著者
竹村 貴人 斉藤 奈美子 池野 順一 高橋 学
出版者
一般社団法人日本応用地質学会
雑誌
応用地質 (ISSN:02867737)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.160-164, 2009-08-10
参考文献数
12
被引用文献数
1

近年の急速な産業技術の発展に伴い,レンズやシリコンウェハなどの先端材料の精密加工の需要が非常に高まっている.そのような背景のもと,砥石は物作り産業をはじめとする産業技術の基盤を支える重要な道具の一つであることはいうまでもない.しかしながら,天然砥石の合砥と呼ばれる仕上げ砥は,未だに人工的に造られた人工砥石よりも優れた研削性能を持つものもあるとされており,現在でも日本刀や和包丁など刃物の研ぎ師が好んで使っている.ここでは,このように優れた研削性能を持つ天然砥石,とくに合砥に関する情報を人工砥石に取り入れることを目的として,合砥の内部構造の特徴を応用地質学的な視点を交えてまとめた.その結果,質の高いとされる合砥はサブミクロンオーダーの空隙が多く存在していることが明らかになった.
著者
池野 順一 斎藤 弘憲 斎藤 奈美子 竹村 貴人
出版者
社団法人 砥粒加工学会
雑誌
砥粒加工学会誌 (ISSN:09142703)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.174-179, 2009-03-01 (Released:2010-07-09)
参考文献数
7

研磨加工に替わって効率よくクリーンな鏡面創成が実現できれば有益である.対策の1つとして研削加工が挙げられるが,砥粒を微細化しただけの従来仕上げ用砥石では,研磨加工に及ばないのが現状である.そこで本研究では,研磨加工に匹敵する仕上げが可能となる研削砥石の開発を試みた.開発のヒントを天然砥石の仕上げ砥(合砥)に求め,その組成や構造を調した.その結果から合砥に基づいた人工砥石を提案し,積層構造を持つシリカ雲母砥石を開発した.この砥石を用いて3インチシリコンウエハの定圧研削を行った結果,1nmRa,7nmRzの鏡面創成が可能であることがわかった.
著者
斉藤 奈美子 池野 順一 竹村 貴人
出版者
公益社団法人 精密工学会
雑誌
精密工学会誌論文集 (ISSN:13488724)
巻号頁・発行日
vol.71, no.12, pp.1531-1535, 2005 (Released:2007-05-15)
参考文献数
10

本研究は, 硬脆材料の仕上げ加工において研磨加工と同等以上の創成面品位が得られる研削砥石の開発を目的とする. 開発のヒントを古来より人類が使用してきた天然砥石に求めることにした. 本報では天然砥石の基本的な特徴を構造解析・元素分析によって明らかにした. さらに天然砥石の構造を模した砥石を作製し, その有効性を研削実験により確認した.
著者
遠藤 邦彦 石綿 しげ子 堀 伸三郎 上杉 陽 杉中 佑輔 須貝 俊彦 鈴木 毅彦 中山 俊雄 大里 重人 野口 真利江 近藤 玲介 竹村 貴人
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

近年誰でも使うことができる地下データ(=ボーリング柱状図)が多数公開されるようになった.そのデータの密度は数年前とは比較にならない.またそれらを解析するツールも整っている.本研究は,東京23区内を中心に数万本余のボーリングデータを活用しつつ,その上に多くの地形・地質データなどアナログのデータを重ね合わせ,従来の点の情報を線,面に発展させることを目指す.地形の解析についても,国土地理院の5mのDEMを活用してQ-GISによって解析し,1mコンターのレベルで地形区分を見直した.こうした様々な情報を総合して,主に東京の台地部の中・後期更新世以降の地下構造を解明し,従来の諸知見(貝塚,1964;植木・酒井,2007ほか)を発展させることを目的とする.ボーリング資料の解析は,一定の深度を持つボーリング地点が集中する主要道路路線沿いに検討を進めた.環状路線:環八(笹目通り)・中杉通りと延長・環七・環六(山手通り)・環五(明治通り)・不忍通り、王子-中野通り,外苑西・東通り.放射状路線:桜田通り・目黒通り・首都高3号線(玉川通り)・青梅街道・新青梅街道・甲州街道(晴海通り)・川越街道・春日通り17号・小田急線-千代田線・世田谷通り・舎人ライナー・新幹線・ほかの合計30路線余について断面図を作成した.さらに,東京港地区(オールコア検討地区),中央区-港区沿岸低地,多摩川河口-羽田周辺,板橋区北部,赤羽台地~上野-本郷に伏在する化石谷などは短い多数の断面図を作成して,詳細な検討を加えた.以上の検討から見えてくるものは以下の通りである.遠藤(2017)は東京の台地部の従来の武蔵野面の範囲に,淀橋台と同様の残丘が存在するため、板橋区南部に大山面の存在を提唱した.その後の検討では大山面以外にも同様の残丘が和光市(加藤,1993)など各所に存在する.東京層は淀橋台や荏原台をはじめとし上記残丘のS面全域と,武蔵野扇状地面(M1,M2,M3面) の地下全域に存在し,基底部に東京礫層を持ちN値4~10程度の海成泥層が卓越する谷埋め状の下部層と,海成砂層を主体に泥質部を挟む上部層からなり,その中間付近に中間礫層を持つ.中間礫層は北部ほど発達がよい.さらに,埋積谷の周辺では広い波食面を形成し,貝殻混じりの砂礫層が波食面を覆うことが少なくない.基底礫と波食礫では年代を異にすると考えられるが,谷底か波食面上かに関わらず便宜的に基底部に存在する礫・砂礫層を東京礫層と呼ぶ.東京層はMIS6からMIS5.5に至るものと考えている.また,沿岸部の築地一帯~皇居・六本木周辺には東京層の1つ前のサイクルの築地層が高まりをなしており,東京層の谷はこれを挟んで、北側(神田~春日)と南側(品川~大井町)に分かれる.これらはほぼ現在の神田川の谷や目黒川の谷に沿う傾向がある.なお,大山面の地下に伏在する埋積谷は池袋付近から北に向かい,荒川低地付近では-20m以下となる.荏原台など,東京の南部では上総層群の泥岩が東京礫層の直下にみられることが多い.礫層は薄くなる傾向がある.東京最南部の東京層に相当する世田谷層(東京都,1999;村田ほか,2007)の谷は多摩川の低地に続く.東京層の泥層の分布はMIS5.5の時代にどこまで海進が達したかの参考になる.甲州街道沿いでは桜上水~八幡山あたりで武蔵野礫層によって切られて不明となる.青梅街道沿いでは荻窪のやや東方で武蔵野礫層によって切られているが,ともに旧汀線に近いものと予想できる.淀橋台相当面やその残丘の分布は,武蔵野扇状地の発達過程で重要な役割を果たしてきた.武蔵野扇状地の本体をなすM1a(小平)面(岡ほか,1971;植木・酒井,2007)は淀橋台と大山残丘群の間を抜けて東に向かった.目黒台(M1b面)は以前から指摘されている通り,淀橋台と荏原台の間を通り抜けた.現在の石神井川に沿ってM1a面の北側に分布するM2a(石神井)面は大山面と,赤塚~成増~和光付近の残丘群の間をぬけて東に流れた.M1a面の南側に分布するM2a(仙川)面は荏原台と田園調布台の間を通りぬけ流下した.北側の黒目川沿いのM2c, d面は,赤塚~成増~和光の残丘群を避けるように北向きに流れた.さらにM3面が多摩川下流部や赤羽台付近に形成された.M2,M3面は海水準の低下に応答したものと思われる.引用文献:貝塚(1964)東京の自然史.;植木・酒井(2007)青梅図幅;遠藤(2017)日本の沖積層:改訂版,冨山房インターナショナル;加藤(1993)関東の四紀18;東京都(1999)大深度地下地盤図;村田ほか(2007)地学雑誌,116;岡・ほか(1971)地質ニュース,206
著者
近藤 玲介 竹村 貴人 宮入 陽介 坂本 竜彦
出版者
皇學館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

日本列島のリアス海岸周辺における海成段丘は,離水年代が不明な場合が多い.そこで本研究では,リアス海岸などの海成段丘を対象にpIRIR年代測定法を適用し,中期更新世以降に形成された海成段丘の高分解能な地形面編年をおこなうことを目的とする.本研究では,リアス海岸の周辺の海成段丘が発達する複数地域を研究対象地域とした.野外調査と年代測定の結果,調査対象地域においてはMIS 9からMIS 5aまでのpIRIR年代値が得られ,中期更新世以降の海成段丘の離水年代が明らかとなった.
著者
竹村 貴人 斉藤 奈美子 池野 順一 高橋 学
出版者
一般社団法人 日本応用地質学会
雑誌
応用地質 (ISSN:02867737)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.160-164, 2009 (Released:2013-03-31)
参考文献数
12
被引用文献数
1

近年の急速な産業技術の発展に伴い, レンズやシリコンウェハなどの先端材料の精密加工の需要が非常に高まっている. そのような背景のもと, 砥石は物作り産業をはじめとする産業技術の基盤を支える重要な道具の一つであることはいうまでもない. しかしながら, 天然砥石の合砥と呼ばれる仕上げ砥は, 未だに人工的に造られた人工砥石よりも優れた研削性能を持つものもあるとされており, 現在でも日本刀や和包丁など刃物の研ぎ師が好んで使っている. ここでは, このように優れた研削性能を持つ天然砥石, とくに合砥に関する情報を人工砥石に取り入れることを目的として, 合砥の内部構造の特徴を応用地質学的な視点を交えてまとめた. その結果, 質の高いとされる合砥はサブミクロンオーダーの空隙が多く存在していることが明らかになった.
著者
船引 彩子 納谷 友規 斎藤 広隆 竹村 貴人
出版者
日本堆積学会
雑誌
堆積学研究 (ISSN:1342310X)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.137-152, 2014-12-26 (Released:2015-02-24)
参考文献数
32
被引用文献数
3

関東平野西部には武蔵野台地に代表される中期更新世後期以降の段丘地形が広がり,段丘堆積物の下位に鮮新世末から中期更新世に堆積した海成層を主体とする上総層群が分布することで知られている.本研究は武蔵野台地のうち,立川面に位置する東京都府中市おいて掘削された,CRE-TAT-1及びCRE-TAT-2コアについて堆積相の観察を行い,含水比,懸濁液のEC·pH,珪藻分析,蛍光X線分析による元素の含有率などの測定を行い,堆積環境を推定した.本研究では,対象地において実験用の熱交換井50m分を掘削する際に同深度のボーリングコア試料を採取し,堆積相の詳細な記載を行い,堆積物の各種物性値を計測し,堆積環境の復元を行った.その結果,対象地の地下50mに分布する地層は複数の堆積サイクルからなることが明らかになった.両コアは主に3枚の礫層とそれに挟まれた砂層および泥層からなり,下位よりユニット1〜7に分けられる.このうちユニット2·4·6は砂礫層からなり,河川堆積物を形成する.ユニット1は主に砂質の河川チャネル堆積物から構成される.ユニット3は主に砂〜シルト層からなり,淡水生の珪藻や生痕が含まれ,氾濫原〜チャネルのような環境を示す.ユニット5は下部で陸域の環境を示すが,中部は青灰色のシルト層で海生の珪藻を産出する.硫黄の含有量,ECともに高い値を示し,海成層と考えられる.このシルト層は上方に向かって砂質のチャネル·氾濫原堆積物へと漸移的に変化し,浅海化の傾向が見られる.各ユニットは大まかにはユニット1〜4が陸成,ユニット5が海成〜陸成,ユニット6·7が陸成の堆積物からなる.ユニット6は立川面を構成する段丘礫層,ユニット7が立川ローム層,またユニット1〜5は上総層群の舎人層である可能性が高い.
著者
藁谷 哲也 江口 誠一 竹村 貴人 羽田 麻美 石澤 良明 三輪 悟 宋 苑瑞 梶山 貴弘 比企 祐介 前田 拓志 林 実花 神戸 音々 佐藤 万理映 LOA Mao BORAVY Norng
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では,アンコール遺跡からアンコール・ワット,バンテアイ・クデイ,およびタ・プローム寺院を選定し,寺院を構成する砂岩材のクリープ変形と風化環境を有限要素解析や高密度の熱環境分析をもとに明らかにした。その結果,砂岩柱の基部に見られる凹みの形成には,従来から指摘されていた風化プロセスに加え,構造物の自重による応力集中が関与していることが判明した。また,寺院は日射による蓄熱のため高温化,乾燥化が進み,砂岩材に対する風化インパクトの増大が生じていることが推察された。アンコール遺跡保全のためには,日射を和らげる緑地の緩衝効果を見直すことが必要である。