著者
森口 恒一 笠原 政治 山田 幸宏
出版者
静岡大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1996

研究期間の前半の1996、97年度は、現地調査を中心に行い、1998年度は3年間のとりまとめの年のために基本的には調査報告書作成にあてた。この期間中に、森口は、フィリピン共和国のカガヤン州バブヤン島のバブヤン語、バタネス州バタン島のイヴァタン語、イトバヤット島のイトバヤット語、サブタン島のイヴァタン語イサモロン方言、台湾の南投縣仁愛郷のブヌン語の言語学的現地調査を、山田は、バタネス州イトバヤット島のイトバヤット語の現地調査を、笠原は、台湾の嘉義縣のツォウ族、屏東縣のルカイ族、台東縣のプュマ族の人類学的調査を行った。森口は、基本的には民話、伝説、お伽話のテキストを録音、記述し、翻訳、文法的分析を行った。また、山田は、ことわざ、迷信、言い伝え、格言等の記述、翻訳及び分析を行った。笠原は、ルカイ族の系譜をもとにこの部族の中での支配者階級(貴族)への身分の変化を分析した。一方、ツォウ族では、外部のブヌン族のツォウ族への同化の現象を発見し分析を行った。論文としては、'96,'97年の調査で森口が発見したバタネス州サブタン島の漁師ことばと台湾のヤミ族のことばとの関係を「「ヤミ族とは何処の部族なる乎」-フィリピン側の資料に基づいたヤミ族」(『台湾原住民研究』第3号pp.79-108)にまとめ、笠原は、ルカイ族の聞き書き資料と台湾領有の時代の古い資料の対照を行い「伊能嘉矩の時代-台湾原住民初期研究史への測鉛」(『台湾原住民研究』第3号pp.54-78)にまとめた。森口、山田、笠原3名は、1996、97、98年度の海外調査の報告書としてNarratives,Beliefs and Genealogies.(Shizuoka University)を出版した。その内容としては、3年間の調査をもとに森口は、イバタン語の伝説・民話集を、山田は、イトバヤット語の迷信・タブーを、笠原は、ルカイ族の系譜に関する論文、資料集を作成した。
著者
土田 滋 森口 恒一 山田 幸宏
出版者
東京大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1989

(1)前年度に引き続き、小川資料に残るシラヤ語の資料を整理し、コンピュ-タに入力した。さらに原典・原ノ-トに遡って照合を行い、また中国語・日本語が読めない外国人研究者の便を考え、発音を漢字で表わした清朝時代の資料についてはロ-マ字翻字を付した。その結果シラヤ語資料とされているものが、実質的にはシラヤプロパ-・タイボアン・マカタオの3種の方言にわけることができることが判明した。(土田・山田)(2)浅井資料のうち、「平埔蕃 Basai」と標題をつけられたノ-トを整理しコンピュ-タに入力した。重複項目を除く異なり語数は約1000項目。英訳をつけ、バサイ語からも英語からも引けるようにした。(森口)(3)小川資料のうち、ケタガラン語に関わるノ-ト類を整理し、カ-ドにとり、コンピュ-タに入力したが、時間切れとなり、公表する段階には至っていない。(土田)(4)上記(1)と(2)の結果を印刷に付し、発表し得る形にまでまとめることができた。シラヤ語は17世紀における台湾のオランダ統治時代の聖書翻訳や語彙集、18ー9世紀における清朝時代の土地売買契約書などの資料しか存在せず、日本時代に収集し得た各方言の資料として貴重である。またバサイ語資料はこれまでまったく利用し得なかった資料である。それを見ると、祖語における*Lがtsで現われる点は、かつて台北付近に話されていたケタガラン語と同じであり、一方祖語の*sもtsで現われる点は、東海岸のアミ語と同じという、やや奇妙な音変化をみせることが判明した。また語彙的にはカバラン語と共通した部分も多く、いずれか一方から他方へ借用されたものかもしれないが、更に精密な研究が必要である。
著者
岩月 和彦 那須 裕 野坂 俊弥 岩崎 朗子 御子柴 裕子 本田 智子 楊箸 隆哉 奥野 茂代 田村 正枝 山田 幸宏
出版者
長野県看護大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

水中運動参加者の中で,生活習慣病を有する高齢者(高血圧症,高脂血症,糖尿病)と,生活習慣病を持たない高齢者の血圧,心拍数の3年間における変化を比較検討した.その結果,高血圧症を有する高齢者では,収縮期圧は140台、拡張期圧は80前後、心拍は73から76の間で保たれ、3年間安定しており服薬による血圧コントロールが適切に行われた場合,血圧及び心拍の上昇は見られなかった.「生活習慣病を持たない高齢者」の血圧、心拍数の平均値の3年間の推移です。高血圧症群と比べますと、収縮期圧が10ほど低く130台の値を示しています。拡張期圧は先ほどと同様で80前後でした。心拍は73から76の間で保たれていました。「高脂血症を有する高齢者」の血圧と心拍数は、生活習病を持たない高齢者と同様に、血圧、心拍とも正常値の範囲内で安定しています。「糖尿病を有する高齢者」は、こちらも同様に、3年問を通して、血圧、心拍とも正常値内で保たれていました。健脚度の「最大一歩幅」は、「高血圧症を有する高齢者」、「高脂血症を有する高齢者」、「高脂血症を有する高齢者」「生活習慣病を持たない高齢者」ともに、平成17年4月の時点で年齢相応の平均値より高く、移動能力のレベルが高いことが確認されますが、水中運動継続3年後には、両群ともに、さらに向上する傾向が認められました。「10m全力歩行」は、「高血圧症を有する高齢者」も、「生活習慣病を持たない高齢者」も、5秒前後の値であり、年齢相応の平均値よりも値が小さく、つまり早く歩けること、それも、3年間の年齢の増加に関わらず、3年後にはさらに値が小さく、「歩く」移動能力の向上が見られます。以上の結果、65歳以上を対象とした生活習慣病を有する高齢者の水中運動の継続による身体面への影響を検討した結果、生活習慣病を有する高齢者の血圧及び心拍に水中運動による悪影響は認められず、生活習慣病を持たない高齢者と同様に、下肢筋力や柔軟性が改善され、維持される傾向が認められました。