著者
舟山 眞人 山田 文夫 Masati Funayama Fumio Yamada
出版者
東北大学歯学会
雑誌
東北大学歯学雑誌 (ISSN:02873915)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.13-17, 1987-06-01

当教室において身元不明として剖検された死体の中から, 歯科所見を基に身元が確認された最近の3事例を報告する。第1例は220mの海底から引き上げられた男性死体で, 付近海域に沈没した海洋調査船の乗組員の可能性があった。死体上顎の一部に歯列不正(転位歯)がみられ, これがこの調査船の一人の乗組員の顔写真にも写っていた。更にパノラマ写真などとも照らし合わせた結果, 身元が確認された。第2例は山の沢で発見された若い女性の死体で, 3年間手懸りが掴めなかった。しかし, 県内に住む人からの娘の捜索の届出が発端となり, この娘が受診したことのある2歯科医の診療録と剖検時の観察所見とを照合したところほぼ一致したため, この人の娘であると確認された。第3例は外国人専用旅館の焼け跡から発見された焼死体で, 歯科所見と歯型の石膏模型を大使館経由で疑いが持たれた人の国に送ったところ, その人を治療した歯科医によって一致していることが確認された。