著者
脇口 宏之 大賀 正一
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.190-196, 2016 (Released:2016-06-17)
参考文献数
46
被引用文献数
2 8

リポ化ステロイドは,日本で開発された脂肪乳剤を結合させたデキサメタゾン製剤である.本剤は関節リウマチに対する有効性が認められ,デキサメタゾンに比して副作用を軽減させる特徴を有する.また,自己免疫疾患あるいは自己炎症疾患に合併するマクロファージ活性化症候群においても大量投与による有用性が報告されている.脂肪乳剤は容易に活性化マクロファージに取り込まれ保持される性質があることから,リポ化ステロイドはマクロファージが活性化する様々な病態に対する効果が期待される.関節炎や肉芽腫モデルラットに対するリポ化ステロイドは,デキサメタゾンに比して2∼5倍の抗炎症効果を示す.臨床的には,血球貪食性リンパ組織球症,移植片対宿主病および肺ヘモジデローシスなど致死性疾患の急性期治療においてその有用性が報告されている。本稿では,マクロファージに対するリポ化ステロイドの効果と視床下部–下垂体–副腎軸への影響から有用性が期待される病態について概説する.
著者
脇口 宏
出版者
特定非営利活動法人 日本小児血液・がん学会
雑誌
日本小児血液学会雑誌 (ISSN:09138706)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.59-67, 1999-04-30 (Released:2011-03-09)
参考文献数
59

慢性活動性EBウイルス感染症CAEBVの臨床症状, 免疫異常, ウイルス感染細胞の特徴, 診断, 治療などについて概説した.症状の主体は発熱, 肝脾腫, リンパ節腫脹で, EBウイルス感染細胞の異常増幅/EBウイルス負荷量増加に細胞性免疫能低下, サイトカイン産生異常などが関与していると考えられる.CAEBVにおけるEBウイルス感染細胞の主体はT/NK細胞で, クローン性の増殖を示す例が多い.両親の免疫機能にも異常があり, とくに母親と患児のNK活性には有意の相関が観察される.自己免疫性リンパ増殖症候群のなかにCAEBVに相当する臨床症状と, 免疫異常を伴う例があり, 本症の発病機序を考えるうえで興味深い.予後はきわめて不良であるが, 診断基準と治療方法はまだ確立されていない.骨髄移植と細胞傷害性T細胞養子免疫療法は今後期待される治療方法である.
著者
藤枝 幹也 脇口 宏 川久保 敬一 渡辺 誠司 倉繁 隆信 弘井 誠 原 弘
出版者
特定非営利活動法人 日本小児血液・がん学会
雑誌
日本小児血液学会雑誌 (ISSN:09138706)
巻号頁・発行日
vol.6, no.5, pp.499-503, 1992

症例は7歳女児.3歳7ヵ月頃から出血傾向, 血小板減少, 巨核球減少, 赤芽球形態異常とHbF高値などが持続し, 6歳2ヵ月に骨髄芽球の増加がみられ, 骨髄異形成症候群 (MDS, RAEB) と診断された.少量cytosine-arabinoside (Arac-C) 療法で, 貧血と出血傾向の改善, 芽球の減少がみられたが, 約1年後にovert leukemla (FAB分類M2) に急性転化した.多剤耐性で寛解がえられず, 入院9ヵ月目から咳嗽出現し, 胸部レ線像でび慢性の浸潤像と心陰影の拡大が認められた.抗生剤, 抗真菌剤, 強心剤に反応せず死亡した.剖検では, 左肺上葉に空洞形成がみられ, 組織学的にアスペルギローシスの像を呈していた.全肺胞はPAS染色で顆粒状に染まる物質でみたされ, 一部oil redに染まっていた.電顕像でmultilamellated structureが認められアスペルギルス感染に伴う肺胞蛋白症と診断された.
著者
大石 拓 森澤 豊 安枝 浩 秋山 一男 脇口 宏
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.53, no.11, pp.1163-1167, 2004-11-30 (Released:2017-02-10)
参考文献数
13
被引用文献数
1

症例は11歳女児と10歳男児の姉弟である. それぞれ1999年5月と10月に気管支喘息を発症した. 劣悪な家族環境と発症年齢が高いことから心因性の喘息発作が疑われていた. 母親も2001年から喘息発作が出現した. 詳細な病歴聴取の結果, 室内清掃がなされておらず, ゴキブリが多数生息していることが判明した. CAP-RASTでは3例ともゴキブリが陽性反応を示したことから, ゴキブリが主要アレルゲンの気管支喘息と考えられた. 本邦では喘息も含めたゴキブリアレルギーはあまり認知されていない. 本邦においても喘息のアレルゲンとしてゴキブリの存在を念頭におくべきであると考えられた. 1964年にBerntonらが最初にゴキブリアレルギーを報告して以来, 海外では多数の基礎, 臨床研究が報告され, アメリカの都市部で救急外来を受診する喘息児の多くはゴキブリが主要アレルゲンであることが報告されている. しかしながら, 本邦ではゴキブリアレルギーの認知度は低い. 今回, 心因性喘息と考えられていたがゴキブリが主要アレルゲンと考えられた気管支喘息姉弟例を経験したので報告する.
著者
大石 拓 森澤 豊 安枝 浩 秋山 一男 脇口 宏
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.53, no.11, pp.1163-1167, 2004
被引用文献数
2

症例は11歳女児と10歳男児の姉弟である. それぞれ1999年5月と10月に気管支喘息を発症した. 劣悪な家族環境と発症年齢が高いことから心因性の喘息発作が疑われていた. 母親も2001年から喘息発作が出現した. 詳細な病歴聴取の結果, 室内清掃がなされておらず, ゴキブリが多数生息していることが判明した. CAP-RASTでは3例ともゴキブリが陽性反応を示したことから, ゴキブリが主要アレルゲンの気管支喘息と考えられた. 本邦では喘息も含めたゴキブリアレルギーはあまり認知されていない. 本邦においても喘息のアレルゲンとしてゴキブリの存在を念頭におくべきであると考えられた. 1964年にBerntonらが最初にゴキブリアレルギーを報告して以来, 海外では多数の基礎, 臨床研究が報告され, アメリカの都市部で救急外来を受診する喘息児の多くはゴキブリが主要アレルゲンであることが報告されている. しかしながら, 本邦ではゴキブリアレルギーの認知度は低い. 今回, 心因性喘息と考えられていたがゴキブリが主要アレルゲンと考えられた気管支喘息姉弟例を経験したので報告する.