- 著者
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籾山 政子
加賀美 雅弘
佐藤 都喜子
- 出版者
- The Association of Japanese Geographers
- 雑誌
- Geographical review of Japan, Series B (ISSN:02896001)
- 巻号頁・発行日
- vol.61, no.1, pp.50-58, 1988-05-31 (Released:2008-12-25)
- 参考文献数
- 30
わが国における医学地理学研究は近年の研究テーマの多様化に,その著しい発展を見てとることができる。たとえば,住民の医療行動を空間的に分析した医療圏研究,あるいはこれを民俗的現象と結びつけた研究などに多くの関心が寄せられつつある。しかし,わが国の医学地理学の主流は,なお疾病死亡の地域較差をテーマとした研究にあるといえよう。この種の研究,とりわけ,その分析対象と方法は世界的動向と比較的類似している。しかし,一方,ここにはわが国独特の研究動向,すなわち籾山による疾病死亡の季節変化に派生する一連の研究がある。本報告は,この種の研究を取りあげ,わが国の医学地理学研究の特色および今後の展望を検討したものである。 近年つぎつぎに刊行された疾病地図は,本分野の社会的重要性を喚起したものとしてきわめて重要視されている。なかでもわが国における死因の第一位を占めてきた脳卒中死亡の地域較差は,これを契機にして,地理学をはじめ,疫学,人類生態学,統計学など,多彩な方面から検討されている。地理学においては,かかる地域較差を規定するような地域的要因,とくに気候的要因,それに加えて社会経済的要因の解明が,統計学的に進められている。そこでは,対象となる地域のスケールを変えることによって,疾病と地域とのさまざまな関係が解明される。これら諸関係を地理的スケールに応じて整理することが,地理学的現象としての脳卒中死亡,ひいては疾病全般の意味を吟味することになり,今後の医学地理学研究の展開にとって重要なポイントとなるであろう。