著者
芦田 明
出版者
一般社団法人 日本血栓止血学会
雑誌
日本血栓止血学会誌 (ISSN:09157441)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.37-44, 2020 (Released:2020-02-22)
参考文献数
29

溶血性尿毒症症候群(hemolytic uremic syndrome: HUS)は破砕赤血球を伴う微小血管症性溶血性貧血(microangiopathic hemolytic anemia: MAHA),血小板減少症,急性腎傷害(acute kidney injury: AKI)を3主徴とし,小児期においてはその大半が志賀毒素産生性腸管出血性大腸菌感染症に続発する.我が国では感染症法により本感染症は三類感染症に指定され,全例届け出義務があり,その集計より年間感染者数は3,000~4,000名で,100件程度がHUSを発症することが明らかとなっている.近年の傾向として従来,HUSを続発する血清型は主にO157:H7であったが,O157以外の血清型による症例が増えており感染の確定診断の際には注意を要する.HUSの診断は3主徴の有無により行い,治療は支持療法が主体となる.志賀毒素産生性溶血性尿毒症症候群発症に関する補体系の関与も報告されているが,補体制御薬の効果は確認されていない.基礎,臨床双方の面からのさらなる検討が必要である.
著者
芦田 明美
出版者
神戸大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012-04-01

本年度は、これまでの研究成果をまとめ、博士論文執筆に専念し学位論文の提出に至った。本研究により明らかになった結果を以下に記す。1)共分散構造分析による修学阻害要因の検討から、子どもたちは家庭や社会背景に関わる要因が背景となって毎日の修学を続けることが困難になり、突如学校に通うことを辞め、低い教育達成へと繋がることが分かった。また、現在の職業と初等教育の修了有無には明確な関連性が見られなかった。すなわち、最低限の読み書きができればそれ以上の学年を修了するインセンティブがこの地域にはなく、留年の有無にかかわらず子どもたちは学校を辞めてしまう。2)教育開発戦略および政策、プロジェクトの分析から、諸政策は先の初等教育修了阻害要因について触れているものの、具体的な方略や指針などは提示していない。他方、プロジェクトは諸要因に触れ、具体的な活動も提示し実施している。対象地域で実施されたプロジェクトは、修学の継続に貢献し得ると考えられるが、これまでの諸政策およびプロジェクトは、留年を繰り返し退学してしまう子どもたちを想定しており、すぐに学校を辞めてしまう子どもたちの存在は考慮されていない。3)修学実態年代推移の分析から、修学状況は改善傾向にあることが分かった。他方、問題として残っているのは、1990年代前半入学グループから1990年代後半入学グループにかけての、年度末評価における落第の減少の頭打ちである。さらに、1980年代後半入学者には、留年が一度あるか無いか程度の卒業パターンと、入学後1年ないしは2年未満で学校を去る退学パターンが共存する、Enrollment Divideとも呼ぶべき修学実態が見受けられた。しかし、年度が新しくなるほど卒業パターンは増加傾向にあり、退学パターンは減少傾向にある。1年生の状況は他の学年よりも相対的に望ましい状態になく、特に入学初年度1年生は深刻である。
著者
芦田 明 村田 卓士 田中 英高 玉井 浩
出版者
一般社団法人日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.38, no.6, pp.443-448, 1998-08-01

大阪府堺市で発生した病原性大腸菌O157 : H7集団食中毒では, 続発して100名を超える患者が溶血性尿毒症症候群に罹患した.当科に搬送された患者の両親に対しアンケート調査を, 看護婦に対し聞き取り調査を実施し, 入院中の治療環境に対する認知を検討した.その結果, (1)病院転送時に, 患者側に病院を選択する余裕はなく, 家族は自宅より病院まで遠くても仕方がないと考えていた.(2)同一疾患患者を一大部屋に収容したことは, 患者間および保護者間ともに連帯感が生じ, 心理的サポートが得られた.(3)他疾患で入院している患者および家族からの感染に対する不安は少なく, 適切な感染防止処置がとられていれば, 一般病棟内で治療を行っても, 大きな混乱には陥らないことが明らかとなった.