著者
米山 茂美 渡部 俊也 長谷川 光一
出版者
科学技術政策研究所
巻号頁・発行日
2013-01 (Released:2013-04-17)

本報告書では、産学共同研究が大学研究者の学術的研究成果に与える影響を、過去の共同研究の経験蓄積という観点から分析した。ここでは、学術的研究成果を、論文発表件数の増加率及び論文被引用件数の増加率という量・質の両面から捉え、また研究者が属する研究分野の違いを考慮した分析を行った。 分析結果からは、(1) 産学共同研究への参加が大学研究者の研究成果に与える影響は、過去に共同研究を実施した経験があるかどうかによって異なること、(2) 過去に産学共同研究の経験がない研究者においては、全体として、共同研究への参加は必ずしもその後の研究者の研究成果にプラスの影響を与えず、むしろ論文被引用件数の増加率という質的側面においてマイナスの影響を与えうること、(3) 他方で、過去に産学共同研究の経験のある研究者においては、一定程度までの共同研究への参加が研究成果にプラスの影響を与えるが、過度の参加は逆に研究成果にマイナスの影響を与えうること、(4) そうした全体としての傾向は、研究者が所属する研究分野によって異なっていることが確認された。 こうした分析結果を踏まえ、産学連携施策の展開に当たって考慮すべき政策的な含意として、過去に産学連携を行った経験のない研究者とその経験がある研究者ごとに、産学連携への取り組みにおける異なる管理・運用方針やそれを支える支援策が求められること、また研究分野による違いを考慮したきめ細かい施策展開が求められることを提示した。
著者
山内 勇 古澤 陽子 枝村 一磨 米山 茂美
出版者
科学技術政策研究所 第2研究グループ
巻号頁・発行日
2012-07-06 (Released:2012-08-09)

本研究では、研究開発成果を保護する手段としての特許とノウハウ・営業秘密の重要性に着目し、それらがイノベーション成果に与える影響を分析した。 イノベーションの成果指標としては、(1)過去3 年間における、技術的新規性を持つ新製品・サービスの投入件数、(2)新製品を投入してからの利益期間の2 つを用い、それらの指標に対して、特許とノウハウ・営業秘密の保有量や両者の保有比率が与える影響を分析した。分析の結果、全体としては、特許の保有件数が多い企業ほど新製品の投入件数が多く、ノウハウの保有件数が多い企業ほど利益期間が長いことが明らかとなった。これらの結果は、新製品の投入には、特許権で技術を保護しつつその内容を公開することの効果が大きく、利益の獲得には、技術を秘匿することによる競争優位性の向上効果が大きいことを示唆している。また、特許とノウハウのバランスもイノベーション成果に重要な影響を与えていることが確認された。