著者
保里 和樹 細部 博史
雑誌
研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI) (ISSN:21888760)
巻号頁・発行日
vol.2017-HCI-172, no.26, pp.1-7, 2017-02-27

パズルには多くの種類があり,昔から多くの人に楽しまれている.特に近年はスマートフォンやタブレット上でパズルを楽しむ人が増えている.しかし,既存のパズルは多様なルールがあるにもかかわらず,限られた形状をしていることが多い.パズルの形状を大きく変化させる研究として,杉山らは,既存のパズルは抽象化を経て他のメディアに変換できるとする,抽象化とメディア変換と呼ばれる体系的アプローチを提案した.本研究では,抽象化とメディア変換を杉山らの研究とは異なる種類のパズルに適用することで,より幅広い形状を可能とした新しいパズルを提案する.具体的には,多様なパズルが二次元の格子状であることに着目し,各マスをノード,となりあうマスの関係をエッジとみることで,格子状のパズルをネットワーク,すなわち,グラフとして一般化して表現する.格子状のパズルとして,本研究では特に加算パズルを扱う.さらに,グラフ可視化技術と複数の列の表現方法を用いて,提案するパズルの可視化を行う.グラフ可視化技術として,Kamada-Kawai 法を改良したものを用い,列の表現方法として,列ごとの色分けと,折曲点の生成の 2 つの方法を用いる.
著者
細部 博史
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.19, no.6, pp.437-444, 2002-11-26 (Released:2012-01-10)

制約は,多様な問題解決のための有力な手段であり,ユーザインタフェース(UI)を含む様々な分野で広く利用されている.UI分野における制約の最大の用途はグラフィカルレイアウトであり,制約によってレイアウトの維持が自動化されて容易になるという利点がある.制約によるUIの構築を実現するための基盤システムとして,これまでに様々な制約解消系が研究開発されている.本研究では,優先度を伴った線形等式および不等式制約からなる系(制約階層)を処理するための制約解消系を構築する.そして実験により,この制約解消系が,制約が1,000個を超える状況でもUIを実現するのに十分な効率を持っていることを示す.
著者
上田 和紀 細部 博史 石井 大輔
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.1_306-1_311, 2011-01-25 (Released:2011-02-18)

時間の経過に伴って状態が連続変化したり,状態や方程式系自体が離散変化したりする系をハイブリッドシステムと呼ぶ.我々は,不確実値の扱い,シミュレーションと検証の統合などの観点から,制約概念に基づくハイブリッドシステムモデリング言語HydLaの設計と実装を進めてきた.HydLaは,制約階層概念の採用によって制約条件を過不足なく与えることを容易にした点を特徴とするが,種々の言語機能の相互作用のためにその意味論の定式化は自明ではない.本論文では,HydLaの宣言的意味論を定式化して考察を加えるとともに,宣言的意味論から導かれる性質や帰結を具体例を用いつつ論じる.
著者
細部博史
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.42, no.6, pp.1424-1434, 2001-06-15
被引用文献数
1

ユーザインタフェース(UI)分野において,制約は古くから重要な役割を演じてきた.UI分野における制約の主要な用途は,グラフィカルオブジェクト群の幾何的な配置であり,これによってUIの構築が容易化される.しかしながら,現在,制約の技術を導入したシステムやアプリケーションは少ないといわざるをえない.主要な障害の1つとして,連立された非線形な幾何制約を解くことができる,信頼性と利便性の十分に高い制約解消系がほとんど存在しない点があげられる.このような問題に対応するために,本論文では,グラフ配置など,表現力の高い幾何制約を扱う新しい制約解消の枠組みを提案する.本枠組みは,制約解消法とその実装方式の2つの部分からなる.制約解消法は,数値的な最適化手法と遺伝的アルゴリズムを組み合わせたものである.一方,実装方式は,オブジェクト指向プログラミングにより,制約解消系においてモジュール機構を実現する点を特徴としており,これによって新たな種類の制約を導入したり,数値最適化手法を交換したりすることが可能である.本枠組みはすでにChorus制約解消系として実装されており,本論文ではその性能に関する実験結果も与える.Constraints have been playing an important role in the user interface field since its infancy.The primary usage of constraints in this field is to obtain geometric layouts of graphical objects,which facilitates the construction of user interfaces.However, most researchers and developers do not incorporate constraint technology into their systems and applications.A major obstacle is that there are few sufficiently robust and usable constraint solvers capable of solving simultaneous nonlinear geometric constraints.To tackle this problem,this paper proposes a novel constraint solving framework,which handles expressive geometric constraints, e.g., for graph layout.It consists of the methods of constraint satisfaction and its implementation.The constraint satisfaction method is the combination of a numerical optimization technique with a genetic algorithm.The characteristic of the implementation method is to realize the module mechanism of resulting constraint solvers by object-oriented programming,which allows users to introduce new kinds of constraints and also to replace its numerical technique with another.This framework has been implemented as the Chorus constraint solver.This paper also provides the results of the experiments on its performance.