著者
静 雅彦 長田 乾 柚木 和太 荒木 五郎 水上 公宏
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.2, no.3, pp.255-261, 1980-09-25 (Released:2009-09-03)
参考文献数
12
被引用文献数
3 4

CTによって視床出血と診断した71例の神経症状, 特に視床出血に特徴的とされている眼症状と血腫の拡がりとの関連を明らかにした.さらに予後との関連についても検討を加えた.1) 脳出血のうち視床出血は35, 4%であった.2) 血腫の大きさによりA群からD群の4群に分け, さらに血腫の拡がりにより脳室内出血のない限局型, 脳室内出血少量型, 脳室内出血多量型の3型に分類した.3) 視床出血の片麻痺で特徴的なことは, 手指の麻痺が軽度である視床不全片麻痺thalamic hemiparesisを呈することである.4) 瞳孔は縮瞳傾向を示し, 2.5mm以下の大きさのものが大多数であった.脳室内出血のある症例では瞳孔不同, 内下方視, 対光反応消失が高頻度にみられる.5) 予後不良の徴候として意識障害の外に4.0cm以上の血腫, 脳室内出血多量, 病巣側の瞳孔が大きい瞳孔不同, 共同偏視, 開散外方視があげられる.computed tomography (CT) の出現により,高血圧性脳出血 (脳出血) の部位および,その拡がりを正確に診断できるようになった.したがって,これまで剖検所見に基づいて行われてきた出血の部位別頻度や神経症状の解析は臨床例を対象とした場合とは大きく異なることも考えられる.また脳出血の予後についても正確に判断し得るようになり,従来とはかなり異なった成績が得られている.本報告ではCTによって視床出血と診断した症例の神経症状,特に視床出血に特徴的とされている眼症状と血腫の拡がりとの関連を明らかにする.さらに予後との関連についても検討を加えた.