- 著者
-
芦田 明
- 出版者
- 一般社団法人 日本血栓止血学会
- 雑誌
- 日本血栓止血学会誌 (ISSN:09157441)
- 巻号頁・発行日
- vol.31, no.1, pp.37-44, 2020 (Released:2020-02-22)
- 参考文献数
- 29
溶血性尿毒症症候群(hemolytic uremic syndrome: HUS)は破砕赤血球を伴う微小血管症性溶血性貧血(microangiopathic hemolytic anemia: MAHA),血小板減少症,急性腎傷害(acute kidney injury: AKI)を3主徴とし,小児期においてはその大半が志賀毒素産生性腸管出血性大腸菌感染症に続発する.我が国では感染症法により本感染症は三類感染症に指定され,全例届け出義務があり,その集計より年間感染者数は3,000~4,000名で,100件程度がHUSを発症することが明らかとなっている.近年の傾向として従来,HUSを続発する血清型は主にO157:H7であったが,O157以外の血清型による症例が増えており感染の確定診断の際には注意を要する.HUSの診断は3主徴の有無により行い,治療は支持療法が主体となる.志賀毒素産生性溶血性尿毒症症候群発症に関する補体系の関与も報告されているが,補体制御薬の効果は確認されていない.基礎,臨床双方の面からのさらなる検討が必要である.