著者
荒金 英樹
出版者
日本外科代謝栄養学会
雑誌
外科と代謝・栄養 (ISSN:03895564)
巻号頁・発行日
vol.52, no.6, pp.317-323, 2018-12-15 (Released:2019-02-01)
参考文献数
35

がん患者の栄養障害の原因は栄養の摂取不足による飢餓と栄養の利用障害である悪液質があり,前者は適切なアセスメントと栄養補給により改善が期待されるが,後者の悪液質は通常の栄養療法での改善は困難で病状の進行とともに悪化し,いかなる栄養療法も対応困難な不応性悪液質に至る.この悪液質は炎症による複合的な代謝障害であり,骨格筋を優先的に障害することから運動療法の役割は大きく,悪液質またはその前の段階である前悪液質の時期では,がんやがん治療による身体諸症状に対する改善効果が期待されている.こうした介入も運動療法,栄養療法の単独での効果は難しく,リハビリテーション栄養の概念に基づく多職種による複合的な介入が求められる.しかし,病状の進行により不応性悪液質に至った患者でのこれらの介入は患者の症状を悪化させる可能性があり,漫然と継続するのではなく,その目的を明確にし患者・家族の負担と利益のバランスを念頭に置き,適切なケアを選択することを心がけるべきである.
著者
荒金 英樹 巨島 文子 神山 順 豊田 義貞 堀 哲史 松本 史織 八田 理絵 仁田 美由希 山田 圭子 樋口 眞宏 山口 明浩 草野 由紀 関 道子 永見 慎介 華井 明子 竹浪 祐介 森野 彰人 樹山 敏子 和田 智仁 村田 篤彦
出版者
一般社団法人 日本静脈経腸栄養学会
雑誌
日本静脈経腸栄養学会雑誌 (ISSN:21890161)
巻号頁・発行日
vol.30, no.5, pp.1095-1100, 2015 (Released:2015-10-20)
参考文献数
15
被引用文献数
1

京都では食を支える地域作りを目的に様々な連携体制の構築に取り組んでいる。医科歯科連携体制として「京都府口腔サポートセンター」、京都市山科区での多職種連携を目指した「山科地域ケア愛ステーション」、京都府、滋賀県での食支援を目的とした「京滋摂食嚥下を考える会」を紹介する。京滋摂食嚥下を考える会では地域連携の基盤として嚥下調整食共通基準の導入と独自に作成した「摂食・嚥下連絡票」を提案、京都府基準として関連職能団体等の承認を得た。この基盤を背景に、地域連携を促進するため、研修会や調理実習を各地で開催している。また、京料理をはじめとした京都の伝統食関連産業の団体と連携し、介護食を地域の食文化と発展させる活動も展開している。平成27年度からは京都府医師会などの職能団体の協力のもと、府内各地での多職種、施設間連携を促進させるため、市民向けの食支援相談窓口を設置、府民の食支援と啓蒙活動を計画している。
著者
荒金 英樹 西村 敏 兼子 裕人 仁丹 裕子 浦底 美由希 増田 哲也 北岡 陸男 廣瀬 遼子
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.643-647, 2008 (Released:2009-04-30)
参考文献数
19
被引用文献数
1

症例は79歳女性。原因不明の意識障害で他院入院中、褥創の悪化、意識レベルの低下から当院転院となる。BMIは 14.6kg/m2、栄養補給は胃切除後から腸瘻より施行されていた。入院時血清銅値は正常であったが低亜鉛、高炭酸ガス血症を認め、プルモケア®にポラプレジンクを併用した栄養療法を開始、8週間後にポラプレジンクは併用のまま亜鉛、銅含有栄養剤を投与したが、6週間後に腸瘻周囲皮膚炎の悪化からTPNへ変更した。変更直後から白血球、好中球数の減少を認め、TPN開始8週後には白血球数1910/μL、好中球数343/μL、血清銅濃度は8μg/dLと低下していた。TPNに微量元素製剤添加したところ急速に好中球は増加、貧血も改善した。TPN開始から短期間で銅欠乏症が発生したことから、銅非含有栄養剤投与に加え、EN施行中の亜鉛負荷による銅吸収阻害が関与した可能性も考えられた。長期経管、経静脈栄養の際には、微量元素に留意する必要があり、その配合比率も検討が必要であると考えられた。
著者
荒金 英樹
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.851-856, 2014 (Released:2014-06-23)
参考文献数
6
被引用文献数
2

超高齢社会の到来に伴い食支援を必要とする高齢者は急増、多くの病院でその対策が急務とされている。当院では摂食量が少ない患者に対し独自に作成したアセスメントシートを利用し、多職種による食欲不振の原因の検討と介入を行っている。こうした要因の幾つかは病院だけで解決は難しく、中でも摂食・嚥下障害は地域での継続した支援が必要とされる。京都府、滋賀県で栄養サポート、摂食・嚥下障害に取り組まれている多職種が集い「京滋摂食・嚥下を考える会」が組織され、嚥下調整食の共通基準や摂食・嚥下連絡票を作成、地域での食支援の体制づくりの活動をしている。また、京料理や和菓子、茶、食器などの地元の食産業の協力を得ながら、一般市民へ介護食の理解を促し、介護食を食文化へと高める活動も行っている。こうした医療、介護の枠を越えた地域作りは、患者のみならず周囲の人々、地域のQOLを高める食支援に繋がると考える。
著者
荒金 英樹 井口 美保子 見越 志麻 仁田 美由希 松本 史織 閑 啓太郎 北川 一智 宮川 淳 徳地 正純 宮本 保幸
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.27, no.6, pp.1381-1385, 2012 (Released:2012-12-17)
参考文献数
8
被引用文献数
1

京都府歯科医師会による口腔サポートセンター事業は歯科の併設されていない病院、施設へ歯科チームを派遣し、病院、施設、在宅間の継続した歯科治療、口腔ケアを目的に設立、当院でも2008年より介入が開始された。当院での口腔サポートセンターの活動状況と看護師への意識調査を行ったので報告する。口腔サポートセンターへの依頼は2012年4月現在250名、平均年齢は79.5歳、科に片寄りなく利用されていた。月平均利用者数も年々増加、その活動は院内で広く認知されていた。看護師からは口腔環境の改善、業務負担軽減で高く評価され、継続した介入をほぼ全員が希望した。しかし、退院後の継続利用は10%程度に留まり、院内での連携の問題や退院後の継続利用への理解等の課題も浮き彫りになった。口腔サポートセンターは、院内での栄養サポートチーム (Nutrition support team; 以下、NSTと略) 活動にとって有用な活動であり、今後、栄養を介した地域連携の核となる可能性があると考えられる。