著者
延原 弘章 渡辺 由美 三浦 宜彦
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.61, no.7, pp.354-359, 2014 (Released:2014-08-08)
参考文献数
21

目的 インフルエンザ対策に関する基礎資料を提供することを目的として,2000/01年から2010/11年シーズンの11シーズンにわたるインフルエンザワクチンの接種状況の推定を行った。方法 全国のインフルエンザワクチンの使用実績のある医療機関等から,都道府県で層化して無作為に抽出した3,364~7,476の医療機関等を対象に,2000/01年から2010/11年シーズンにわたってインフルエンザワクチンの接種状況および同ワクチンの使用状況の調査を行った。このデータを元に,全国の実際のインフルエンザワクチン使用本数を補助変量とした複合比推定により,全国の世代別のインフルエンザワクチンの接種者数および接種率の推定を行った。結果 有効回答数は1,047~2,763であった。2000/01年,2010/11年シーズンの接種者数はそれぞれ923万人,4,946万人と推定され,この11シーズンの間に 5 倍以上に増加していた。また,2010/11年シーズンの接種率は小児59.2%,一般成人28.6%,高齢者58.5%,全体で38.6%と推定された。ただし,調査期間後半では回収数の減少等により,小児および高齢者では信頼区間の幅が広くなっていた。結論 2000/01年から2010/11年シーズンにかけて,インフルエンザワクチンの接種率は上昇傾向にあったが,近年は横ばい傾向で,小児および高齢者は50%台,一般成人は30%弱,全体では40%弱程度で安定しつつあるように見受けられた。
著者
東 知宏 荒川 満枝 池原 弘展 森本 美智子 鵜飼 和浩
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.183-188, 2012 (Released:2012-08-05)
参考文献数
14

医療施設では擦式アルコール製剤を用いた手指消毒が推奨されているが,実際には製剤の使用量が規定より少なく,指先を擦り込んでいないと報告されている.そこで手指消毒時の指先擦り込みの有無,製剤使用量の違いが除菌効果に影響を与えるか検証した.   研究協力者は指先擦り込み実施群と指先擦り込み非実施群に分け,それぞれ製剤を規定の3 mLと半量の1.5 mL使用し手指消毒を行った,手指消毒前後の細菌をスタンプ法により指先,指中央,手掌から採取し除菌効果の差を検証した.   指先擦り込み非実施群では,指先の除菌率が指中央,手掌と比較して有意に低かった(製剤使用量3 mL, 1.5 mLともにp<0.001).また,指先擦り込み非実施群は,実施群と比較して指先の指数減少値が有意に低かった(製剤3 mL使用時p<0.01, 1.5 mL使用時p<0.001).指先擦り込み非実施群では,製剤使用量が1.5 mLの場合,3 mL使用した場合と比較して指先の指数減少値が有意に低かった(p<0.01).指中央,手掌では製剤使用量の違い,指先擦り込みの有無による除菌効果の差はなかった.これらより,手指消毒時に指先を擦り込まなければ除菌効果が低下することを認識し,指先擦り込みを意識して手指消毒を行う必要があるといえる.さらに,製剤使用量を規定の半量以下とすると,除菌効果がより低下することを認識しておく必要がある.
著者
栗原 弘
出版者
名古屋文理大学
雑誌
名古屋文理大学紀要 (ISSN:13461982)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.13-22, 2004-04-01

平安中期の代表的な政治家の一人であった藤原行成は妻・母親・外祖父の遺骨を川に流している.葬法そのものが非常に珍しいのだが,それにもまして重要なことは右の三人の出自はすべて源氏であって,藤原氏の行成が他氏の身でありながら三人の墓を喪失させていることである.本稿はこの問題を家族史の立場から考察した.
著者
猪原 弘之 小山 聡 栗原 正仁
雑誌
ゲームプログラミングワークショップ2016論文集
巻号頁・発行日
vol.2016, pp.44-48, 2016-10-28

ゲームAIはコンピュータ黎明期から盛んに研究されており,コンピュータが扱いやすいものから順に研究していく意味で特に完全情報ゲームの研究が中心だった.しかし,チェス,将棋,囲碁などの主要な完全情報ゲームにおける研究は人間のトッププロよりも高い実力が発揮できるレベルまでに達し,単純に強いだけの完全情報ゲームのAIを作る研究は終焉を迎えつつある.そこで,本稿では数多くある不完全情報ゲームの中でも,盛んに研究されているポーカーや麻雀などにないゲーム特性を持ったポケモン対戦を対象として,そのゲームが持つ特徴を紹介し,それぞれ異なる工夫を施したいくつかのUCTアルゴリズムの有効性を検証した.その結果,ポケモン対戦でUCTの実力を一番引き出す方法が分かったが,モンテカルロ法とUCTの実力に有意差がなく,ポケモン対戦にはUCTアルゴリズムが有効とは言えない可能性があることが分かった.
著者
杉田 精司 巽 瑛理 長谷川 直 鈴木 雄大 上吉原 弘明 本田 理恵 亀田 真吾 諸田 智克 本田 親寿 神山 徹 山田 学 早川 雅彦 横田 康弘 坂谷 尚哉 鈴木 秀彦 小川 和律 澤田 弘崇
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

リュウグウの近接観測の本番が目前に迫っている。これに備えて、我々は3つの重要な準備を進めている。1) 低アルベド小惑星の可視スペクトルの見直し。2)リュウグウの地上観測スペクトルの解析とメインベル小惑星との比較。3)可視分光カメラONC-Tのスペクトル校正観測。本講演では、これらについて簡潔に紹介する。 まず、メインベルトの低アルベド小惑星のスペクトル解析である。先駆的な小惑星のスペクトルのサーベイ観測であるECAS(Tedesco et al.,1982)の後、地上望遠鏡による多バンド分光のSDSS(Ivezic et al. 2001)、地上望遠鏡のよる連続スペクトルのデータベースであるSMASS2の整備(Bus and Binzel, 2002)、天文衛星WISE/NEOWISEによる多バンド分光のデータベース(Masiero et al. 2011)など多数の強力な小惑星のスペクトルのデータベースが整備されてきた。特に、SDSS やWISE/NEOWISEによって膨大な数がある小さな小惑星のスペクトルアルベドの分布が定量的に計測されたおかげで、RyuguやBennuが由来するメインベルト内帯の低アルベド族の分布については最近に大きな理解の進展があった。まず、以前にNysa族と言われていた族は、E型スペクトルのNysa族の中にF型(or Cb~B型)のPolana族とEulalia族が隠れていることが明らかになった。さらにPolana族とEulalia族は形成時期が古くて広範囲に破片を分布させており、ν6共鳴帯にも多くの1kmクラスの破片を供給していることが分かった。その一方で、より若いErigone, Klio, Clarrisaなどのぞくはずっと若いため、ν6共鳴帯への大きな破片の供給は限定的であることが分かってきた。この事実に基づいて、Bottke et al. (2015)はRyuguもBennuもPolana族由来であると推論している。 このようにSDSS やWISE/NEOWISEのデータは極めて強力であるが、0.7μmのバンドを持たないため、広義のC型小惑星のサブタイプの分類には適さない。その点、ECASは、小惑星スペクトル観測に特化しているだけあって0.7μmのバンドの捕捉は適切になされている。しかし、ECASではあまり多くのC型小惑星が観測されなかったという欠点がある。そのため、現時点ではSMASS2のデータが広義C型のスペクトル解析に適している。そこで、我々はSMASS2の中の広義のC型の主成分解析を行った。紙面の関係で詳細は割愛するが、その結果はCg, C, Cb, Bなど0.7μm吸収を持たないサブタイプからなる大クラスターと、Ch, Cghなど0.7μm吸収を持つサブタイプからなる大クラスターに2分され、両者の間にPC空間上の大きな分離が見られること、またこの分離域はPC空間上で一直線をなすことが分かった。この2大クラスターに分離する事実は、Vernazza et al. (2017)などが主張するBCGタイプがCgh, Chと本質的に異なる起源を持っていて水質変成すら受けていない極めて始源的な物質からなるとの仮説と調和的であり、大変興味深い。 これに引き続き、世界中の大望遠鏡が蓄積してきた23本のRyuguの可視スペクトルをコンパイルして、SMASS2と同じ土俵で主成分解析に掛けた。その結果は、Ryuguの全てのスペクトルがBCGクラスターに中に位置しており、その分布は2大クラスターの分離線に平行であった。これはRyuguが極めて始源的な物質であることの現れかもしれず、BCGクラスター仮説の検証に役立つ可能性を示唆する。 しかし、現実は単純ではない。Murchison隕石の加熱実験で得られたスペクトルもPC空間ではRyuguのスペクトルの分布と極めて近い直線的分布を示すのである。これは、Ryuguのスペクトル多様性がMurchison隕石様の物質の加熱脱水で説明できるとの指摘(Sugita et al. 2013)とも調和的である。この2つの結果は、Ryuguの化学進化履歴について真逆の解釈を与えるものであり、はやぶさ2の試料採取地の選択について大きな影響を与えることとなる。 この2つの解釈のどちらが正しいのか、あるいは別の解釈が正しいのかの見極めは、0.7μm吸収帯の発見とその産状記載に大きく依存する。もし、Murchison隕石様の含水鉱物に富む物質がRyuguの初期物質であって加熱脱水で吸収帯が消えただけの場合には、Ryugu全球が表面下(e.g., 天体衝突などで掘削された露頭)まで含んで完全に吸収帯を失ってしまうことは考えにくい。したがって、0.7μm吸収帯が全く観測されない場合には、VernazzaらのBCG仮説やFやB型の水質変成によってCh, Cghが生まれたと考えるBarucciらのグループの仮説(e.g., Fornasier et al. 2014)が有力となるかも知れない。しかし、0.7μm吸収が見つかって、熱変成を受けやすい地域ではその吸収が弱いことが判明すれば、スペクトル多様性は加熱脱水過程でできたとの考えが有力となろう。 最後に、はやぶさ2ONCチームは打ち上げ後も月、地球、火星、木星、土星、恒星など様々な天体の観測を通じて上記の観測目標を達成できるための校正観測を実施している。それらの解析からは、0.7μm帯および全般的なスペクトル形状の捕捉に十分な精度を達成できることを示唆する結果を得ており(Suzuki et al., 2018)、本観測での大きな成果を期待できる状況である。引用文献:Bottke et al. (2015) Icarus, 247 (2015) 191.Bus and Binzel (2002) Icarus, 158, 146.Fornasier et al. (2014) 233, 163.Ivezic et al. (2001) Astron. J.、 122, 2749.Masiero et al. (2011) Astrophys. J. 741, 68.Sugita et al. (2013) LPSC, XXXXIII, #2591.Suzuki et al. (2018) Icarus, 300, 341Tedesco et al. (1982) Astrophys. J. 87, 1585.Vernazza et al. (2017) Astron. J., 153,72
著者
宗原 弘幸 高野 和則 古屋 康則
出版者
The Ichthyological Society of Japan
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.391-394, 1991-02-28 (Released:2010-06-28)
参考文献数
13

交尾型カジカ, イソバテングBlepsias cirrhosusの配偶子がいつ, どこで会合し受精開始するかを明らかにした.排卵した雌の卵巣腔から卵と卵巣腔液を取り出し, 一部の卵を海水または卵巣腔液に浸し, 24時間後にそれぞれの胚発生状態を観察した.その結果, 海水中の卵のほとんどは胚発生を開始していたが, 卵巣腔液中の卵は全く発生しなかった.しかし, これらの未変化の卵を海水に移すと, その多くが胚発生を開始した.また, 海水に浸す前の卵を光顕観察した結果, 多数の精子が卵門管内に侵入しているものの, 卵細胞質内への貫入は認められず.卵も第二減数分裂の中期にとどまっていることが確認された.以上の結果から, 本種では体内で両配偶子の会合は終えているが, 受精は産卵後海水中で開始することが明らかとなった.
著者
楠原 弘己 Triapitsyn Serguei V.
出版者
Entomological Society of Japan
雑誌
昆蟲.ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.8-11, 2023-03-25 (Released:2023-04-13)
参考文献数
10

The zig-zag leafhopper, Maiestas dorsalis (Motschulsky, 1859) (Hemiptera: Cicadellidae), is a minor pest of rice in Asia. To investigate the fauna of egg parasitoids associated with leafhoppers in rice field, we deployed sentinel egg traps of M. dorsalis on rice seedlings in Fukuoka Prefecture, Kyushu Island, Japan. Females of two fairyflies, Lymaenon aureus (Girault, 1911) and L. litoralis (Haliday, 1833) (Hymenoptera: Mymaridae) were reared from the deployed sentinel eggs. This is a new host record for L. aureus. Additionally, new distributional records of both species from Honshu Island are presented.
著者
吉原 弘道
出版者
九州産業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究では、日本刀および刀鍛冶研究の重要史料である鎌倉~江戸時代中期に作成された日本刀(主に平安~戦国時代に製作された日本刀)の茎図(日本刀の茎の模写)・刀絵図(日本刀の刀身全体もしくは一部の模写)を調査・収集し、茎図集(押形集)・刀絵図集の史料学的分析を行い、絵図史料(茎図・刀絵図)採録刀剣データベースを構築する。構築した絵図史料採録刀剣データベースを用いて、茎図・刀絵図の変遷とその作成背景、日本刀の伝来過程、日本刀の形状変化(磨上による寸法の変化など)について分析する。
著者
吉原 弘道
出版者
公益財団法人史学会
雑誌
史學雜誌 (ISSN:00182478)
巻号頁・発行日
vol.111, no.7, pp.35-59, 142-143, 2002-07-20

The conventional research on the position held by Ashikaga Takauji 足利尊氏 within the government formed after the Kenmu 建武 imperial restoration (1334) tends to argue that the warrior leader was excluded from all of its affairs. However, Amino Yoshihiko 網野善彦 has proposed that such a view be reconsidered in the light that the Kenmu government officially gave Takauji charge over Chinzei 鎮西 (Kyushu) military affairs, a subject that is now being pursued by Mori Shigeaki 森茂暁 and Ito Kiyoshi 伊藤喜良. Nevertheless, the conventional skeptical view of Takauji's role has yet to be reconsidered ; and his involvement in the Kenmugovernment has by no means been thoroughly investigated. In the present article, the author conducts a detailed analysis of the time from Takauji's turn against the Kamakura Bakufu in the 4th month of Genko 3 (1333) through the post-coup de'etat settle ment. The research to date has tended to look upon Takauji's involvement in the settlement as anti-government in attitude ; however, it is a fact that 1) Takauji utilized his close relationship with Emperor Go-Daigo to raise troops during the conflict, and 2) petitions for Imperial recognition of deployment (chakuto-jo 着到状) to the battles fought in the Kanto and Chinzei regions were submitted to the Emperor through Takauji. Moreover, Takauji's receipt of these petitions stemmed not from any personal ambition, but rather from his position as an intermediary for the Emperor ; and the authority that Takauji assumed during the incident was not personally usurped, but always based on his relationship to the Emperor, and was finally officially recognized in his appointment as military commander-in-chief of Chinju-fu 鎮守府 on Genko 3/6/5. In addition, his investiture as a minister of state (kugyo 公卿) was an attempt by the Emperor to define his position within the imperial court's organization. The author concludes that rather than being excluded from the affairs of the Kenmu government, Ashikaga Takauji was placed in one of its positions of military responsibility, and from the standpoint of Takauji himself, this role was not the result of some move to expand his own political influence, but rather stemmed from the powers invested in him through his official appointment as commander-in-chief of Chinju-fu.
著者
角甲 純 中村 陽一 西 智弘 高木 雄亮 松田 能宣 渡邊 紘章 笠原 庸子 合屋 将 小原 弘之 森 雅紀 山口 崇
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.33-42, 2022 (Released:2022-03-31)
参考文献数
44

【目的】慢性進行性疾患患者の呼吸困難に対する送風療法の有効性について検討する.【方法】医中誌,Cochrane Library, EMBASE, MEDLINEを用いて,2019年10月23日までの期間に報告されたすべての文献について検索を行った.また,2020年6月30日と2021年12月7日に,PubMedを用いてハンドサーチを行った.適格基準は,1)送風療法を扱う無作為化比較試験,2)対象者の年齢が18歳以上,とした.除外基準は,1)重複文献,2)学会発表,とした.【結果】110件中10件が採用され,そのうち5件についてメタ解析を行った.送風療法は標準化平均値差−1.43(95%信頼区間−2.70~−0.17; I2=94%;異質性のp値<0.0001)であり,呼吸困難を有意に改善した.【結論】慢性進行性疾患患者の呼吸困難に対して送風療法は有効であることが示された.
著者
二村 正之 若原 弘之 宮本 龍夫
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.60-64, 2014

イナズマチョウ属Euthaliaの幼虫の棘に毒性があるかどうかを調べるために,モニナイナズマEuthalia moninaとビャッコイナズマE. byakko各々5齢幼虫の形態を観察し,さらに被験者(50歳,男性)の皮膚へ直接触れさせる方法により皮膚炎発症の有無を確認する実験を行った.形態観察の結果,E. moninaの幼虫背面の棘に黄色の球状部が多数認められるのに対し,E. byakkoにはほとんど認められないことが判明した.さらに,被験者の前腕部に虫体を付着させる実験で,E. moninaでは虫体が皮膚に触れると疼痛をもたらし,10分後に早くも付着部皮膚に皮膚炎(痒みを伴う紅斑や膨疹)が出現し,48時間後にはそれが幼虫の形に浮き出るほど進行した.結局,これらの症状が消失するまでに120時間(5日間)以上を要した.これは既に毒棘による皮膚炎の発症が報告されているマダラガ科Zygaenidae幼虫による反応に近いと考えられた.一方,E. byakkoでは皮膚にそのような変化はまったく認められなかった.以上の結果から,E. monina 5齢幼虫の棘から毒液が分泌される可能性が示され,これが,背部の棘にある黄色の球状部に含まれている可能性があることが示唆された.一方E. byakko 5齢幼虫にはそのようなことがなかったという事実は,毒棘がEuthalia属幼虫すべてに存在するものではないことを示している.
著者
石原 弘
出版者
日本保健物理学会
雑誌
保健物理 (ISSN:03676110)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.179-183, 2011 (Released:2012-07-28)
参考文献数
1
被引用文献数
1
著者
吉原 弘道
出版者
公益財団法人 史学会
雑誌
史学雑誌 (ISSN:00182478)
巻号頁・発行日
vol.111, no.7, pp.35-59,142-143, 2002-07-20 (Released:2017-12-01)

The conventional research on the position held by Ashikaga Takauji 足利尊氏 within the government formed after the Kenmu 建武 imperial restoration (1334) tends to argue that the warrior leader was excluded from all of its affairs. However, Amino Yoshihiko 網野善彦 has proposed that such a view be reconsidered in the light that the Kenmu government officially gave Takauji charge over Chinzei 鎮西 (Kyushu) military affairs, a subject that is now being pursued by Mori Shigeaki 森茂暁 and Ito Kiyoshi 伊藤喜良. Nevertheless, the conventional skeptical view of Takauji's role has yet to be reconsidered ; and his involvement in the Kenmugovernment has by no means been thoroughly investigated. In the present article, the author conducts a detailed analysis of the time from Takauji's turn against the Kamakura Bakufu in the 4th month of Genko 3 (1333) through the post-coup de'etat settle ment. The research to date has tended to look upon Takauji's involvement in the settlement as anti-government in attitude ; however, it is a fact that 1) Takauji utilized his close relationship with Emperor Go-Daigo to raise troops during the conflict, and 2) petitions for Imperial recognition of deployment (chakuto-jo 着到状) to the battles fought in the Kanto and Chinzei regions were submitted to the Emperor through Takauji. Moreover, Takauji's receipt of these petitions stemmed not from any personal ambition, but rather from his position as an intermediary for the Emperor ; and the authority that Takauji assumed during the incident was not personally usurped, but always based on his relationship to the Emperor, and was finally officially recognized in his appointment as military commander-in-chief of Chinju-fu 鎮守府 on Genko 3/6/5. In addition, his investiture as a minister of state (kugyo 公卿) was an attempt by the Emperor to define his position within the imperial court's organization. The author concludes that rather than being excluded from the affairs of the Kenmu government, Ashikaga Takauji was placed in one of its positions of military responsibility, and from the standpoint of Takauji himself, this role was not the result of some move to expand his own political influence, but rather stemmed from the powers invested in him through his official appointment as commander-in-chief of Chinju-fu.
著者
菅原 弘貴 藤谷 武史 瀬口 翔太 澤畠 拓夫 永野 昌博
出版者
Kanagawa Prefectural Museum of Natural History (Kanagawa Prefectural Museum)
雑誌
神奈川県立博物館研究報告(自然科学) (ISSN:04531906)
巻号頁・発行日
vol.2022, no.51, pp.47-59, 2022 (Released:2022-03-29)

サンショウウオ属の1 新種を、日本の愛知県西部から記載した。分子遺伝学的および形態学的解析の結果、ヤマトサンショウウオは愛知グループと近畿グループの二つに分けられることが示唆された。このため、ヤマトサンショウウオの愛知グループを、新種Hynobius owariensis sp. nov.(和名:オワリサンショウウオ)として記載した。形態比較の結果、調査した雄個体において、ヤマトサンショウウオが尾の上下縁に明瞭かつ鮮明な黄色線をもつのに対して、本新種ではこの形質が確認できなかった。さらに、雄個体において、体側に沿って前肢と後肢を伸ばした時、本新種は多くの個体が肋皺1 個分よりも離れるが、ヤマトサンショウウオでは多くの個体が肋皺1 個分以内(個体によっては重複する)に収まっていた。その他、両種間には有意に異なる形質が複数存在していることに加えて、判別分析の結果においても、雌雄共に形態的に区別可能であることが示唆された。本新種は愛知県の西部(知多半島から名古屋市周辺部)に固有であるが、既に絶滅したと考えられる集団も複数存在し、現在も開発や乾田化によって、絶滅の危機に瀕している。