著者
興梠 健作 矢野 隆郎 山内 弘一郎 河野 太郎 竹智 義臣 恒吉 勇男
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.175-181, 2012-04-15 (Released:2012-06-12)
参考文献数
17

近年小児領域でも,蘇生後脳症に対する脳低温療法が注目されているが,目標温度や維持期間等の冷却方法に関して,未だに一定の見解は得られていない。今回心肺蘇生後偶発性低体温症を合併した,溺水蘇生後脳症の6歳の男児に対し,脳温34℃から復温を緩徐に行った。患児の最大予測心肺停止時間は30分で,心拍再開6分後に自発呼吸が出現し,40分後に対光反射を認めた。来院時直腸温は31℃,ICU入室前に33.9℃まで復温したが,以後は前額深部温度を脳温としてモニターし,水冷式ブランケットを使用して11日かけて34℃から36℃台に復温した。18日後に人工呼吸器から離脱し,6か月後には自力で経口摂取,歩行,単語の発語が可能となった。本症例は,偶発性低体温症となった溺水蘇生後脳症の小児症例であり,長期神経学的予後の面から,34℃からの緩徐な復温を用いた体温管理が有効であった可能性がある。
著者
東矢 俊一郎 右田 昌宏 興梠 健作 舩越 康智 末延 聡一 齋藤 祐介 新小田 雄一 比嘉 猛 百名 伸之 唐川 修平 武本 淳吉 古賀 友紀 大賀 正一 岡本 康裕 野村 優子 中山 秀樹 大園 秀一 本田 裕子 興梠 雅彦 西 眞範
出版者
日本小児血液・がん学会
雑誌
日本小児血液・がん学会雑誌 (ISSN:2187011X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.132-137, 2021

<p>【背景】2020年に始まったCOVID19のパンデミックは長期化の様相を呈し,人々の生活様式を一変させた.小児がん患者家族および医療者も同様であり,感染による重症化を回避するため,十分な対策のもとに原疾患治療を進めている.【方法】九州・沖縄ブロック小児がん拠点病院連携病院に,(COVID19,第1波後)2020年6月および(第2波後)9月の2回にわたり,①COVID19の経験,②診療への影響,③患者および医療従事者への社会的・精神的影響につき調査を行い,毎月施行されている拠点病院連携病院TV会議において議論した.【結果】2020年6月は16施設,9月は17施設から回答を得た.COVID19感染例はなかった.原疾患治療の変更を余儀なくされた例では転帰への影響はなかった.全施設で面会・外泊制限が行われ,親の会,ボランティア活動,保育士・CLS,プレイルーム・院内学級運営にも影響が生じた.多くの患者家族に精神的問題を認め,外来患者数は減少,通学に関する不安も寄せられた.6施設で遠隔診療が行われた.第1波から第2波にかけて制限は一部緩和され,外来受診者数も元に戻りつつある.【まとめ】COVID19パンデミックにより,小児がん患者にはこれまで以上の精神的負担がかかっている.小児における重症化は稀だが,治療変更,中断による原疾患への影響が懸念される.十分な感染対策を行いながら,少しでも生活の質を担保できるよう,意義のある制限(および緩和),メンタルケアおよび情報発信が求められる.</p>