著者
羽太 園 野畑 理佳 東 健太郎 戸田 淑子 安達 祥子
出版者
国際交流基金
雑誌
国際交流基金日本語教育紀要 = The Japan Foundation Japanese-Language Education Bulletin (ISSN:13495658)
巻号頁・発行日
no.13, pp.55-70, 2017-03-01

国際交流基金関西国際センターで実施している外交官・公務員日本語研修では、これまで主教材として『みんなの日本語』を使用していたが、コース目標とカリキュラムのずれ、レベル差の拡大による学習ストレス、日本文化社会理解のシラバスの偏りなどの問題から、平成27年度より『まるごと日本のことばと文化』(以下『まるごと』)を使用することとした。主教材変更に際しては、本研修参加者の多様な背景や学習能力などをふまえ、①職業的な知識や経験の利用、②レベル差への対応、③文法を重視する学習者への対応、の3点に留意してコースデザインを行った。研修の結果、成績下~中位レベルの口頭運用能力の向上、ストレスの軽減、コミュニケーションへの積極性などの変化が明らかになったが、上位レベルのカリキュラムには課題が残った。
著者
上田 和子/羽太 園 羽太 園
出版者
独立行政法人国際交流基金
雑誌
日本語国際センター紀要 (ISSN:09172939)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.19-36, 1999-03-20

関西国際センターでは、1997年10月より9カ月間、外交官日本語研修および公務員日本語研修を実施した。同研修では学習者の多様な背景やニーズに応え、継続学習に向けた自己学習能力獲得を支援するために、「パフォーマンス・チャート」を作成し、運用した。パフォーマンス・チャートとは、目標言語技能(ターゲット・スキル)を項目別 、到達レベル別に分類し、「———ができる」という具体的な記述で行動目標を明示したもので、これにより学習者は自分で学習目標を立て、それを実現していく過程がわかる。パフォーマンス・チャート作成にあたっては、はじめに過去の研修参加者及び現職外交官への聞き取り調査を行い、職務場面 、日常生活場面での言語使用状況を得て、そのニーズにもとづき目標言語技能項目を立てて系列化した。 研修中、パフォーマンス・チャートは日本語研修のイメージ作り、短期、長期目標の設定、到達度の確認、授業の選択のめやす、学習カウンセリングなどの場面 で活用された。また大使館実習では学習者自身が、日本語ニーズを分析し、継続学習を計画する際に利用した。 実践を通じて以下の点からパフォーマンス・チャートの有効性が認められた。まず、(1)学習者が最も必要とする職務的日本語領域を自分で見きわめ、そのために必要な項目を選択するという学習における「意志決定」が容易になる点、(2)シラバス、カリキュラム、評価などコース設計の各場面 での目標が明確になり、研修内容の一貫性が維持しやすくなること、(3)学習カウンセリングの場面で、パフォーマンス・チャートの具体性が教師と学習者に活発な議論をもたらし、両者がインターアクションする場を提供していた点である。 学習者が自律的に日本語学習を進めるためには、学習スタイルも含めたより広い枠組みでパフォーマンス・チャートをとらえ、その内容や運用方法について検討し、さらに改良していかなければならない。