著者
迫田 久美子 小西 円 佐々木 藍子 須賀 和香子 細井 陽子 Kumiko SAKODA Madoka KONISHI Aiko SASAKI Wakako SUGA Yoko HOSOI
出版者
国立国語研究所
雑誌
国語研プロジェクトレビュー = NINJAL project review (ISSN:21850100)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.93-110, 2016-06

本稿は,共同研究プロジェクト「多文化共生社会における日本語教育研究」が進めている多言語母語の日本語学習者の横断コーパス(通称I-JAS)について概説した。前半では,I-JAS構築の経緯と概要,調査の内容と特徴をまとめ,後半では,I-JASを利用する際に重要となる書き起こしのルールやタグ付けの方針などについて述べた。12の異なる言語を母語とする約1000人の日本語学習者のコーパスは,日本語の第二言語習得研究や対照言語学,社会言語学的な言語研究のみならず,日本語教育の現場でも利用が期待される。This paper provides a description of I-JAS (International Corpus of Japanese As a Second Language), which contains cross-sectional research data from Japanese language learners with different mother tongues. This corpus is a part of a collaborative research project entitled 'Study on Teaching and Learning Japanese as a Second Language in a Multicultural Society.'The first half reports on the development of I-JAS and its salient features. The latter half describes the transcription rules and the basic principles of tagging, both of which are important for searching and extracting data from the corpus.I-JAS includes data from approximately 1000 learners with 12 different native languages, and it will be a rich resource, not only for linguistic research in areas such as second language acquisition, contrastive analysis and sociolinguistics, but also for teaching Japanese as a second language.
著者
池田 稜子 細井 陽子 原 敏夫
出版者
日本食生活学会
雑誌
日本食生活学会誌 (ISSN:13469770)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.50-56, 2000-06-30 (Released:2011-01-31)
参考文献数
17

納豆糸引き度を低下させる要因物質を探るため, 大根を試料として検索し, 酵素的諸性質について検討した結果, 次の知見を得た.(1) 大西らの方法による納豆糸引き度低下活性と, より簡便な方法による納豆粘着度低下活性の間に, 正の相関関係が成立した.(2) 大根搾汁上清から納豆糸引き度低下要因物質を検出した.活性は加熱処理により失活した.(3) 糸引き度低下活性 (ΔL), 粘着度低下活性 (ΔW), 粘度低下活性 (ΔT) を測定した結果, いずれも大根の青首部分より先端部分に強い活性が認められ, その経時的な変化から納豆糸引き度低下要因物質は酵素である可能性が示唆された.(4) 大根搾汁上清の硫安塩析により調製した粗酵素液について, 基質γ-PGAの粘度低下活性を測定した結果, 納豆γ-PGA分解粗酵素の至適pHは5.5, 至適温度は37℃, pH安定性は, pH6.5~8.5, 温度安定性は, 35℃で約50%, 50℃ で大部分が失活した.(5) 市販プロテアーゼ (数種) によるγ-PGA溶液の粘度低下はほとんど認められなかった.本研究の概要は, 平成10年度日本食品科学工学会第45会大会において発表したことを付記します.
著者
迫田 久美子 細井 陽子
出版者
計量国語学会
雑誌
計量国語学 (ISSN:04534611)
巻号頁・発行日
vol.32, no.7, pp.403-418, 2020-12-20 (Released:2021-12-20)
参考文献数
25

本研究の目的は,日本語学習者コーパスI-JASのデータに基づき,学習環境の違いが言語使用にどのような影響を与えるのかを「正確さ」と「複雑さ」の観点から分析を行うことである.具体的には,3つの異なった学習環境の日本語学習者のストーリーテリングの言語使用をTユニットや節数等によって比較分析する.第1群は,自国の教育機関で日本語を学ぶJFL群,第2群は,来日後,教室環境で学ぶJSL-C群,第3群は,日本に在住し,教育機関には通わず自然習得によって日本語を学ぶJSL-N群である.3群のデータを統計分析した結果,JSL-N群は,JFL群やJSL-C群に比べて,正確さと複雑さの両面において優れていること, JSL-C群はJFL群とあまり差がないことがわかった.しかし,JSL-C群はJSL-N群と同様,JFL群に比べて並列節を用いて長い文を生成していることがわかり,複雑さの発達の前段階であろうと推測された.