著者
中澤 努 長 郁夫 坂田 健太郎 中里 裕臣 本郷 美佐緒 納谷 友規 野々垣 進 中山 俊雄
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.125, no.5, pp.367-385, 2019-05-15 (Released:2019-08-15)
参考文献数
68
被引用文献数
7 12

東京都世田谷区の武蔵野台地の下に分布する更新統世田谷層及び東京層の層序と地盤震動特性について検討した.世田谷層はMIS 6に開析された谷地形をMIS 5e前期~中期に埋積した地層であり,内湾成の軟らかい泥層を主体とする.一方,この地域の東京層は,MIS 5e中期?~後期の湾奥で形成された砂層などからなり,世田谷層とは対照的に広範囲に比較的平坦に分布する.常時微動観測により,段丘礫層を伴わず世田谷層が厚く分布する地域では,1Hzにピークをもつ地盤震動特性が示された.首都圏の地盤リスクを考えるとき,世田谷層をはじめとする台地の下のMIS 6開析谷埋積層の分布に注視する必要がある.
著者
納谷 友規
出版者
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
雑誌
地質調査研究報告 (ISSN:13464272)
巻号頁・発行日
vol.73, no.3, pp.137-142, 2022-10-26 (Released:2022-10-29)
参考文献数
17

岩殿丘陵西縁部の帰属不明の砂質シルト岩試料の堆積年代を明らかにするために,珪藻化石分析を行った.分析した試料からは,珪藻化石帯NPD4A帯(Denticulopsis lauta帯)を特徴づける珪藻化石が産出するため,年代は中期中新世前期と判断される.また,Cavitatus lanceolatusを産することから,本試料の年代は生層準D41.5(Cv. lanceolatusの初産出:15.6 Ma)– D43.2(Cv. lanceolatusの終産出:15.2 Ma)の区間に限定される.珪藻化石層序に基づくと,本試料は比企層群荒川層の上部か市ノ川層に対比される.
著者
船引 彩子 納谷 友規 斎藤 広隆 竹村 貴人
出版者
日本堆積学会
雑誌
堆積学研究 (ISSN:1342310X)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.137-152, 2014-12-26 (Released:2015-02-24)
参考文献数
32
被引用文献数
3

関東平野西部には武蔵野台地に代表される中期更新世後期以降の段丘地形が広がり,段丘堆積物の下位に鮮新世末から中期更新世に堆積した海成層を主体とする上総層群が分布することで知られている.本研究は武蔵野台地のうち,立川面に位置する東京都府中市おいて掘削された,CRE-TAT-1及びCRE-TAT-2コアについて堆積相の観察を行い,含水比,懸濁液のEC·pH,珪藻分析,蛍光X線分析による元素の含有率などの測定を行い,堆積環境を推定した.本研究では,対象地において実験用の熱交換井50m分を掘削する際に同深度のボーリングコア試料を採取し,堆積相の詳細な記載を行い,堆積物の各種物性値を計測し,堆積環境の復元を行った.その結果,対象地の地下50mに分布する地層は複数の堆積サイクルからなることが明らかになった.両コアは主に3枚の礫層とそれに挟まれた砂層および泥層からなり,下位よりユニット1〜7に分けられる.このうちユニット2·4·6は砂礫層からなり,河川堆積物を形成する.ユニット1は主に砂質の河川チャネル堆積物から構成される.ユニット3は主に砂〜シルト層からなり,淡水生の珪藻や生痕が含まれ,氾濫原〜チャネルのような環境を示す.ユニット5は下部で陸域の環境を示すが,中部は青灰色のシルト層で海生の珪藻を産出する.硫黄の含有量,ECともに高い値を示し,海成層と考えられる.このシルト層は上方に向かって砂質のチャネル·氾濫原堆積物へと漸移的に変化し,浅海化の傾向が見られる.各ユニットは大まかにはユニット1〜4が陸成,ユニット5が海成〜陸成,ユニット6·7が陸成の堆積物からなる.ユニット6は立川面を構成する段丘礫層,ユニット7が立川ローム層,またユニット1〜5は上総層群の舎人層である可能性が高い.