著者
三浦 励一
出版者
京都大学
巻号頁・発行日
2001-03-23

新制・論文博士
著者
三浦 励一 小林 央往 草薙 得一
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.271-278, 1996-02-09 (Released:2009-12-17)
参考文献数
19
被引用文献数
2 2

京都付近では畑雑草コハコベは春から秋にかけて耕起のたびに発生するが, 人里植物であるミドリハコベは秋期にのみ発生する (前報)。このような発生消長の差異をもたらす種子休眠性および発芽特性の差異を知るため, 両種の種子を7月から野外地表, 野外土中, 実験室内の恒温乾燥 (10,20,30℃) および恒温土中 (10, 20, 30℃) の各条件下で保存し, 定期的に発芽試験を行った。発芽試験は通常15℃明・暗条件で行い, 実験開始時と2ヵ月間保存後 (9月; 発生始期に相当) には温度の影響を調べるため5~30℃のそれぞれ明・暗条件で行った。1) 実験開始時にはコハコベ, ミドリハコベとも全く発芽せず, 一次休眠の状態にあることが示された。2) 野外地表区のコハコベ種子では休眠覚醒が遅く, 光発芽性は顕著でなかった (Figs. 2, 4)。地表で夏から冬まで経過したときの累積発芽率は30%以下であった (Fig. 3)。野外埋土区では速やかに休眠覚醒して著しい光発芽性を示し, 発芽適温域は5~25℃と広かった (Figs. 2, 4)。3) ミドリハコベ種子は野外地表区・埋土区のいずれにおいても比較的速やかに休眠から覚醒したが, 発芽適温域は5~20℃とやや狭かった (Figs. 2, 4)。野外地表区の種子は秋期にその場で発芽し, 累積発芽率は82%となった (Fig. 3)。4) コハコベ種子の室内の恒温乾燥区における休眠覚醒はきわめて遅く, 光発芽性は認められなかった (Figs. 5, 6)。恒温埋土区では速やかに休眠覚醒して著しい光発芽性を示した (Figs. 5, 6)。5) ミドリハコベ種子の室内の恒温乾燥区および埋土区における休眠覚醒の様相は後者でやや光発芽性が認められたほかはよく似ており, いずれも高温 (30℃) で促進され, 低温 (10℃) では遅かった (Figs. 5, 6)。
著者
伊藤 幹二 伊藤 操子 田中 聡 三浦 励一 安斎 達雄 Onen Huseyin
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.176-183, 2005-09-26 (Released:2009-12-17)
参考文献数
6
被引用文献数
6 4

土壌処理剤によるワルナスビの制御法を確立する目的で, 以下の実験を行った。畑地におけるワルナスビの発生は, 耕起によって切断された根片繁殖系からの萌芽によることから, まず畑地で汎用される除草剤アトラジン, アラクロール, ブタミホス, クロロプロファム, トリフルラリン, ペンディメタリンからワルナスビ根片萌芽抑制効果のあるものを, 根片浸漬処理によって選抜した結果, クロロプロファムが最も有効であることが分かった。次にトウモロコシ畑 (土壌:壌土)においてクロロプロファムを播種直前に0.46, 0.92および1.37kg a. i./ha土壌混和処理し, 埋土しておいたワルナスビ根片からの出芽・生長に及ぼす効果を調べたところ, 5~10cm深に埋土した根片については, 出芽は阻害されなかったが, 生長は0.46kg a. i/ha処理でも抑制され, 抑制はとくにシュートの生長において顕著であった。20~25cmに埋土した根片では, 逆に出芽は阻害されたがシュートの生長の抑制は小さかった。ワルナスビ根片からの萌芽・生長に対するクロロプロファムの土壌混和処理効果は, 土壌の種類により著しく異なり, 砂壌土>黒ボク土>埴壌土>壌土であった。クロロプロファムは高い揮発性によって土壌中に拡散し, 処理層を形成する特徴をもつことから, 効果の差には土壌の孔隙率が関係していると推察された。
著者
田中 聡 三浦 励一 冨永 達
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.7-16, 2008 (Released:2009-03-31)
参考文献数
46
被引用文献数
2 2

都市内の公園などの公共用芝地に出現する草種と土壌要因との関連の基礎的知見を得ることを目的として,京都市内の公共用芝地80地点において植生調査および土壌調査をおこなった。土壌要因として,土壌水分含量,土壌硬度,土壌pH,全窒素,可給態リン酸,各種水溶性イオン(硝酸イオン,リン酸イオン,硫酸イオン,カルシウムイオン,カリウムイオンおよびナトリウムイオン)および活性アルミニウムを分析した。植生データの解析は5月に調査した13地点分(春期)および8,9月に調査した22地点分(夏期)についておこなった。春期には38草種が出現し,スズメノカタビラおよびシロツメクサの出現頻度が高かった。正準対応分析(CCA)の結果,草種の分布は土壌硬度,土壌含水率,水溶性イオン(硫酸,リン酸およびカリウム)との対応関係が強かった。夏期には52草種が出現し,アキメヒシバおよびメヒシバの出現頻度が高かった。CCAの結果,草種の分布は土壌要因との対応関係が明瞭ではなかった。除歪対応分析(DCA)の結果,芝地の衰退に複数の要因の存在が示唆された。
著者
田中 樹 真常 仁志 三浦 励一
出版者
総合地球環境学研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

西アフリカの砂漠化地域において、「危機の年」と対処行動の特定、在来の情報技術伝播経路の解明、対処技術の開発を行なった。その技術は、風食抑制と収量向上を可能とする「耕地内休閑システム」、生計向上と水食抑制に有効な「ザイ+アンドロボゴン草列」および従来の普及法の大幅な改善と社会的弱者層の可視化を可能とする「社会ネットワーク手法を用いる技術普及法」である。一部の技術は、ニジェール国内で普及段階に至った。
著者
汪 光煕 三浦 励一 草薙 得一
出版者
日本植物分類学会
雑誌
植物分類・地理 (ISSN:00016799)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.55-65, 1995-07-28
被引用文献数
4

ミズアオイは東アジアに分布する抽水性の一年草であり, 水田, 水路, 多湿地などに多い。本研究では中国の黒龍江省, 吉林省, 遼寧省と日本の福井県三方郡の自然集団および京都大学付属農場の人工集団で, 水田雑草ミズアオイの花の形態と送粉様式について検討した。ミズアオイの花には雄蕊が6個ある。5個は小さくて葯は黄色, 1個は大きくて葯は花被片と同じ青紫色である。両方とも稔性のある花粉をつくる。その花には鏡像二型性が見られる。即ち, 花から見て大雄蕊が右側, 柱頭は左側に位置するもの(L型)と, 反対に大雄蕊が左側, 柱頭は右側に位置するもの(R型)がある。L型の花とR型の花は花序の各分枝上に交互に付く。主要な訪花昆虫は二ホンミツバチ, クマバチおよびマルハナバチ類であった。これらのハチが訪花した場合, 大雄蕊と柱頭は昆虫の体の左右対称の位置に接触する。従って, 異花受粉は異型花の間で起こりやすく, 同型花の間では起こりにくいことが予想される。また, 大雄蕊が青紫色をしているのは他殖用の花粉を昆虫に食料として持ち去られないための適応であると考えられる。黄色い小雄蕊は昆虫を引きつける目印であり, また, ミズアオイの花には蜜腺がないので, 小雄蕊の花粉は昆虫への報酬でもある。さらに, 昆虫が訪れない場合でも, 柱頭の上方に位置する小雄蕊によって自花受粉で種子をつくることができる。ミズアオイ集団内の虫媒による異花受粉は隣花受粉(同株同花序異花受粉, 同株異花序受粉)と他家受粉(同集団異株受粉)との様式がある。同一個体上に同時に異なる型の花が咲いた場合は隣花受粉が起こり得るので, ミズアオイの花の鏡像二型性は自殖回避の機構としては不完全である。しかし, 一個体に同時に咲く花の数が多くない場合には有効に他殖を促進する可能性がある。