著者
荒瀬 尚
出版者
大阪大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2013-04-01 (Released:2013-05-15)

MHCクラスII分子は様々な自己免疫疾患の感受性に最も強く関与している分子である。しかし、特定のMHCクラスII分子がどのように疾患感受性を決定するかは長年明らかになっていない。一方、我々は、細胞内のミスフォールド蛋白質を細胞外へ輸送する分子としてMHCクラスII分子を同定した。さらに解析を進めることによってクラスIIに提示されたミスフォールド蛋白質は、抗原特異的なB細胞を活性化する。そこで、関節リウマチや抗リン脂質抗体症候群等の自己免疫疾患で認められるいくつかの自己抗体を解析すると、それらは、MHCクラスII分子に提示されたミスフォールド蛋白質(抗体重鎖やβ2グライコプロテインI)に対して高い親和性を示すことが判明した(Jin et al. PNAS 2014, Tanimura et al. Blood 2015)。さらに、MHCクラスII分子に提示されたミスフォールド蛋白質に対する自己抗体の結合性は、MHCクラスII分子による関節リウマチ等の自己免疫疾患の感受性と高い相関を示すことが判明した(Jin et al. PNAS 2014)。これらのことから、細胞内のミスフォールド蛋白質がMHCクラスII分子によって、細胞外へ輸送されると、その複合体が異物として異常な免疫応答を誘導するのではないかという今までに考えられてきたのとは異なる新たな自己免疫疾患の発症機構が明らかになった。すなわち、MHCクラスII分子に提示されたミスフォールド蛋白質は、自己抗体の標的分子として、自己免疫疾患の発症に関わるという新たな自己免疫疾患の分子機序が明らかになった。
著者
荒瀬 尚 香山 雅子 末永 忠広 平安 恒幸
出版者
大阪大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01 (Released:2014-07-25)

我々は、ミスフォールドしたMHCクラスI分子を細胞外へ輸送する分子としてMHCクラスII分子をクローニングした。そこで、他の蛋白質を解析したところ、卵白リゾチームや抗体の重鎖、さらに、リポ蛋白質の一つであるβ2GP1がMHCクラスII分子に結合することで、細胞外へ輸送され、関節リウマチや抗リン脂質抗体症候群で産生される自己抗体の特異的な標的抗原になっていることが判明した。一方、ミスフォールド蛋白質輸送分子を明らかにするために、細胞表面のミスフォールド蛋白質に会合している分子の検索を行った。その結果、質量分析によって、いくつかの候補分子が同定された。
著者
荒瀬 尚
出版者
大阪大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010 (Released:2010-08-23)

マラリアの制御には宿主免疫応答が非常に重要な役割を担っている一方、マラリア原虫には様々な免疫制御機構が存在すると考えられている。一方、我々は、持続感染するヘルペスウイルス等のウイルスには抑制化レセプターを介した免疫逃避機構が存在することを明らかにしてきた。しかし、ウイルスと同様に宿主免疫機構と密接な相互作用をするマラリア原虫に同様な分子機構が存在するかどうかは明らかになっていない。そこで、本研究では、マラリア原虫による抑制化レセプターを介した新たな免疫逃避機構を追求した。その結果、マラリア原虫感染赤血球に抑制化レセプターのリガンドが発現していることが明らかになった。さらに、リガンド分子の同定を試みたところ、マラリア原虫由来の分子がリガンドであることが判明し、マラリア原虫の新たな免疫逃避機構であると考えられた。