著者
長谷川 光一
出版者
科学技術政策研究所 第2研究グループ
巻号頁・発行日
2012-04-17 (Released:2012-08-09)

近年、競争優位の源泉として、デザインの重要性が指摘されている。しかし、国内におけるデザイン活動に関する統計は十分ではなく、企業内部でのデザインマネジメントが製品開発活動とどのように関係しているのか、イノベーションへの影響等は不明であった。本報告書では、デザイン活動に関して構築したデータを用い、デザインとイノベーションの関係を分析した。 製品開発マネジメントにおいて、技術的機能・性能とデザインの間にトレードオフ関係がある時、デザインを優先する企業は19 社にすぎない。しかしこの企業が、技術的に新規性を持つ新製品の市場への投入と定義したプロダクト・イノベーションをもっとも高い割合で実現している。デザインを優先する企業においてプロダクト・イノベーションの実現率が高い理由は、デザインを重視した製品開発によって相当程度の技術的ブレークスルーが起こっているためと考えられる。 デザイン活動は、時にいとも簡単にイノベーションを生み出す。有田焼でできた焼酎の器の開発に関する事例では、わずか2 週間で新製品の基本設計が完了した。デザインを優先する製品開発は、提案されるデザイン案を実現するために、全く異なった発想による技術開発をせざるを得ないことがあり、これがブレークスルーに繋がる。デザインの持つ機能を効果的に引き出すためには、デザインの持つ特徴を理解した上で製品開発マネジメントを行う事が重要である。
著者
米山 茂美 渡部 俊也 長谷川 光一
出版者
科学技術政策研究所
巻号頁・発行日
2013-01 (Released:2013-04-17)

本報告書では、産学共同研究が大学研究者の学術的研究成果に与える影響を、過去の共同研究の経験蓄積という観点から分析した。ここでは、学術的研究成果を、論文発表件数の増加率及び論文被引用件数の増加率という量・質の両面から捉え、また研究者が属する研究分野の違いを考慮した分析を行った。 分析結果からは、(1) 産学共同研究への参加が大学研究者の研究成果に与える影響は、過去に共同研究を実施した経験があるかどうかによって異なること、(2) 過去に産学共同研究の経験がない研究者においては、全体として、共同研究への参加は必ずしもその後の研究者の研究成果にプラスの影響を与えず、むしろ論文被引用件数の増加率という質的側面においてマイナスの影響を与えうること、(3) 他方で、過去に産学共同研究の経験のある研究者においては、一定程度までの共同研究への参加が研究成果にプラスの影響を与えるが、過度の参加は逆に研究成果にマイナスの影響を与えうること、(4) そうした全体としての傾向は、研究者が所属する研究分野によって異なっていることが確認された。 こうした分析結果を踏まえ、産学連携施策の展開に当たって考慮すべき政策的な含意として、過去に産学連携を行った経験のない研究者とその経験がある研究者ごとに、産学連携への取り組みにおける異なる管理・運用方針やそれを支える支援策が求められること、また研究分野による違いを考慮したきめ細かい施策展開が求められることを提示した。
著者
長谷川 光一 ペラ F マーチン カーン マイケル ウー ジュン
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

ヒト多能性幹細胞(ES細胞やiPS細胞)は、特定の培養条件下で、多能性を保ったまま無限に増殖させること(自己複製)や、人体の全ての細胞種を作り出すことが可能である。このため、細胞移植治療や創薬、疾患研究への利用が期待されている。本研究では、大量の細胞が必要となるこれらの応用利用を安全に安価で行うために、自己複製のメカニズムを解明し、化合物で制御することで合成培養システムの開発を行った。その結果、3種類の化合物を用いることで、従来より安価で安定した合成培地を開発し、この培地を用いた培養システムの開発に成功した。本システムによって多能性幹細胞を利用した再生医療が加速されるものと期待される。