著者
五十嵐 俊成 花城 勲 竹田 靖史
出版者
日本応用糖質科学会
雑誌
Journal of Applied Glycoscience (ISSN:13447882)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.5-12, 2008 (Released:2008-04-03)
参考文献数
47
被引用文献数
5 6

澱粉の分子構造と糊化特性を北海道米「ほしのゆめ」,「きらら397」,「彩」を秋田米「あきたこまち」と比較して解析した.北海道米3品種の澱粉の結晶型はCa型,「あきたこまち」はA型を示した.真のアミロース含量は,「ほしのゆめ」,「きらら397」が18%で「彩」,「あきたこまち」より約2%高かった.RVAによる熱糊化特性は「ほしのゆめ」,「きらら397」で最高粘度が低く,ブレイクダウンが小さく,冷却時の粘度増加が高いが,「彩」,「あきたこまち」は最高粘度が高く,冷却時の粘度増加は低かった.アミロースのヨウ素親和力は「ほしのゆめ」,「きらら397」が約19で「彩」,「あきたこまち」よりわずかに小さく,数平均重合度(DPn)は「ほしのゆめ」と「きらら397」が「あきたこまち」とほぼ同じ(~900)で,「彩」(~1000)がやや大きかった.平均鎖数は2~3であった.数分布は北海道3品種とも「あきたこまち」より広かった.アミロペクチンのヨウ素親和力は「ほしのゆめ」,「きらら397」が0.5で,「彩」,「あきたこまち」より2.5倍高く,DPnは「あきたこまち」(9400)が最も大きく,「彩」(7600)が最も小さかった.平均鎖長は北海道3品種が19で「あきたこまち」より1-2残基短く,β-アミラーゼ分解限度は「あきたこまち」よりわずかに高かった.アミロペクチンLC含量は,「ほしのゆめ」と「きらら397」は「あきたこまち」に比べて約3.5倍であった.以上のことから,「彩」は見かけのアミロース含量が「あきたこまち」と同じ程度で,他の北海道品種に比べ冷却時の粘度増加も改善されているが「あきたこまち」よりも高く,熱糊化特性の差異の要因としてアミロース分子量分布やアミロペクチン鎖長分布の影響が示唆された.したがって,今後の良食味育種では低アミロース含量の選抜に加えて澱粉の分子構造に着目し,特にアミロペクチン超長鎖(LC)の少ない品種選抜が必要と考えられる.
著者
三ツ井 敏明 高橋 秀行 花城 勲 黒田 昌治 木下 哲
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究課題では、高温登熟玄米のプロテオームと澱粉グライコーム解析を行い、玄米白濁化は澱粉合成と分解のバランス異常が原因であると結論づけた。また、玄米外観品質に及ぼす強光・高CO2および高温・高CO2の影響を調べたところ、開花から登熟期初期において感受性が高いことが明らかになった。ただし、高CO2条件のみでは顕著な玄米白濁化は起こらないが、高CO2は高温ストレスを助長することが分かった。イネの高温耐性に関して鍵となる酵素としてMn型スーパーオキシドジスムターゼ(MSD1)が同定され、MSD1遺伝子の強発現により高温登熟性が改善され、一方、その発現抑制によって高温感受性が高まることが確認された。