行に向けて一連の準備作業を行った。森の著作については,単行本,学術雑誌や旧台湾総督府関係の雑誌への掲載稿などのほかに,当時の地元紙『台湾日日新報』にもかなりの点数を寄稿していたことが同紙のマイクロフィルム版から判明したので,それらを含めて目力作りと入力に努力した。また,いま台湾では,森の著作の一部が中国語訳され出版されたため,森丑之助とその研究業績が広く注目を集め始めている。本研究では,森の研究の全体像と把握と併せて,中国語への翻訳者及び地元の研究者たちとも十分な意見交換を行い,森の研究に関する国際的評価を高めるための方向も摸索してみた。現在予定中の『著作集』が上梓されれば,森の業績は改めて正当な認知を受けるであろう。そして,森という人物を通して,日本文化人類学の黎明期に新たな光が当てられるものと考えられる。
著者
森口 恒一 笠原 政治 山田 幸宏
出版者
静岡大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1996

研究期間の前半の1996、97年度は、現地調査を中心に行い、1998年度は3年間のとりまとめの年のために基本的には調査報告書作成にあてた。この期間中に、森口は、フィリピン共和国のカガヤン州バブヤン島のバブヤン語、バタネス州バタン島のイヴァタン語、イトバヤット島のイトバヤット語、サブタン島のイヴァタン語イサモロン方言、台湾の南投縣仁愛郷のブヌン語の言語学的現地調査を、山田は、バタネス州イトバヤット島のイトバヤット語の現地調査を、笠原は、台湾の嘉義縣のツォウ族、屏東縣のルカイ族、台東縣のプュマ族の人類学的調査を行った。森口は、基本的には民話、伝説、お伽話のテキストを録音、記述し、翻訳、文法的分析を行った。また、山田は、ことわざ、迷信、言い伝え、格言等の記述、翻訳及び分析を行った。笠原は、ルカイ族の系譜をもとにこの部族の中での支配者階級(貴族)への身分の変化を分析した。一方、ツォウ族では、外部のブヌン族のツォウ族への同化の現象を発見し分析を行った。論文としては、'96,'97年の調査で森口が発見したバタネス州サブタン島の漁師ことばと台湾のヤミ族のことばとの関係を「「ヤミ族とは何処の部族なる乎」-フィリピン側の資料に基づいたヤミ族」(『台湾原住民研究』第3号pp.79-108)にまとめ、笠原は、ルカイ族の聞き書き資料と台湾領有の時代の古い資料の対照を行い「伊能嘉矩の時代-台湾原住民初期研究史への測鉛」(『台湾原住民研究』第3号pp.54-78)にまとめた。森口、山田、笠原3名は、1996、97、98年度の海外調査の報告書としてNarratives,Beliefs and Genealogies.(Shizuoka University)を出版した。その内容としては、3年間の調査をもとに森口は、イバタン語の伝説・民話集を、山田は、イトバヤット語の迷信・タブーを、笠原は、ルカイ族の系譜に関する論文、資料集を作成した。