著者
藤坂 洋一 中川 誠司 荻田 武史 外池 光雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. US, 超音波 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.606, pp.13-17, 2004-01-21

骨導振動子による呈示では,気導音では可聴帯域外となる20kHz以上の高周波であっても知覚可能であることが知られている.また,高度感音性難聴者においても,骨導可聴音提示では知覚できないが,骨導超音波であれば知覚可能であることが報告されている.我々は重度難聴者のための骨導超音波補聴器の実用化を目指している.実用化を目指すうえで音声の明瞭性が重要となる.これを解決するためには骨導超音波知覚のメカニズムを明らかにしなければならない.知覚メカニズムには幾つかの仮説が存在するが,我々は蝸牛関与説を重視している.知覚メカニズムの解明に向けた第一段階として,本報告では振動子から蝸牛へ至る波動伝搬を数値的に解析し,その特性を観察することとした.
著者
荻田 武史 尾崎 克久
出版者
東京女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

対称系の固有値問題に対して、ニュートン法系統の2次収束性を持つ固有ベクトルの反復改良アルゴリズムを開発した。これによって、常に最良の近似解(固有値及び固有ベクトル)を得ることが可能な数値計算アルゴリズムの開発も可能となった。対称系の固有値分解については、現在、ハウスホルダー変換による三重対角化を用いる方式が主流であり、それに基づいて様々な数値計算アルゴリズムが提案されているが、本研究における基本方針として、特定のアルゴリズムに依存しない、一般的な高精度化の方式を考え、汎用性を確保した。すなわち、解の初期値を既存の方式で求め、反復改良によって解の精度を改善する方式を考えた。また、上記と並行して、提案アルゴリズムの効率化を高めるために、行列乗算の高精度計算に関する研究も継続して推進した。特に、隣接浮動小数点丸めという性質(これは真値に対して、隣接する浮動小数点数のどちらか一方の数値結果)を満たす、非常に高信頼でかつ高速な行列積アルゴリズムを提案した。問題が良条件な場合、提案手法は近似計算の数倍程度の計算時間により結果を求められることを示した。また、連立一次方程式や固有値問題に関して、高精度計算アルゴリズムを提案した場合、その厳密な検証法が必要になる。真の解が事前にわかる連立一次方程式、真の固有値(特異値)が事前にわかる行列の生成法について研究した。提案手法は連立一次方程式においては行列・ベクトル積のみ、固有値問題については行列積1回またはそれ以下の計算コストで連立一次方程式や行列を生成可能である。連立一次方程式に対するテスト問題の研究結果は論文として採録された。さらに、上記の研究によって開発した固有値分解における新しい数値計算アルゴリズムをもとに、計算量の再定義を行った。
著者
荻田 武史
出版者
東京女子大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究の目的は、数値線形代数におけるロバストな行列分解アルゴリズムの体系を構築することである。数値線形代数は科学技術計算の基礎であり、そのための高い安定性を持つアルゴリズムを開発することは、非常に重要である。これを達成するためには、様々な行列分解に対して、個々のアルゴリズムの詳細よりもメタなレベルにおいて共通の枠組みを創造しなければならなかった。そこで、理工学の多くの分野に応用がある実対称正定値行列に対して、高い安定性を持った行列分解アルゴリズムの開発に成功した。さらに、多くの応用がある固有値問題や特異値問題に対しても、高い安定性を持った数値計算法を提案した。