著者
荒賀 直子 白石 安男 元永 拓郎
出版者
順天堂大学
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.508-518, 2002-03-22

アトピー性皮膚炎患児(以下AD患児と略)を養育している母親からの日常生活に関わる多様な訴えの奥にある育児に関する不安や心配を理解し,母親への心理面への支援をおこなうことは母親の心身の健康維持に重要であり,児のADの改善に良い影響を与えると考えられる.これらのことを踏まえてAD患児の母親の心理面への支援に必要なことを検討する目的でADと診断されている3,4,5歳児の母親44名を対象に,育児に関する不安項目・日本版STAI(State-Trait Anxiety Inventory)・その他の項目を用いてADではない3,4,5歳児の母親108名との比較により分析・検討した.その結果,本研究の対象となったAD群の母親,対照群の母親共に育児に関する不安要因は特性不安に関連する<児の年齢>・<就業>・<私は生き生きと育児している>・<気が滅入ることがよくある>・<とても心配性であれこれ気に病む>の5項目と状態不安に関連する<夫と一緒に育児していると感じる>・<同居家族数>の2項目であった.AD群の母親では児の年齢が上がること,母親が就業していることは不安を大きくし,同居家族数が多いことは不安を小さくし,また母親の心的状況は,不安はありながらも夫と協力して生き生きと育児をしており,夫と協力し不安なく生き生きと育児をしているが気がかりや心配があり不安が大きい対照群との相違が明らかになった.これらのことからAD群の母親の心理面への支援には重要他者(夫・医師など)との良好な関係が必要であることが示唆された.
著者
服部 律子 荒賀 直子
出版者
日本小児保健協会
雑誌
小児保健研究 (ISSN:00374113)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.597-606, 1995-09-25
参考文献数
16
被引用文献数
5
著者
山口 忍 荒賀 直子
出版者
順天堂大学
雑誌
順天堂医療短期大学紀要 (ISSN:09156933)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.33-40, 2000-03-29

看護職を選択する人に共依存傾向があるといわれていることから,看護を選択した女子学生129名と,看護以外の学科を選択した女子学生134名を対象に,今後の学生指導に役立てることを目的として,学生本人の育てられ方や共依存傾向の実態を調査し,以下の知見が得られた。1.看護学生と看護以外の学生の入学直後の生活背景では,大きな差はなかった。2.入学時では看護学生と看護以外の学生の,共依存傾向に大きな差はみられなかった。3.看護学生と看護以外の学生の,母親の育児姿勢と,本人の共依存傾向の関連はなかった。4.看護学生の,看護職を選択した理由を,共依存的群と非共依存的群に分類し,母の育児姿勢,本人の共依存傾向について比較した結果,共依存的群の得点が有意に高かった。
著者
山口 忍 丸井 英二 斉藤 進 荒賀 直子
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.468-476, 2007-09-30 (Released:2014-11-12)
参考文献数
29

目的: 1歳児をもつ母親の育児困難感の有無を把握し, 母子の属性と育児困難感の関連を明確にする. 対象: 千葉県内の協力が得られた2市に在住する1歳児をもつ全母親910名 方法: 2005年10月に無記名自記式質問紙による郵送調査を実施した. 育児困難感がある母親の把握には母子愛育会日本子ども総合研究所が作成した子ども総研式育児支援質問紙1歳児用を使用した. 結果: 分析対象は有効回答が得られた362名 (39.8%). 育児困難感がある母親は21.0% (76名) であった. その内, 育児困難感I. IIともにもっとも強いランク5である面接相談が必要とされる母親は4.4% (16名) であった. 育児困難感がない母親は79.0%で, その内訳では全くなしが45.0%であった. 母の属性7項目との関連では, 妊娠中に異常があった母親と関連がみられた (p<0.05). 子どもの属性7項目との有意な関連はなかった. 結論: 育児困難感がある母親は21%であり2000年の川井らの報告と比較して増加していた. また, 妊娠中に異常があった母親は育児困難感を持つことが明確になった. 今後は育児困難感軽減に向けた取り組みの充実が急務であり, そのためには妊娠中からの予防方法の開発, 汎用性がある育児困難感尺度の開発が必要である.