- 著者
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河野 太郎
- 出版者
- 一般社団法人 日本原子力学会
- 雑誌
- 日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
- 巻号頁・発行日
- vol.54, no.5, pp.342-345, 2012 (Released:2019-10-31)
わが国の「核燃料サイクル」には,全く合理性がない。プルトニウムを燃やすための高速増殖炉は,政府の建て前でも導入目標は2050年になる。その原型炉である「もんじゅ」は,40年以上の歳月と1兆円以上の費用をつぎ込んで,今も運転すらできない。わが国は使用済み核燃料の再処理を英仏2カ国に委託してきたが,既に抽出されたプルトニウムは45トンに達し,高速増殖炉の目途もたたないなかで,その利用ができない。日本のいくつかの原子力発電所では,使用済み核燃料プールが容量一杯になりつつあり,六ヶ所村の再処理工場は,トラブルが続き稼働できない。もし再処理工場が稼働すれば,処理できないプルトニウムが増え,再処理工場が稼働できないなかで現在の政策を続ければ,遅かれ早かれ使用済み核燃料プールが溢れて原発が止まる。そして核燃料サイクルの最大の問題は,核のゴミの処分だが,全く目途がたっていない。