著者
長 郁夫 先名 重樹
出版者
国立研究開発法人 産業技術総合研究所
雑誌
Synthesiology (ISSN:18826229)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.86-96, 2016 (Released:2016-06-08)
参考文献数
32
被引用文献数
1 10

著者らの目標は、地質・地盤に関連するさまざまな社会的ニーズに対応して、できる限り高密度・高分解能で定量的な地下S波速度構造の情報を提供することである。S波速度は地盤の揺れやすさや固さに直結する物性値なので、例えば、地震災害軽減のための地震ゾーニングの高精度化等に寄与できる。その一環として、半径0.6 mの極小アレイを用いて常時微動を15分間観測するだけで数mから数十mの深さのS波速度を探査する観測・解析システムを構築中である。開発のポイントは、アレイ観測・解析の徹底的な簡易化、客観化とそれによる自動化、品質管理である。構築中のシステムにより、今後取得されると期待される膨大な量の微動データに対応する。
著者
中澤 努 長 郁夫 坂田 健太郎 中里 裕臣 本郷 美佐緒 納谷 友規 野々垣 進 中山 俊雄
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.125, no.5, pp.367-385, 2019-05-15 (Released:2019-08-15)
参考文献数
68
被引用文献数
7 11

東京都世田谷区の武蔵野台地の下に分布する更新統世田谷層及び東京層の層序と地盤震動特性について検討した.世田谷層はMIS 6に開析された谷地形をMIS 5e前期~中期に埋積した地層であり,内湾成の軟らかい泥層を主体とする.一方,この地域の東京層は,MIS 5e中期?~後期の湾奥で形成された砂層などからなり,世田谷層とは対照的に広範囲に比較的平坦に分布する.常時微動観測により,段丘礫層を伴わず世田谷層が厚く分布する地域では,1Hzにピークをもつ地盤震動特性が示された.首都圏の地盤リスクを考えるとき,世田谷層をはじめとする台地の下のMIS 6開析谷埋積層の分布に注視する必要がある.
著者
長 郁夫 多田 卓 篠崎 祐三
出版者
社団法人 物理探査学会
雑誌
物理探査 (ISSN:09127984)
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.457-468, 2008 (Released:2014-05-09)
参考文献数
22
被引用文献数
14 14

上下動地震計を半径0.3mの円周上に配置した極小アレイで常時微動の波形データを取得し,我々が近年開発したCCA法という解析手法をこれに適用したところ,数10mあるいは100m以上の波長領域に至るまで,レーリー波の位相速度を良好な精度で同定することができた。この方法を,レーリー波位相速度を地下浅部の平均S波速度と関連づける紺野・片岡 (2000) の提案と組みわせれば,極小円形アレイを用いた簡便な微動測定により,表層地盤の特性を手早く評価することが可能になると期待される。以上の手順は,一人の観測者の手の届く程度のわずかなスペースさえあれば,微動観測により地下数10mまでの平均S波速度が推定できるという意味で,既存のアレイ探査法と比べ画期的な利点を有する。実際,茨城県つくば市内の3サイトで取得した微動アレイ記録に上記の新しい探査法を適用し,地下10, 20, 30mまでの平均S波速度を推定したところ,PS検層結果や地質構造と調和的な推定結果を得ることができた。
著者
長 郁夫
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.129, no.1, pp.371-378, 2023-07-08 (Released:2023-07-08)
参考文献数
36
被引用文献数
1

A microtremor array survey is a tool for modeling subsurface S-wave velocity structure using small ground oscillations, or microtremors, which can be recorded by multiple seismometers at the surface. This paper presents an overview of the method, including the principles, some warnings, and an example survey. In some parts, we focus on the application of the method to shallow geological surveys, to depths of several tens of meters. For further interested readers, we finally list the pieces of literature for review.
著者
長 郁夫 西開 地一志 柳沢 幸夫 長谷川 功 桑原 保人
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.6, no.4, pp.74-93, 2006 (Released:2010-08-12)
参考文献数
54
被引用文献数
2

近年、著者らの一部は3次元地質構造の簡便なモデル化のために地質構造形成史の知見からモデルを拘束する手法を開発した。本研究では同手法の位置付けを明らかにするとともに、同手法のこれまでの適用例よりも地質学的に複雑な地域 (新潟県中越地方南部地域) のモデル化を試みて手法の有効性を確認する。我々の位置付けでは、同手法は、既存の地質図を3 次元的かつ定量的に再構成するための簡便な手段である。モデルの単純化や地質学的知見の曖昧さを考慮すると、探査データの少ない地域における巨視的なモデル化に有効と期待する。新潟県中越地方南部地域のモデル化については、地質構造形成史で重要と考えられる情報と地質図データ及び比較的少量の探査データを併せて用いることにより大局的な3 次元地質構造をモデル化することができた。このモデルは、地震空白域であり将来の地震発生が危惧される同地域の基礎的な地盤モデルとして役立てられる。