著者
板垣 博
出版者
武蔵大学経済学会
雑誌
武蔵大学論集 : The Journal of Musashi University (ISSN:02871181)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.27-41, 2021-03-30

本稿の目的は,韓国,台湾,ASEAN(タイ・マレーシア),北米(アメリカ),チェコにおける日本企業の製造拠点を対象として,それらの拠点がどのような経営進化を遂げてきたか,その要因は何なのかを,2時点ないしは複数の時点を比較しながら考察することにある.議論の焦点は経営の大枠の変化にある.具体的には,資本関係:単独出資か合弁か,過半数支配か資本参加か,事業分野の選択:製品と市場(国内か輸出か),現地拠点の機能(製造・開発),ローカル人材の登用・活用などを考察する.研究ノート
著者
吉田 真理子
出版者
武蔵大学経済学会
雑誌
武蔵大学論集 = The journal of Musashi University (ISSN:02871181)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.21-27, 2020-03

経済学部70周年記念論文集論文
著者
茶野 努
出版者
武蔵大学経済学会
雑誌
武蔵大学論集 : The Journal of Musashi University (ISSN:02871181)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.239-264, 2009-12-10

近年,銀行,証券,保険業等の金融機関が幅広い業務を営むために企業グループを形成する動き,いわゆる金融コングロマリット化がグローバルな規模で急速に進展した。金融コングロマリット化は,金融技術革新,規制緩和を背景として,①金融に対するニーズの多様化・高度化への対応,②収益力の強化,③経済のグローバル化への対応,④ブランド戦略の展開にその狙いがある。 ERM(エンタープライズ・リスク・マネジメント,統合リスク管理)の観点からは,エコノミック・キャピタルにもとづく収益・リスク・資本の統合的管理,とくに,業務統合によるリスク分散効果に注目すべきである。Lown et all(2000)によれば,リスク・リターンの組み合わせで最も効率的な組み合わせは銀行・生保としている。これに対して,Kuritzkes, Schuermann and Weiner(KSW と略す)(2003)では,分散効果が最も大きい組み合わせは銀行・損保としている。これは銀行の主要リスクである信用リスクと損保の災害リスク間の相関が低いためである。 また,KSW(2003)は,レベルⅢ(事業間レベル)での分散効果が小さいので,サイロ・アプローチ(業態による縦割り規制)が適切であり,持ち株会社レベルでの必要資本は銀行・保険等各機関の資本の単純合計でよいとしている。ちなみに,銀行と保険のレベルⅢにおけるALM(金利)リスクの相関係数は70%としている。 しかしながら,リスク分散効果を考える上では,銀行と生保におけるリスク・プロファイルの違いにより細心の注意を払うべきである。すなわち,銀行は短期調達・長期運用,生保は長期調達・短期運用という違いがあるので,銀行・生保間のALM リスクにかかわる相関係数は"構造的に"マイナスとなる(これは他のリスクファクターには見られない特徴である)。したがって,前述のような誤った前提にたった規制は銀行・生保を兼営する金融コングロマリットにとってきわめて過大な資本要件を課すことになってしまう。これは,金融コングロマリットの最適な資本配分を歪めて,企業としての成長性を阻害することになりかねない。また,規制要件への対応として,金利リスクをヘッジするために余計なコストを負担させることになってしまう。このコストは,金融コングロマリットの株主や預金者,保険契約者が間接的に負担することになる。 世界でも極めて規模の大きな,銀行・生保兼営の金融コングロマリットである日本郵政グループの銀行勘定における金利リスク(保有期間1 年,観測期間5 年のヒストリカル法による)は,平成20 年3 月末で20,847 億円,20 年9 月末で21,526 億円と莫大なリスク量になる。おそらく「ゆうちょ銀行」の金利リスクの多くは「かんぽ生命」の金利リスクによってナチュラル・ヘッジされているであろう。サイロ・アプローチの合算という単純な規制を日本郵政グループに適用するのは大きな問題となる。現在の開示情報は十分ではないため,この影響を実証的に計測するのは今後の課題としたい。
著者
黒坂 佳央
出版者
武蔵大学経済学会
雑誌
武蔵大学論集 = The journal of Musashi University (ISSN:02871181)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.127-158, 2017-09

本稿の目的は,資本市場統合の高度化の下での2016年における円ドルレートの変動原因を明らかにすることである.用いる円ドルレートデータは,午後5時の東京外国為替市場取引終了時点の円ドルレート終値である.日本経済新聞の紙面版と電子版のマーケット欄為替・金融記事は,外国為替取引状況について解説している.円ドルレートの変動原因の解明に際して,本稿における分析方法の特徴はこのような「日経記事」による日々の為替取引解説を使用する点にある.2016年1年間通じての円ドルレートの変動原因についての分析結果は以下のとおりである.予想円ドルレート変動が現実円ドルレート変動へ及ぼした3.81円の円高・ドル安の原因は,「原油安」,「世界景気の減速懸念」,「米国での早期の追加利上げ観測後退」,「中国による南シナ海地対空ミサイル配備の地政学リスク」,「中国人民銀行による人民元の対米ドル基準値を元安方向設定に基づく中国からの資金流出」である.「原油安」も中国経済停滞に基づく原油需要の低下が一因なので,2016年の予想円ドルレート変動の原因は中国絡みのそれが多かったといえる.The purpose of this paper is to clarify causes of fluctuations in the yen-dollar exchange rate in 2016. The yen-dollar exchange rate data used in this paper are those of closing prices at 5:00 p.m. in the Tokyo Foreign Exchange Markets. The Nihon Keizai Shinbun comments on the daily exchange dealings in the Tokyo Foreign Exchange Markets in both the print edition and the electronic one. The characteristic of the analytical method in this paper is to employ the daily exchange dealings commentary by such "Nikkei article" in order to clarify causes of fluctuations in the yen-dollar exchange rate. The analysis about causes of fluctuations in the yen-dollar exchange rate through the year 2016 as a whole is as follows. Causes of the strong yen/weak dollar of 3.81 yen that the expected yen-dollar exchange rate gave to the actual-yen dollar exchange rate are "lower crude oil prices", "the perspective of the world economy slowdown", "an early additional rise in interest rates observation retreat in the U.S.", "a geopolitics risk of the South China Sea land-to-air missile deployment by China," and "fund outflow from China based on the setting with the standard value of yuan by People's Bank of China for U. S. dollar towards the weaker yuan-dollar exchange rate". Because "lower crude oil prices" is partly due to a drop of the crude oil demand based on the China's economy stagnation, it may be said that there were many causes associated with China as for those of the expected yen-dollar exchange rate in 2016.板垣 博教授 記念号JEL Classification Codes: F3, F4
著者
木下 富夫
出版者
武蔵大学経済学会
雑誌
武蔵大学論集 = The journal of Musashi University (ISSN:02871181)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.11-38, 2016-01

日本の出生率は1990年に1.5を切りその水準が続いている.この結果,生産年齢労働人口は7,700万人(2015年)から6,300万人(2035年),5,300万人(2045年)へ減少すると予想されている.経済規模の縮小は財政規模を比例的に縮小させるから,公債管理政策や年金制度は大きな困難に直面することが予想される.少子化は先進国に共通した現象であり,それは人口転換(demographic transition)と呼ばれている.しかしながら出生率が1.4まで下がる国と2.0前後でとどまる国があり,その差の理由は必ずしも明確ではない.わが国が少子化を食い止めるには,出産と育児に対して強力なインセンティヴを与える制度改革が必要であろう.少子化に対して移民を受け入れてはどうかという意見がある.フランス,ドイツ,英国では移民人口は総人口の一割を超えているが,EU はその拡大とシェンゲン協定により,今やヨーロッパを包含する巨大な労働市場となっている.また米国,カナダ,オーストラリアの移民人口比率はさらに高い.移民の受け入れは文化摩擦や犯罪率の上昇などから反対意見も少なくない.とくに国籍に血統主義をとる日本では移民への抵抗感は大きい.これに関してヨーロッパ諸国の経験は大いに参考になろう.また欧州におけるユダヤ民族の歴史は,移民問題を考える上で学ぶべきものが多いであろう.JEL Classification Codes:J11, J13, J15, J18
著者
中村 圭介
出版者
武蔵大学経済学会
雑誌
武蔵大学論集 (ISSN:02871181)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.p49-87, 1990-07