著者
中村 洋介 金 幸隆
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.77, no.1, pp.40-52, 2004-01-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
24
被引用文献数
2 2

本研究では,魚津断層の南部に位置する早月川および上市川流域の河成段丘においてボーリング調査を実施し,ローム層中に微量に含まれる火山起源の鉱物を用いて段丘の形成時期の推定を行った.研究地域の段丘面は,高位より,東福寺野面,中野面および大崎野面の3面に分類される.ローム層の層相ならびに火山灰層の層位から考慮して,東福寺野面はMIS6に,中野面はMIS5dに,大崎野面はDKP降下直前に,それぞれ形成されたものと推定される.これらの段丘面は魚津断層によって上下変位を受けている.それぞれの段丘面の形成年代から,魚津断層の上下平均変位速度は北部では0.4~0.5mm/yr程度,南部では0.2mm/yr程度と算出される.北部の変位速度が南部よりも速いのは,本研究地域が全長約25kmの魚津断層の南端に位置するためと考えられる.
著者
中村 洋介
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2013, 2013

2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震はMw9.0と有史以来に我が国で発生した最大規模の地震である。同地震と同じくマグニチュード9クラスの地震であるスマトラ沖地震は、2004年12月26日に発生した本震(Mw9.1)以降、10年弱の間にマグニチュード7~8クラスの余震が10回以上発生している。&nbsp;2011年東北地方太平洋沖地震と2004年スマトラ沖地震は、プレート境界で発生した低角逆断層型の地震でメカニズムが非常によく似ている。実際に、東北地方太平洋沖地震においても2011年3月11日の本震発生以降余震ならびに誘発地震が頻発し、現在もなお地震活動が活発である。気象庁によると、東北地方太平洋沖地震が発生した2011年3月から2013年3月までの2年間の間に、同地震の余震・誘発地震とみられる地震はM4以上が5794回、うちM5以上は753回である。現在のところ、最大余震は本震から30分後に茨城県沖で発生したM7.7であるが、本震から約1ヶ月後の2011年4月7日には宮城沖でM7.2の地震(スラブ内地震)が、本震から約1年9か月後の2012年12月7日には同じく宮城沖でM7.3の地震(アウターライズ地震とみられる)が発生している。&nbsp;また、誘発地震も数多く発生しており、本震の翌日の2011年3月12日には長野県北部を震源とするM6.7の地震ならびに秋田沖を震源とするM6.4の地震が発生している。本震から3日後の2011年3月14日には富士宮付近を震源とするM6.4の地震が、同3ヶ月後の2011年6月30日には松本市付近を震源とするM5.4の地震が、同1年11ヵ月後の2013年2月25日には栃木県北部を震源とするM6.2の地震がそれぞれ発生した。これらの地域は東北地方太平洋沖地震発生以後に地震活動が活発になった地域が多く、現在もなお地震活動が活発である。以上を考慮すると、東北地方太平洋沖地震もスマトラ沖地震と同様に、今後長期間に渡って余震・誘発地震が発生すると考えられる。<br>
著者
鈴木 康弘 岡田 篤正 竹村 恵二 慶 在福 金 幸隆 廣内 大助 伊藤 愛 大石 超 中村 洋介 成瀬 敏郎 北川 浩之 渡辺 満久
出版者
日本活断層学会
雑誌
活断層研究 (ISSN:09181024)
巻号頁・発行日
vol.2005, no.25, pp.147-152, 2005

The Ulsan fault extends for 50 km along the NNW-SSE direction in the southeastern part of the Korean Peninsula; this is one of the most important active faults in Korea. Its paleoseismicity has recently attracted considerable attention. With the support of KOSEF (Korean Science and Engineering Foundation), excavation studies of this fault were conducted in 1999 as a part of the Korea-Japan cooperative research at Kalgok-ri in Kyongju city. The results obtained are summarized as follows. (1) The Ulsan fault plane has an eastward dip of approximately 30 degrees and exhibits typical reverse faulting. (2) It was reactivated three times in the past 30,000 years, in particular, twice after the age of AT tephra (approximately 25,000 years BP). (3) A vertical displacement of approximately 0.8 m occurred during the fault event, and the amount of net slip along the fault plane is calculated to be 1.6 m.
著者
中村 洋介 香内 彩夏
出版者
一般社団法人 国際ICT利用研究機構
雑誌
国際ICT利用研究学会論文誌 (ISSN:24330205)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.3-9, 2020 (Released:2021-11-06)
参考文献数
8

本研究では,ANA 全139 路線,JAL 全145 路線のうち,運行本数が多いANA30 路線,JAL 25 路線(計147,000 便)の欠航率を調査した。調査期間は2019 年9 月1 日
著者
中村 洋介 中村 和郎
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.128, 2006 (Released:2006-05-18)

1.はじめに 本発表では、一本の積雲列がしばしば三浦半島から東京・世田谷方向に延びていることを発見したので報告する。関東南部の積雲列は東京環状八号線(通称「環八」)上にできる低層の積雲列「環八雲」が知られる。塚本(1990)は、夏季に形成される環八上空の積雲列を「ヒートアイランド雲」と名づけ、環八付近の高温域に東京湾と相模湾からの海風が収束し、大気汚染物質が凝結核になることで形成されると報告した。本報告での積雲列は、三浦半島の中央を南北に延びる横浜横須賀道路(通称「横横」)に沿って出現する。比較的交通量の多い横浜横須賀道路上空に一列の積雲が連なることからこの雲を仮に「横横雲」と名付けた。本発表では、「横横雲」の出現日、出現時の風向、気温、海水温、気圧配置と現段階で考察される出現の成因について報告する。分析には気象庁アメダス、神奈川県環境科学センター、神奈川県農林水産情報センター、神奈川県水産技術センターの資料を使用した。2.「横横雲」の出現 「横横雲」は低層の複数の積雲がほぼ南北方向に長く一列に並ぶ雲列である。2005年は年間20回程度の発生を確認した。観測は横浜市戸塚区小雀町の丘陵上からの目視である。積雲列を追跡すると、日平均通行台数13万台の横浜横須賀道路上空に発生していた。発生時期は3_から_9月に多くみられ、発生時の多くは移動性高気圧や太平洋高気圧に関東地方が覆われている。「横横雲」は早朝から夕方にかけて発生し、夜間は消滅する。発生時、積雲の各セルは北方向へ流れている。発生時の風向は、三浦半島の東京湾側では南東成分の風向、相模湾側では南西成分の風向を示す(図1)。冬季の北成分の風向時は発生しない。 「横横雲」発生時の2005年4月24日に積雲列を北方向に追跡すると、横浜横須賀道路から第三京浜上空に延び、川崎IC付近で世田谷(環八)方向に続いていた。一方で2005年8月4日に南方向に追跡すると逗子付近で雲が形成されていることを確認した。3.「横横雲」の成因 三浦半島のほぼ中央を南北に積雲列が並び、発生時には積雲列に向かって風が収束している。暖められた三浦半島の陸域と周りを囲む比較的低い海水温域による海風の発生が東京湾と相模湾からの風の収束を生み、「横横雲」が発生していると推察される。発生には横浜横須賀道路の交通量の関わりも考えられるが、より交通量の多い横浜新道上空には発生していないなど明瞭な交通量との因果関係は特定できなかった。4.おわりに 甲斐ほか(1995)や糸賀ほか(1998)では、「環八雲」は太平洋高気圧か移動性高気圧に覆われる南風成分の日に出現し、海風の収束とヒートアイランドによる上昇気流が成因であると報告している。「横横雲」の成因もこれらの報告と類似している点もあると推察されるが、これまでの「環八雲」の報告では東京都内のみの分析であり、本調査で「環八雲」は「横横雲」として神奈川県東部にも延びている可能性があることが分かった。中西・菅谷(2004)は、暖候期において相模湾・東京湾・鹿島灘からの海風が収束してつくられる東京湾周辺の雲列下で午後に降水がみられることを報告している。2005年7月25日には、「横横雲」出現後の17時に三浦半島から栃木県小山にかけてのレインバンドがみられた。今後は「横横雲」と降雨の関連についても検討してゆきたい。参考文献糸賀ほか 1998.環八雲が発生した日の気候学的特徴_-_1989_から_1993年8月の統計解析_-_.天気45:13‐22.甲斐ほか 1995.東京環状八号線道路付近の上空に発生する雲(環八雲)の事例解析_-_1989年8月21日の例_-_.天気42:11‐21.塚本1990.ヒートアイランド現象と雲_-_1989年夏の観測から_-_.気象34:8‐11.中西・菅谷2004.夏季の東京湾周辺に発生する雲列と局地気象および午後の降水との関係.天気52:729-73
著者
中村 洋介
出版者
公文国際学園中等部・高等部
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2007

丹沢山地の標高1,000m以上に分布するブナ林の衰退状況を把握し、その要因について地形学的、気候学的に明らかにすることを目的に調査した。調査は現地踏査、植生調査および1960年代から現在までの空中写真の判読である。調査対象地域はおもに丹沢山地の畔ケ丸-大室山-蛭ケ岳-丹沢山-塔ノ岳の主稜線部である。調査の結果、おもに西向き・南向き斜面でブナの枯損・枯死が多く、風の通り道となる鞍部でも顕著であった。この西向き・南向き斜面には主稜線部でササ草原が多いことが判読され、この周辺においてもブナの枯損・枯死が多くみられた。冬季の踏査では、ブナの枯損・枯死がまとまってみられる場所や西向き・南向きのササ草原で相対的に積雪量が少ない、または積雪がほとんどないことが明らかになった。空中写真により1960年代から現在までのブナ林周辺の植生変化を判読すると、かつてはブナ林であったと推測される落葉広葉樹林が西向き・南向き斜面で減少し、ササ草原が拡大していることが明らかとなった。丹沢山地玄倉川流域の主稜線部では、現在でも崩壊地が多く分布し、崩壊地の谷頭はササ草原になっていることが多かった。このような崩壊地の谷頭でブナの枯損・枯死がみられる。崩壊地の谷頭では風が集まるため相対的に強風になることが多かった。丹沢山地の風向分布は、冬季は季節風由来の西風が多く、ササ草原上の偏形樹も西風を示していた。夏季は南風が卓越していた。現在、主稜線部でブナが立ち枯れている南西向き斜面と健全なブナ林が広がる北東向き斜面において年間の気温をデータロガーによって観測中である。現地踏査では、ブナハバチによるブナの葉の食害が5月を中心に多く見られ、この食害が西向き・南向きの風衝地側で多いことが認められた。食害に遭っているブナでも風上側の北または東側のブナの葉は健全である。