著者
深野 淳 水内 保宏 辻田 忠弘
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告人文科学とコンピュータ(CH) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2004, no.78, pp.47-54, 2004-07-30
参考文献数
9
被引用文献数
1

NHK「新日曜美術館」が17世紀オランダの画家フェルメ?ル作「絵画芸術」の来日を記念して、そのモチ?フを再現する企画をした。このモチ?フに用いられている透視図法(遠近法)や神秘的な雰囲気を作り出している要因、部屋や人物等のサイズの推定に関しての調査が我々に依頼された。我々は絵画を科学的に分析することで、透視図法や当時の資料を元にしたモチ?フのサイズを推定し、またこの絵画の神秘的な雰囲気を心理的に分析した。この番組は2004年6月6日に放送されている。「絵画芸術」は、フェルメ?ル作品の中でも代表作の一つに挙げられている。また、フェルメ?ルは幾何学的透視図法やカメラオブスキャナなどの当時としては最新の絵画技法を用いた画家であり、構図に関しても緻密な計算の上に決定されている。「絵画芸術」を透視図法の観点から分析し、消失点・遠隔点を割り出し、17世紀に壁に使われていたタイル(一辺12.8cm)から床のタイルの長さを27.1cmと推定し、これらに基づきモチ?フに用いられている部屋や人物の大きさ、位置関係を割り出した。さらに、他のフェルメ?ル絵画や当時使われていた机、椅子等の資料を元に、「絵画芸術」で描かれている部屋の再現を行った。Cerebrating the arrival of "The Art of Painting" painted by Vermeer, Japanese TV broadcasting station NHK attenmpted to reproduce its motif in their TV program named "Shin-Nitiyo-Bijutsukan". In order to make an accurate guess about the size of the people and the interior, NHK requested us to do a research. This program was on the air on June 6th of 2004. "The Art of Painting" is one of the masterpieces of the work of Vermeer. Vermeer has left splendid pictures representing the shading of light as well as Rembrandt by using such scientific techniques as the camera of a scanner, perspective, and so on.
著者
植木 雅昭 深野 淳 吉川 太朗 西河 俊伸 細見 心一 水内 保宏 辻田 忠弘
雑誌
情報処理学会研究報告人文科学とコンピュータ(CH)
巻号頁・発行日
vol.2004, no.7(2003-CH-061), pp.25-32, 2004-01-23

本論文は絵画における作図法表現によって,人間の心理がどのように変わるかを心理物理的に実験したものである.絵画として17世紀オランダの画家フェルメールの“牛乳を注ぐ女”を用いた.この絵画はフェルメールが,あえて透視図法(遠近法)の正確さを捨て,ひたすら目に自然な構成を優先させたと言われている[3].実際に透視図法を用いなかったことで,どのような効果が得られたのかについて,比較分析実験によって評価し,感性の「評価性」,「活動性」,「情緒性」における3次元性分析を行った.その結果,実際の絵画においては「評価性」,「活動性」に,透視図法を用いた絵画においては「情緒性」に高い効果が得られた.
著者
細見 心一 長谷川 美和 辻田 忠弘
出版者
甲南大学
雑誌
甲南大学紀要. 理工学編 (ISSN:13480383)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.59-78, 2005-07-31
被引用文献数
1

本論文は国宝源氏物語絵巻「柏木(二)」の制作当時から現在に至る約900年の間に変化したと思われる絵画の魅力について、現代人の感性(年齢は20代に限定)を使い、自然科学的に追求することを目的とし、SD(Semantic Differential)法による感性的な分析と色彩の観点からの考察を行ったものである。SD法の実験ではAdobe Systems社のPhotoshop7.0.1による画像編集を行い、9枚の実験絵面を用意し、モニターを使い印象評価を行った。用意した実験絵画は原本1枚・修復絵画1枚・復元絵画1枚・モーフイングによる合成絵画6枚である。また、日本人の心の中にある美についての評価軸を決定するために、源氏物語絵巻以外の国宝絵画20枚によるSD法実験を行った。さらに、和紙やろうそくの効果について調べるため、原本・修復絵画・復元絵画を和紙に印刷しSD法実験を行った。次に、色彩の観点からの考察では国宝源氏物語絵巻「柏木(二)」が約900年の間にどのように変化したかを調べるため、復元絵画と原本について色差・配色・CMYKの分析と考察を行った。SD法の分析を行った結果、「柏木(二)」の復元絵画では極彩色で雅やかな美を、原本ではわび・さび・幽玄のある美を被験者が感じていることがわかった。さらに、この絵画についている傷・ムラのある変色・絵具の剥落がこの絵画を見る者の想像力をかきたて、わび・さび・幽玄の印象をさらに出していることを定量的に分析した。また、色彩分析の結果から、「柏木(二)」は時が経つごとに、絵の具が色あせることなく、より明度の低い暗い色に変わり、そして幽かに残る制作当時に近い色と変色が進んだ色が混在することにより、元の極彩色で雅やかだった状態や時の流れを想像させるのではないかと考えられる。つまり、時の経過とともに失われていく極彩色で雅やかだった印象やその歴史を想像させる傷、ムラのある変色・絵具の剥落の効果プラス、絵の具が色あせることなく、より明度の低い暗い色で青の無いまとまった配色になるという色彩の変化により、この絵画を見るものを静かに引き込んでいくようなわび・さび・幽玄のある美へと「柏木(二)」が変化したことを定量的に分析することができた。
著者
植木 雅昭 深野 淳 西河 俊伸 細見 心一 水内 保宏 辻田 忠弘
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告人文科学とコンピュータ(CH) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2003, no.107, pp.49-56, 2003-10-24
被引用文献数
4

本論文は絵画における色の効果によって,人間の心理がどのように変わるかを心理物理的に実験したものである.絵画として17世紀オランダの画家フェルメールの"真珠の耳飾りの少女"と"牛乳を注ぐ女"を用いた.フェルメールの好きな色と言われている青色と黄色の効果の対立性を考え,真珠の耳飾りの少女のターバンの青色と牛乳を注ぐ女の胴着の黄色について,SD(Semantic Differential)法[1]の多次元分析を用いて,色の対立的な性質として感性の三次元分析を行った.その結果,「活動的」に関して特長的な結果が得られた.In this paper, it is physically evaluated how human being's psychology changes by effect of the color of blue turban in "HEAD OF A GIRL WITH A PEARL EARRING" and yellow clothes in "THE MILK MAID" of Vermeer who is a famous realistic painter in the 17th century. Through the conflict of effect of blue and yellow that were Vermeer's favorite color, I analyzed the difference of sensibility in between blue terban in "HEAD GIRL WITH PEARL EARRING" and yellow clothes in "THE MILK MAID" on the three- dimensions by using the multi-dimensional analysis of the SD method as the conflicting characteristic of color. As a result, a characteristic outcome about "activeness" was emerged by the SD method.
著者
土井 康孝 辻田 美和 辻田 忠弘 Yasutaka Doi Miwa Tsujita Tadahiro Tsujita
出版者
甲南大学
雑誌
甲南大学紀要. 理工学編 = Memoirs of Konan University. Science and engineering series (ISSN:13480383)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.1-26, 2003-07-31

東洲斎写楽の現存する浮世絵版画141点のうち、第一期作28点は写楽の作品で最も人気があり、それらすべてが役者絵である。役者絵なので女性の絵もすべて男性が演じているものである。写楽は女性の絵画を1点も残していないとされている。しかしその女性絵画は男性が演じているにもかかわらず女性の特徴を持つ。そこで写楽の浮世絵版画の第一期作の役者絵を男女に分けて目に焦点を当てて分析をおこなった。ある男役の順に男女12種類の目を当てはめたものを作り、被験者10人に対して男性の目か女性の目かという判断を行った。その際、女性の目を男性の顔に当てはめても明らかに違和感があるものはなかったが、女性の目を男性の目と区別できる人が多かった。そこで判別分析を用いて目の形状から男女の目の判別を行った。その結果、F_x=4.713Z_1-2.804Z_2+2.274Z_3-2.788という線形判別関数で男女の目を判別することができた。そして男女の目の判別において目の交差角が最も影響を与えることがわかった。次に上で求めた線形判別関数に実際の数値を代入し結果を求めた。その結果、男性の目でありながら女性の目であると判別されたものは1点だけであった。この目は女性の目であると判断されることが多かった目であった。すなわち、すべて男性でありながら男役と女役ではそれぞれの目を用いて男女の区別を行い、役者の特徴を出していることがわかった。目の交差角の分布をもとに6グループに分類し各グループから1つずつ目を選び男女の順に当てはめたものを作った。それらを画面に一度に表示し、30ペア60種類の感情表現を表示し最も当てはまると思われる絵画を被験者に選んでもらうことから男女の目をいろいろと変えることによって、目だけを変えた役者からどのようなイメージをうけるかという実験結果を得た。その結果、男女どちらの場合であっても男役の目を当てはめたほうが多くのプラスイメージの感情表現を得ることができ、女役の目を当てはめたときにはマイナスイメージの感情表現を得た。また、ディスプレイ上に絵画を一枚ずつ表示し対になる感情表現を与えSD (Semantic Differential)法を用いて分析を行っても、女性の目を当てはめたときのほうがマイナスイメージを与えるということがわかった。
著者
土井 康孝 辻田 美和 辻田 忠弘
出版者
甲南大学
雑誌
甲南大学紀要. 理工学編 (ISSN:13480383)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.1-26, 2003-07-31
被引用文献数
3

東洲斎写楽の現存する浮世絵版画141点のうち、第一期作28点は写楽の作品で最も人気があり、それらすべてが役者絵である。役者絵なので女性の絵もすべて男性が演じているものである。写楽は女性の絵画を1点も残していないとされている。しかしその女性絵画は男性が演じているにもかかわらず女性の特徴を持つ。そこで写楽の浮世絵版画の第一期作の役者絵を男女に分けて目に焦点を当てて分析をおこなった。ある男役の順に男女12種類の目を当てはめたものを作り、被験者10人に対して男性の目か女性の目かという判断を行った。その際、女性の目を男性の顔に当てはめても明らかに違和感があるものはなかったが、女性の目を男性の目と区別できる人が多かった。そこで判別分析を用いて目の形状から男女の目の判別を行った。その結果、F_x=4.713Z_1-2.804Z_2+2.274Z_3-2.788という線形判別関数で男女の目を判別することができた。そして男女の目の判別において目の交差角が最も影響を与えることがわかった。次に上で求めた線形判別関数に実際の数値を代入し結果を求めた。その結果、男性の目でありながら女性の目であると判別されたものは1点だけであった。この目は女性の目であると判断されることが多かった目であった。すなわち、すべて男性でありながら男役と女役ではそれぞれの目を用いて男女の区別を行い、役者の特徴を出していることがわかった。目の交差角の分布をもとに6グループに分類し各グループから1つずつ目を選び男女の順に当てはめたものを作った。それらを画面に一度に表示し、30ペア60種類の感情表現を表示し最も当てはまると思われる絵画を被験者に選んでもらうことから男女の目をいろいろと変えることによって、目だけを変えた役者からどのようなイメージをうけるかという実験結果を得た。その結果、男女どちらの場合であっても男役の目を当てはめたほうが多くのプラスイメージの感情表現を得ることができ、女役の目を当てはめたときにはマイナスイメージの感情表現を得た。また、ディスプレイ上に絵画を一枚ずつ表示し対になる感情表現を与えSD (Semantic Differential)法を用いて分析を行っても、女性の目を当てはめたときのほうがマイナスイメージを与えるということがわかった。
著者
坂毛 宏彰 深野 淳 板倉誠也 長谷川美和 辻田忠弘
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告人文科学とコンピュータ(CH) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2005, no.105, pp.1-8, 2005-10-28

本論文は、謎の浮世絵師、東洲斎写楽が一体誰であるかを解明する一つの手法として、写楽の役者絵で特徴的な目に着目し、写楽と葛飾北斎、歌川豊国、喜多川歌麿の特徴をモレリアン・メソッド(顔の場合は目や鼻、口の様に画面を細かく解剖し、その細部の形や構図、技法、色使いなどから絵画を分析する方法)による判別分析を行った。また、SD法(Semantic Differential Method)を用いた心理的な分析を行い、結果を比較することで写楽の浮世絵における目の特徴の分析する事によって写楽のなぞについての研究を行った。This research focused on the characteristic eyes of Sharaku's pictures of actors as one technique for clarifying just who was this mysterious ukiyoe master Sharaku Toshusai. Eye features in works of Katsushika Hokusai, Toyokumi Utagawa, and Utamaro Kitagawa were analyzed by distinction analysis using the Morerian method, and the SD method. We researched Sharaku's pictures based on these results.