著者
青山 善充 紺谷 浩司 池田 辰夫 石井 紫郎 河野 正憲 瀬川 信久 加藤 雅信 松下 淳一 植田 信廣 三谷 忠之
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1994

本科研費による共同研究においては.10国立大学法学部(北大・東北大・東大・名大・阪大・香川大・岡山大・広島大・九大・熊本大)が.最高裁の方針により廃棄の運命にあった明治初年から昭和18年確定分までの民事判決原本を.各地の裁判所から暫定的に移管をうけたのを契機として.この貴重な史科群の保存利用に関し、多面的な検討を行った.具体的には.本研究会に4分科会を設け(外国法制研究、恒久計画測定.保存対策.プライヴァシ-.データベース).それぞれが核となって検討を重ねた結果、以下の知見を得た:1.民事判決原本に関する外国法制調査ヨーロッパ諸国(ドイツ・フランス・イギリス・イタリア・北欧).アメリカ合衆国.韓国.台湾.パナマといった諸国において.民事判決原本が如何なる機関において.如何なる期間保存され.どのように利用に供されているかを.現地調査やヒヤリングをも含めて調査した.この結果、国立の公文書館において.行政・立法の公文書とあわせて現用をおえた司法府の公文書を保存し.利用に供するのが一般的であること.そのシステムは.日本に比して発達した公文書館制度と表裏をなしていることが明確になった.2.日本における民事判決原本恒久保存施設の模索上記1に得た比較法的知見を踏まえて9民事判決原本の恒久的保存利用施設として如何なる機関が適切であるかを検討したところ.大学での保管はあくまで暫定的でイレギュラーな緊急〓措置であり.国立公文書館・国立国会図書館といった既存施設にもそれぞれ難点があるので.やはり.(名称はともあれ)司法資料を収容する国立の文書館を新設するのが筋であるという結論に達した.なお.このことと.民事判決原本を地域的に一箇所に集中するか地方分散とするかは.必ずしも必然的に結びつくものでないということが了解された.3.大学保管中の保存対策2の恒久保存施設に民事判決原本を移管するまで.3乃至4年間をめどに大学が保管の責務を負うのであるが.その間の保存対策について.史料保存学専門家の意見をきいて.協議し.空調・防虫対策・保安措置等について.各大学に助言を行うことができた.4.大学保管中の利用ガイドライン策定大学保管中に.大学は.可能な限り民事判決原本を学術利用に供することが移管に関する最高裁との協定からも望ましいが.これには.史料の性質上.プライヴァシ-保護を中心とする微妙な配慮を必要とする.これらの点を考慮しつつ.本研究会は.学術利用と事件当事者による閲覧との二類型を念頭においた詳細な利用ガイドラインとそれに応じた利用申請書式を策定し.それを.各保管大学で使用することとした.5.民事判決原本のデータベース化これまで民事判決原本へのアクセスを困難にしてきた最大の理由は.その検索の困難性にあった.この点は.民事判決原本に含まれるデータをデータベース化することによって大きく改善される.と同時に.原本自体を画像入力することによって.貴重な原本の損耗を防止できる.この見地から.フィージブルな民事判決原本データベースを模索した結果.明治23年までの判決原本を全文画像入力し.これに.最小限の項目データを付して検索の便を図ることが最善であるとの結論に達し.国際日本文化研究センターがこの作業を引き受けることとなった.
著者
上田 和夫 紺谷 浩
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

現在までに知られている磁性体の中でもっとも複雑な相図を示すことで良く知られているのはCeSbである。磁場-温度平面での階段状の複雑な相図はデビルズ・ステアケース(悪魔の階段)と呼ばれている。CeSbに限らず一般のCeX(X=P,As,Bi,Sb)で程度の差はあれ、複雑な磁気相図が見られることは、この現象の背後に一般的なメカニズムが存在することを示唆している。CeXがその他のセリウム化合物とことなる特徴は、この系におけるキャリアーの数が大変少ないことで、CeXは小数キャリアー系と呼ばれている。CeXのキャリアーはΓ点のホールとX点の電子からなり立っている。このような、半金属ではそれぞれのキャリアーに対する近藤結合に加えて、電子からホールへ遷移する際にf電子とのスピン交換を伴うプロセスが可能になる。この非対角的交換相互作用にともなう運動量変化は反強磁性波数ベクトルに対応するから、この非対角相互作用は反強磁性的に働くことになる。対角(バンド内),非対角(バンド間)交換相互作用にもとづく二種類のRKKY相互作用の間のフラストレーションがCeXで見られるデビルズ・ステアケースを理解する鍵と考えられる。当研究課題での研究によりこの考えが正しいことが、簡単な一次元モデルを用いて検証された。このRKKY相互作用は、局在スピンによって誘起される磁気的フリーデル振動がその起源である。その詳細を調べるため、近藤格子モデルに対する密度行列繰り込み群のプログラムを開発し、常磁性における電荷およびスピンのフリーデル振動を観測することが出来た。。その周期から、近藤格子の常磁性相では、フェルミ波数が伝導電子の密度に局在スピンの数を加えたもので決まっている、すなわちフェルミ面が大きいことが明らかになった。