著者
與倉 豊
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.83, no.6, pp.600-617, 2010-11-01 (Released:2012-01-31)
参考文献数
40
被引用文献数
1 2

本稿は,グローバル企業の知識結合に着目し,日本企業による外資導入の実績に関する資料を基に,社会ネットワーク分析を用いて組織間の関係構造を考察した.さらに共分散構造分析を用いて,知識結合に基づく企業間ネットワークの特性と,企業のパフォーマンス(経済的成果)との関連性について検討した.分析の結果,製造業18業種がコンポーネント数や平均次数といったネットワーク統計量の差異によって六つのグループに類型化された.ノード数が多く複雑なネットワークを,ブロックモデルを用いて縮約化することによって,知識結合において重要な役割を果たすグローバル・ハブが抽出された.また,多母集団同時分析によって,ネットワークの関係構造において優位な位置にあるノードほど,財務諸表で測られる企業のパフォーマンスに対して正の影響を与えることが示された.さらに,医薬品や電気機器,自動車等,精密機械など科学的・分析的知識を必要とする業種ほど,ネットワーク優位性の影響が強く働くことが明らかになった.
著者
與倉 豊
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.158-177, 2012-09-28 (Released:2012-09-28)
参考文献数
50
被引用文献数
2

本稿では,研究会や異業種交流会などへの参加によって構築されるインフォーマルネットワークが,イノベーションや知識創造において果たす役割を考察した.事例として取り上げたのは産業支援機関による研究会への支援体制が整っている静岡県浜松地域である.当該地域における研究会参加主体のデータベースを構築し,インフォーマルネットワークが有するポテンシャルを社会ネットワーク分析を用いて検討した.そしてインフォーマルネットワークの関係構造と,共同研究開発に基づくフォーマルネットワークの形成との関連性について考察した.その結果,特定の主体が複数の研究会に参加することによって,新奇的な知識を異なる研究会の間で伝達し,イノベーションや知識創造において重要な役割を果たしていることが明らかになった.そのような主体は,フォーマルネットワークの形成において主導的な役割を果たし,先端的な知識や市場情報を流通させる可能性が高いことが示された.長年にわたり開催される研究会では参加主体が同質的になり,多様な主体との接触が抑制される傾向にある.しかし,浜松地域の場合には県外からの参加主体や,複数の研究会に流動的に参加する主体によって,新奇的な知識を獲得するチャネルが確保されることにより,信頼を基にしたフォーマルネットワークが形成され,「認知的ロックイン」が回避されうることが示唆された.
著者
與倉 豊
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.82, no.6, pp.521-547, 2009-11-01 (Released:2011-08-25)
参考文献数
39
被引用文献数
4 4

本稿では,産(企業)・学(大学,高等専門学校)・公(公設試験研究機関など)の連携の事例として,経済産業省が実施する「地域新生コンソーシアム研究開発事業」を取り上げ,共同研究開発ネットワークの構造とイノベーションに関する計量的な分析を行った.研究テーマの共有に基づく組織間ネットワーク構造の可視化と指標化を行った結果,次のような知見を得た.まず,地域ブロックごとにネットワーク構造が,共同研究開発先を多く有するコアが複数存在する「分散型」と,コアが限られている「集中型」とに分かれることを確認した.また,共同研究に参加する組織の中心性の高さが,事業化の達成と密接に関わることを明らかにした.さらに,共同研究開発の空間的拡がりの違いを,研究分野別・組織属性別に検討した結果,「ものづくり型」の研究分野ではローカルなアクターが指向されているのに対して,「サイエンス型」の研究分野では,より広域的なネットワークが形成されていること,大学や高等専門学校が遠距離との共同研究開発において中心的役割を担っていることが明らかとなった.
著者
與倉 豊
出版者
経済地理学会
雑誌
経済地理学年報 (ISSN:00045683)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.187-203, 2014-09-30 (Released:2017-05-19)

九州半導体産業は,経済産業省の産業クラスター計画や文部科学省の知的クラスター創生事業など科学技術振興施策の元で,システムLSIや三次元実装など競争優位を有する技術を順次導入し,大手半導体メーカーの再編や東アジア諸国の技術的キャッチアップなど時代ごとの環境変化に適応してきた.本稿では,九州における半導体産業の高度化を振興する事例として,九州経済調査協会が事業実施の中核主体となる国際会議の開催事業と,ビジネスマッチング事業を取り上げ,半導体関連企業間の多様なネットワークの形成過程について検討した.分析の結果,2001年の初開催以降,国際会議が多様な国から参加者を集め,国際取引を可能とさせる商業の場として機能していること,また既存の人的ネットワークの強化に寄与していることを明らかにした.そして国際会議で構築された人的ネットワークの活用を目的として,2008年より開始されたビジネスマッチング事業では,継続的な情報交換によって相互に他企業を認知するなかで信頼関係が醸成され,九州内外の企業間で新規取引関係が構築されていることを示した.そのような多様な企業間のネットワーク形成において,半導体技術に関して卓越した知識を有するコーディネーターが重要な役割を果たしていることが示唆された.
著者
與倉 豊
出版者
地理科学学会
雑誌
地理科学 (ISSN:02864886)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.19-32, 2016-04-28 (Released:2017-02-10)
参考文献数
49

This study examines the centrality and connectivity of major cities in Japanese urban system through relationships of corporate offices. After analysis of data concerning listed companies of five industrial sectors (textile products, chemicals, iron and steel, electric appliances, and transportation equipment) in 1985 and 2009, the following findings were obtained. Japanese inter-city network indicated that Tokyo, Osaka, and Nagoya had a significantly high degree of centrality. The degree of centralities of major core cities such as Sapporo, Sendai, Hiroshima, and Fukuoka were also high, but the disparity in their centralities was seen. Allocation patterns of branch offices ware different by sector, but branch arrangement patterns of company were quite similar within a same sector. Therefore, the inter-city relationships differ by sector.