- 著者
-
笹井 芳樹
- 出版者
- 京都大学
- 雑誌
- 基盤研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 1999
哺乳類を含めた脊椎動物の神経系発生の開始スイッチを入れる分子は何か?という問いに答え、複雑な脳の構成原理に迫ることを目的として以下の研究を行った。神経誘導因子Chordinを用いてアフリカツメガエルの外胚葉を神経細胞に試験管内で分化させ、その際に誘導される遺伝子をデファレンシャル・スクリーニングによって単離し、3つの神経特異的転写因子(Zic-related 1,Sox2,SoxD)を同定した。mRNA微量注入による強制発現実験ではこれらの因子は神経分化を正に制御することが明らかになった。ドミナント・ネガティブ法による機能阻害実験ではSox2,SoxDは神経分化に必須の因子であることが証明された。さらに、スクリーニングを進めてさらに多くの神経誘導因子の下流遺伝子を単離した。初期発生制御因子として特に興味深いものとして、神経堤細胞特異的な転写因子FoxD3を同定した。FoxD3はWinged helix型の転写因子で、原腸胚期の半ばより予定神経堤領域に強く発現していた。mRNA強制発現により、FoxD3は未分化外胚葉細胞からSlug,twist,Ets-1などの神経堤細胞特異的マーカーの発現や色素細胞を誘導し、神経堤細胞を分化させることが判明した。現在、ドミナント・ネガティブ法による機能阻害実験で詳しくin vivoでの役割を検討している。