著者
肥後 順一 高野 光則 菊池 誠
出版者
大阪大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2009-07-23

天然変性蛋白質の「折れたたみとカップルした結合」の機構を、計算機実験によって解明した。計算対象(天然変性蛋白質とパートナー分子、およびそれを取り囲む多数の溶媒分子)を全原子モデルで表現し、効率的構造探索法であるマルチカノニカル分子動力学を行った。それにより、折れたたみとカップルした結合過程の詳細な自由エネルギー地形を可視化した。実験的に決定された複合体構造以外にも、短い寿命の多様な複合体構造の存在を示した。得られた自由エネルギー地形をより大きな観点から理解するために、粗視化モデルでのサンプリングを行った。複数の準安定な複合体の間の構造遷移を、競合性と協調性の概念から表現した。
著者
笠原 浩太 椎名 政昭 肥後 順一 緒方 一博 中村 春木
出版者
分子シミュレーション学会
雑誌
アンサンブル (ISSN:18846750)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.253-259, 2018-10-31 (Released:2019-10-31)
参考文献数
14

蛋白質における天然変性領域(IDR)は特定の立体構造をもたないフレキシブルな領域であり,リン酸化などの化学修飾を受けて蛋白質の機能制御を行うなど,重要な役割を果たしている.本研究では重要なDNA 結合蛋白質であるEts1 に着目し,そのIDR がリン酸化を受けることでDNA 結合親和性を低下させる制御メカニズムを理論と実験の両面から明らかにした.独自のマルチカノニカル分子動力学法(McMD)を用いて求められたリン酸化Ets1 および非リン酸化Ets1 のIDR の構造アンサンブルより,リン酸基がDNA 結合領域へ接触することで競争的にDNA 結合を阻害するメカニズムが示唆された.ここで明らかとなった重要なアミノ酸残基に関する種々の変異体について実験的な結合解離速度測定を行い,計算結果と整合することを確かめた.