- 著者
-
米井 力也
平田 由美
- 出版者
- 大阪大学
- 雑誌
- 萌芽研究
- 巻号頁・発行日
- 2005
(1)本年度は、昨年度に引き続き、『紅の豚』『ハウルの動く城』等の宮崎駿監督作品における〈女性表象〉について、日本語版と英語吹替版を対照させながら考察した結果、英語吹替版では〈自立した強い女性〉として描かれる傾向が強いことが判明した。ここには日本語から英語への翻訳の問題だけではなく、二つの文化におけるジェンダー表象の差異が反映していることを認識する必要があるだろう。(2)また、『もののけ姫』をはじめとする日本の中世を舞台に描かれた作品をとりあげ、「〈侍〉の表象」というテーマで、時代劇アニメーションで用いられる日本語の特性を分析したうえで、映像翻訳を介する〈侍〉のイメージの受容の問題についても考察した。〈侍〉の表象をとりあげたのは、時代劇の言葉を〈役割語〉と捉え、〈侍〉とその周辺の諸階層が用いる日本語が実際にその時代に話されたものではなく、「時代劇」というジャンルで形成されたものとして再検討することが必要だろうと考えたからである。(3)『もののけ姫』以外には、源頼光の四天王の一人、坂田公時が女性主人公という設定である『怪童丸』を分析対象にとりあげた。近年の時代劇アニメーションのいくつかに登場する女性と同様、この坂田公時も『風の谷のナウシカ』のナウシカに通じる〈戦士〉の側面を持っているため、〈戦う女性ヒーロー〉の一例として〈女性表象〉の変遷のなかに位置づけることも可能である。