著者
篠原 博
出版者
宝塚医療大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

先行研究ではアーチェリー動作中に生じる「腕のふるえ」はパフォーマンス低下や肩甲骨の安定性を減弱させる要因と指摘している。この「ふるえ」は障害の原因にもなると考えられるため、軽減させる必要がある。我々は表面筋電計および加速度計を使用し、「腕のふるえ」のパワーを解析することや、筋活動を周波数解析することで「腕のふるえ」を引き起こす原因を解明することに取り組んだ。腕のふるえと相関関係を示す筋の活動を分析し、またその筋に対するトレーニング方法を考案した。そのトレーニングを実施した際にどの程度「腕のふるえ」が軽減するのかを検証し、実際に軽減することを確認した。
著者
事柴 壮武 浦辺 幸夫 前田 慶明 篠原 博 笹代 純平 藤井 絵里 森山 信彰
出版者
公益社団法人 広島県理学療法士会
雑誌
理学療法の臨床と研究 (ISSN:1880070X)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.21-24, 2013-03-31 (Released:2015-03-03)
参考文献数
11
被引用文献数
2

「目的」 大腿四頭筋セッティング(Quadriceps femoris muscle Setting:以下QS)は関節運動を伴わないため,下肢整形外科疾患に術後早期から実施できる。QS では大腿四頭筋のみでなく,ハムストリングや大殿筋,中殿筋も筋活動を発揮するため,股関節の角度が変化すると各筋の筋活動量や発揮される筋力が変化すると推測される。本研究ではQS 時の下肢筋筋活動が,体幹固定性,股関節角度の違いによりどのように変化するかを明らかにすることを目的とした。「方法」対象は下肢に既往がない成人男性9 名とした。対象は右側下肢膝窩部に下肢筋力測定・訓練器を設置した。リクライニングベッドを用いて股関節の屈曲角度を背面支持のある15°,65°,背面支持のない115°の肢位となるように設定し,両上肢を胸の前で組ませた。上記の股関節屈曲角度で5秒間の最大努力によるQSを各々2回行い,膝窩部が下肢筋力測定・訓練器を押し付ける力をセッティング力としその平均値を求めた。同時に右側の大腿直筋,内側広筋,外側広筋,半膜様筋,大腿二頭筋,大殿筋の筋活動を導出し,記録した。波形の安定した1秒間の積分値を各筋の最大随意収縮時の値で正規化し%MVCとして算出した。「結果」セッティング力は,15°で15.4±4.3N,65°で19.3±4.3N,115°で12.0±3.2Nとなり,背面支持のある65°が他の条件よりも有意に高い値を示した(p<0.05)。内側広筋と外側広筋の筋活動は背面支持のある65°が背面支持のない115°よりも有意に高い値を示した(p<0.05)。大腿直筋,大腿二頭筋,半膜様筋,大殿筋では有意な差は認められなかった。「結論」QSを行う際,股関節の屈曲角度を上記の3条件で比較した場合,背面支持のある65°の肢位の際にセッティング力や内側広筋,外側広筋の筋活動が高まることが示された。本研究の結果から,内側広筋と外側広筋の筋力増強練習は背面支持のある15°や65°の肢位にて行うことが有効かもしれない。今後はより詳細な角度での調査が必要であると考える。
著者
事柴 壮武 浦辺 幸夫 前田 慶明 篠原 博 山本 圭彦 藤井 絵里 森山 信彰
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2013, 2014

【はじめに,目的】膝前十字靭帯(anterior cruciate ligament;ACL)損傷はストップやジャンプ着地動作,サイドステップカッティング(sidestep cutting;SSC)動作で多く発生している。一般的に"Knee-in & Toe-out"という下肢アライメントの組み合わせが,マルアライメントの代表的なものとしてあげられる。SSC動作の筋活動について,Xieら(2012)はストップ期において大腿四頭筋に対するハムストリングの比(H/Q比)は,側方移動期よりも低値を示したとしている。また,ACL損傷のリスクである膝関節の過度の外反を制動するためには,大腿四頭筋とハムストリングの同時収縮をタイミングよく行う必要がある。よって,ACL損傷のメカニズムや予防を考慮すると,筋活動量だけでなく筋活動のタイミングを検討することは重要であると考える。SSCは足部運動との関連が示されており,足部の外側接地(Dempseyら,2009)や後足部での接地(Cortesら,2012)がACL損傷のリスクになるとされている。しかし,足部の方向(Toe-out)とSSCの関連を調べたものはみあたらない。本研究は,Toe-outでのSSCが膝関節運動学,筋活動様式に及ぼす影響を検討することを目的とした。仮説は,Toe-outでのSSCはNeutralと比較して膝関節外反角度が大きく,H/Q比が低いとし,さらに筋電位ピーク到達時間が遅延するとした。【方法】対象は下肢に整形外科的疾患の既往がない,健常な女性バスケットボール選手6名(年齢20.0±1.4歳,身長158.0±3.5cm,体重49.3±5.3kg,競技歴9.3±5.3年)とした。対象は5m離れた地点から最大努力速度で助走し,軸脚の左脚で踏み切り,右90°方向へSSCを行った。その際,着地条件として足部Neutral(条件N)と足部Toe-out(条件TO)の2条件を設定し,3試行ずつ実施した。なお,反射マーカーを対象の左下肢8ヶ所に貼付し,ハイスピードカメラ(フォーアシスト社)5台を用い,サンプリング周波数200HzでSSCを撮影した。撮影した映像を動作解析ソフト(Ditect社)に取り込み,DLT法で各マーカーの3次元座標を求め,膝関節屈曲,外反角度を算出した。本研究ではSSCを足部接地から膝関節最大屈曲位までのストップ期,膝関節最大屈曲位から足部離地までの側方移動期の2期に分割し,各期の膝関節最大外反角度を分析に用いた。筋活動の記録には表面筋電図(追坂電子機器社)を用いた。被験筋は外側広筋(VL),内側広筋(VM),大腿二頭筋(BF),半膜様筋(SM)とした。筋電図は生波形からRMS(root mean square)に変換して解析した。本研究ではVLとVMの活動量の平均値を大腿四頭筋の活動量,BFとSMの活動量の平均値をハムストリングの活動量とした。Initial contact(IC)を基準(0)とし,筋電波形の振幅がピークに達する時間をピーク到達時間と規定した。【倫理的配慮,説明と同意】本研究は,広島大学大学院保健学研究科心身機能生活制御科学講座倫理委員会の承認を得て実施した(承認番号1327,1335)。対象に本研究の趣旨を十分に説明し,書面にて同意を得た。【結果】膝関節最大外反角度はストップ期の条件Nで7.0±3.8°,条件TOで8.8±5.5°であった。側方移動期の条件Nで4.6±3.9°,条件TOで7.9±5.4°であり,条件TOで有意に高値を示した(p<0.05)。H/Q比はストップ期の条件Nで0.33±0.08,条件TOで0.33±0.13であった。側方移動期の条件Nで0.67±0.22,条件TOで0.48±0.12であり,条件TOで有意に低値を示した(p<0.05)。各筋のピーク到達時間は,条件NでVMは119.9±49.1msec,VLは114.3±49.6msec,SMは102.1±76.1msec,BFは175.4±79.5msecであった。条件TOでVMは145.2±26.2msec,VLは151.9±24.8msec,SMは88.6±62.6msec,BFは194.1±58.8msecであった。条件TOでVMのピーク到達時間が有意に遅延していた(p<0.05)。【考察】本研究の結果より,Toe-outでのSSCはNeutralと比較して,側方移動期の膝外反角度が高値となり,H/Q比が低値を示した。膝関節外反角度が大きく,H/Q比が低いことは大腿四頭筋優位となりACL損傷のリスクが高いことを示している。さらに,VMのピーク到達時間の遅延を認めた。また,有意差はなかったもののSMのみピーク到達時間がNeutralよりも早期であった。VMは内側ハムストリング(SM)と協同して内側機構の支持に働き,膝関節の安定性に関与している(Myerら,2005)。したがって,内側安定機構であるSMとVMのピーク到達時間のずれは,過度の膝関節外反の制動を困難にしていることが考えられる。【理学療法学研究としての意義】Toe-outでのSSCが膝関節運動学,筋活動様式に与える影響を明らかにすることは,ACL損傷メカニズムを解明する一助になるだけでなく,スポーツ現場やリハビリテーション場面において,ACL損傷の予防につながると考える。
著者
森山 信彰 浦辺 幸夫 前田 慶明 篠原 博 笹代 純平 藤井 絵里 高井 聡志
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.48101779, 2013 (Released:2013-06-20)

【はじめに、目的】 体幹筋は,表層に位置するグローバル筋と,深部に位置するローカル筋に分類される.ローカル筋は骨盤の固定に寄与しており,下肢と骨盤の分離運動のためにはローカル筋の活動が不可欠である.今回,選択的にローカル筋の活動を促すDrawing-in maneuver(以下,Draw in)といわれる腹部引き込み運動に着目した.主に下肢の運動中にローカル筋による骨盤固定作用を得るために,グローバル筋の活動を抑えながら,ローカル筋の筋活動を高めるDraw inの重要性が知られてきている. 座位では背臥位に比べ内腹斜筋の活動が増加することや(Snijder et al. 1995),腹直筋が不安定面でのバランスに関与することから(鈴木ら2009),Draw inを異なる姿勢や支持面を持つ条件下で行うとこれらの筋の活動量が変化すると考えられる.今回,Draw in中のグローバル筋である腹直筋と,ローカル筋である内腹斜筋を対比させながら,この活動量の比率を求めることで,どのような方法が選択的な内腹斜筋の筋活動量が得られるか示されるのではないかと考えた.本研究の目的は,姿勢や支持面の異なる複数の条件下で行うDraw inのうち,どれが選択的に内腹斜筋の活動が得られるかを検討することとした.仮説としては,座位にて支持基底面を大きくした条件で行うDraw inでは,腹直筋に対する内腹斜筋の筋活動が高くなるとした.【方法】 健常成人男性6名 (年齢25.8±5.7歳,身長173.0±5.2cm,体重65.4±9.0kg)を対象とした.Draw inは「お腹を引っ込めるように」3秒間収縮させる運動とし,運動中は呼気を行うよう指示した.Draw inは,背臥位,背臥位から頭部を拳上させた状態(以下,頭部拳上),頭部拳上で頭部を枕で支持した状態 (以下,頭部支持),足底を接地しない座位(以下,非接地座位),足底を接地させた座位(以下,接地座位)の5条件で行った.筋活動の計測にはpersonal EMG(追坂電子機器社)を用い,下野(2010)の方法を参考に腹直筋,内腹斜筋の右側の筋腹より筋活動を導出した.試行中の任意の1秒間の筋活動の積分値を最大等尺性収縮時に対する割合(%MVC)として表し,各条件について3試行の平均値を算出した.さらに,腹直筋に対する内腹斜筋の筋活動量の割合(以下,O/R比)を算出した.5条件間の腹直筋および内腹斜筋の筋活動量と,O/R比の比較にTukeyの方法を用い,危険率5 %未満を有意とした.【倫理的配慮、説明と同意】 対象には事前に実験内容を説明し,協力の同意を得た.本研究は,広島大学大学院保健学研究科心身機能生活制御科学講座倫理委員会の承認を得て実施した(承認番号1123).【結果】 背臥位,頭部拳上,頭部支持,非接地座位,接地座位での腹直筋の%MVCはそれぞれ28.0±24.2%,46.4±29.0%,23.0±22.0%,13.2±7.2%,10.6±5.9%であった.頭部拳上では,非接地座位および接地座位より有意に高かった(p<0.05).内腹斜筋の%MVCはそれぞれ48.7±44.1%,49.0±36.9%,47.9±40.8%,45.4±32.1%,50.6±28.4%となり,各群間で有意差は認められなかった.O/R比はそれぞれ2.67±3.10,1.31±1.52,2.58±2.74,3.33±2.62,4.57±2.70であり,接地座位では頭部拳上より有意に高かった(p<0.05).【考察】 内腹斜筋の活動量には条件間で有意差がなく,今回規定した姿勢や支持基底面の相違では変化しないと考えられた.腹直筋は,頭部拳上では頭部の抗重力位での固定の主働筋となるため,筋活動量が他の条件より高いと考えられた.さらに,有意差はなかったが背臥位では座位に比べて腹直筋の活動量が高い傾向があった.背臥位では,頭部拳上の条件以外でも,「お腹をへこませる」運動を視認するために頭部の抗重力方向への拳上と軽度の体幹屈曲が生じ,腹直筋の活動が高まった可能性がある. O/R比は腹直筋の筋活動の変化により,条件間で差が生じることがわかった。背臥位で行うDraw inでは,腹直筋の活動を抑えるために,頭部の支持による基底面の確保に加えて,頭部位置を考慮する,もしくは座位で行うことが有効であると考えられた.【理学療法学研究としての意義】 Draw inを行う際に背臥位から頭部を挙げる条件では,内腹斜筋の活動量が同程度のまま腹直筋の筋活動が高まり,結果としてO/R比が低下するという知見が得られ,効果的に行うためにはこのような条件をとらないよう留意すべきことが示唆されたことは意義深い.