- 著者
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草野 源次郎
芝野 真喜雄
渡辺 斉
尾崎 和男
- 出版者
- 公益社団法人日本薬学会
- 雑誌
- 藥學雜誌 (ISSN:00316903)
- 巻号頁・発行日
- vol.123, no.8, pp.619-631, 2003-08-01
- 参考文献数
- 37
- 被引用文献数
-
4
9
重要薬用資源のウラルカンゾウとスペインカンゾウ(マメ科)について,その優良品種候補を選抜し,国産甘草を実現することを目標にこの研究を開始した.現在研究は進行中であり,目標達成には困難な問題が山積している.しかし,優良品種の候補は選抜できたと結論するに至ったので,現在まで蓄積した知見をまとめて報告する.日本薬局方第14局では,生薬カンゾウ(甘草)Glycyrrhizae RadixはGlycyrrhiza uralensis FisherまたはG.glabra Linneの根及びストロン(走出茎)で,ときには周皮を除いたもの(皮去り甘草)で,グリチルリチン(グリチルリチン酸)2.5%以上を含むと規定されている.前者は中国東北部,中北部,西北部,あるいはモンゴルに自生し,後者は中国西北部,中東,ヨーロッパ諸国,旧ソ連の一部に自生している.甘草の大部分は自生種を採集して調製しているが,乱獲による砂漠化が大きな社会問題になっている.そこで,一部には自生種を計画的に管理する方式の栽培,あるいは種苗からの栽培が試みられている.4)また,わが国の製薬企業によるオーストラリアでの本格的な栽培も行われている.中国政府は2年半前に甘草の輸出禁止令を布告するとともに,甘草の取り扱いを許可制にした.中国ではわが国及び諸外国の数社が参画する形で,付加価値を高めるための製品化も進み,中国から生薬としての甘草輸出は激減している.甘草輸出における最低価格制も噂されている.このことは周辺諸国にも影響を与え,モンゴルにおける乱獲など甘草を取り巻く事情は予断を許さない状況にある.以上の考察から国内で消費する甘草のうち,数%を目標に国産甘草の生産を現実のものにするのが重要であると考えた.国産甘草の生産を試みるために,わが国の環境下で検討することにした.国内生産を目的とする研究では,種苗を外国に依存することは新たな問題を起こす心配がある.そこで,この研究では国内薬用植物園から長年植栽された種苗の分与を受けた.すなわち,これらの中からわが国の環境に適応した種の選抜が期待できると考えたからである.