著者
植木 雅昭 深野 淳 吉川 太朗 西河 俊伸 細見 心一 水内 保宏 辻田 忠弘
雑誌
情報処理学会研究報告人文科学とコンピュータ(CH)
巻号頁・発行日
vol.2004, no.7(2003-CH-061), pp.25-32, 2004-01-23

本論文は絵画における作図法表現によって,人間の心理がどのように変わるかを心理物理的に実験したものである.絵画として17世紀オランダの画家フェルメールの“牛乳を注ぐ女”を用いた.この絵画はフェルメールが,あえて透視図法(遠近法)の正確さを捨て,ひたすら目に自然な構成を優先させたと言われている[3].実際に透視図法を用いなかったことで,どのような効果が得られたのかについて,比較分析実験によって評価し,感性の「評価性」,「活動性」,「情緒性」における3次元性分析を行った.その結果,実際の絵画においては「評価性」,「活動性」に,透視図法を用いた絵画においては「情緒性」に高い効果が得られた.
著者
細見 心一 長谷川 美和 辻田 忠弘
出版者
甲南大学
雑誌
甲南大学紀要. 理工学編 (ISSN:13480383)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.59-78, 2005-07-31
被引用文献数
1

本論文は国宝源氏物語絵巻「柏木(二)」の制作当時から現在に至る約900年の間に変化したと思われる絵画の魅力について、現代人の感性(年齢は20代に限定)を使い、自然科学的に追求することを目的とし、SD(Semantic Differential)法による感性的な分析と色彩の観点からの考察を行ったものである。SD法の実験ではAdobe Systems社のPhotoshop7.0.1による画像編集を行い、9枚の実験絵面を用意し、モニターを使い印象評価を行った。用意した実験絵画は原本1枚・修復絵画1枚・復元絵画1枚・モーフイングによる合成絵画6枚である。また、日本人の心の中にある美についての評価軸を決定するために、源氏物語絵巻以外の国宝絵画20枚によるSD法実験を行った。さらに、和紙やろうそくの効果について調べるため、原本・修復絵画・復元絵画を和紙に印刷しSD法実験を行った。次に、色彩の観点からの考察では国宝源氏物語絵巻「柏木(二)」が約900年の間にどのように変化したかを調べるため、復元絵画と原本について色差・配色・CMYKの分析と考察を行った。SD法の分析を行った結果、「柏木(二)」の復元絵画では極彩色で雅やかな美を、原本ではわび・さび・幽玄のある美を被験者が感じていることがわかった。さらに、この絵画についている傷・ムラのある変色・絵具の剥落がこの絵画を見る者の想像力をかきたて、わび・さび・幽玄の印象をさらに出していることを定量的に分析した。また、色彩分析の結果から、「柏木(二)」は時が経つごとに、絵の具が色あせることなく、より明度の低い暗い色に変わり、そして幽かに残る制作当時に近い色と変色が進んだ色が混在することにより、元の極彩色で雅やかだった状態や時の流れを想像させるのではないかと考えられる。つまり、時の経過とともに失われていく極彩色で雅やかだった印象やその歴史を想像させる傷、ムラのある変色・絵具の剥落の効果プラス、絵の具が色あせることなく、より明度の低い暗い色で青の無いまとまった配色になるという色彩の変化により、この絵画を見るものを静かに引き込んでいくようなわび・さび・幽玄のある美へと「柏木(二)」が変化したことを定量的に分析することができた。
著者
植木 雅昭 深野 淳 西河 俊伸 細見 心一 水内 保宏 辻田 忠弘
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告人文科学とコンピュータ(CH) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2003, no.107, pp.49-56, 2003-10-24
被引用文献数
4

本論文は絵画における色の効果によって,人間の心理がどのように変わるかを心理物理的に実験したものである.絵画として17世紀オランダの画家フェルメールの"真珠の耳飾りの少女"と"牛乳を注ぐ女"を用いた.フェルメールの好きな色と言われている青色と黄色の効果の対立性を考え,真珠の耳飾りの少女のターバンの青色と牛乳を注ぐ女の胴着の黄色について,SD(Semantic Differential)法[1]の多次元分析を用いて,色の対立的な性質として感性の三次元分析を行った.その結果,「活動的」に関して特長的な結果が得られた.In this paper, it is physically evaluated how human being's psychology changes by effect of the color of blue turban in "HEAD OF A GIRL WITH A PEARL EARRING" and yellow clothes in "THE MILK MAID" of Vermeer who is a famous realistic painter in the 17th century. Through the conflict of effect of blue and yellow that were Vermeer's favorite color, I analyzed the difference of sensibility in between blue terban in "HEAD GIRL WITH PEARL EARRING" and yellow clothes in "THE MILK MAID" on the three- dimensions by using the multi-dimensional analysis of the SD method as the conflicting characteristic of color. As a result, a characteristic outcome about "activeness" was emerged by the SD method.