- 著者
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田浦 健次朗
米澤 明憲
- 雑誌
- 情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
- 巻号頁・発行日
- vol.41, no.5, pp.1490-1499, 2000-05-15
専有された,分散記憶並列計算機において,局所ごみ集めのスケジュール戦略が性能に与える影響について考察し,実験結果を報告する.分散記憶並列計算機におけるごみ集め(GC)方式は一般に,局所GCと大域GCを組み合わせて用いる.各プロセッサはメモリのある一部の領域を,他のプロセッサの協調なしに回収するために局所GCを行い,複数のプロセッサにまたがるごみを回収するのに大域GC(参照カウントや大域マークスイープ)を行う.局所GCのそもそもの動機は,特に大規模な並列計算機では高価である,プロセッサ間の協調や通信をできるだけ避けることであるため,それらは一般に各プロセッサによって独立にスケジュールされることが多い(独立スケジュール方式).しかし,我々の実験結果はそのようなスケジュール方式は,通信遅延に敏感なアプリケーションの性能を大きく低下させることを示している.この原因は,そのようなスケジュールによって,GC中のプロセッサが,入ってくるメッセージに対して反応が遅くなることにある.一方で,全プロセッサが同時にごみ集めを行う,同期スケジュール方式は,それによって余分な同期やごみ集めのための仕事が生じるにもかかわらず,はるかに頑強な性能特性を示す.さらに,アプリケーションの通信挙動を観測することで,実行時に望ましいスケジューリング戦略を選ぶことが可能であることを示す.