著者
角谷 千恵子 荻野 敏 池田 浩己 榎本 雅夫
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.554-565, 2006-05-30 (Released:2017-02-10)
参考文献数
32

【目的】第2世代抗ヒスタミン薬7剤について,スギ花粉症に対する初期療法の有効性ならびにcost qualityの比較を行った.【方法】2003年のスギ花粉飛散期に大阪・和歌山地区の耳鼻咽喉科外来において初期療法に関するアンケート調査を行った.【結果】単剤療法を受けていた症例は,アゼラスチン15例,セチリジン15例,エバスチン36例,エピナスチン16例,フェキソフェナジン16例,ロラタジン群60例,オキサトミド群17例であった.無治療群510例を対照群とし,比較を行ったところ,全般症状改善度,くしゃみ,鼻汁および眼の痒みの程度に8群間で有意差が認められた.一方,7薬剤間に有意な有効性の差は認められなかった.各薬剤について「有効例1例を得るために必要な薬剤費」を算出したところ,cost qualityに優れる上位3剤は,アゼラスチン,ロラタジン,フェキソフェナジンであった.【結語】第2世代抗ヒスタミン薬7剤の有効性に明らかな差はなく,そのcost qualityには薬価が大きく関連していた.
著者
荻野 敏 菊守 寛 後藤 啓恵 入船 盛弘
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.222-231, 1996-04-15 (Released:2011-08-10)
参考文献数
6
被引用文献数
1

男性23名, 女性33名のイネ科花粉症を対象に, アゼラスチンの効果を初期投与, 治療投与の2群で比較検討した。著明改善は初期投与群28.6%, 治療投与群23.8%と初期投与群で良い効果が見られた。逆に改善以上の改善率はそれぞれ57.1%, 71.4%と治療投与群でより良い効果が認められた。また, 初期投与群では平均約4週間早く投与を開始したことから8週目, 治療投与群では4週目とほぼ同じ時期の症状を比較すると, 初期投与群では症状はより軽症に抑えられている成績が得られた。治療投与群の3例に軽度の眠気の副作用が認められたが, 薬剤の継続投与に問題はなかった。アゼラスチンはイネ科花粉症に対しても初期投与, 治療投与いずれにおいても優れた効果が見られ, 特に花粉飛散初期からの投与は有効性が高く使用する価値のある薬剤であると思われた。
著者
藤井 つかさ 荻野 敏 山邉 えり
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.55, no.12, pp.1543-1550, 2006
被引用文献数
3

【目的】スギ・ヒノキ花粉飛散量が大きく異なる3年間において,Web siteにアクセスした花粉症患者の症状・セルフケアなど,どのような項目で相違がみられるかを検討する.【方法】2003年・2004年・2005年の2月1日から4月30日までの3カ月間,B薬品株式会社のWeb siteによるアンケート調査を行った.【結果】初期療法の施行率は花粉飛散量と関連し,多い年は高率であり,少ない年は低率であった.前年との症状の比較では,飛散量が症状の重さに関係する成績が得られた.特に花粉飛散後期(3月15日〜4月30日)では「鼻閉」・「眼のかゆみ・涙」・「不眠」の症状において飛散量との間に明確な関連がみられた.セルフケアに関しては,外出に関連した項目と飛散量との間に関連がみられた.【結語】Web siteを用いたアンケート調査はインターネットにアクセスできる患者という限定した調査ではあるが,花粉症患者の動向調査においては極めて意義があると思われた.
著者
福録 恵子 荻野 敏
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.385-393, 2001
被引用文献数
15

通年性アレルギー性鼻炎は患者の日常生活に様々な影響を及ぼす.しかし患者の主観的健康観については現在よくわかっていない.そこで通年性アレルギー性鼻炎患者のQOL向上のため,個別的ケアに役立つ情報の一般性評価を目的としSF-36を用いて主観的健康観のQOL測定をおこなった.14施設において,1999年6月から同年8月にかけて,外来受診した通年性アレルギー性鼻炎患者252名を対象とした.その内,有効回答を得た249名について患者背景因子を調査し,健康関連QOLスコアに影響を与える因子の同定を行った.また,健康人及びスギ花粉症患者とのHRQOLスコアを比較検討した.結果として,年齢,性別,合併症の数は,HRQOLに対する有意な寄与因子であった.鼻閉がQOLに最も大きい影響を及ぼしており,他症状と比較し重症度に及ぼす影響が大きいと考えられた.スギ花粉症患者と通年性アレルギー性鼻炎患者は健康人と比較し,QOLスコアが有意に低下していた.両者に有意差は認められないが,スギ花粉症患者は通年性アレルギー性鼻炎患者と比較し低いQOLスコアを示した.
著者
池田 七衣 門田 亜矢 荻野 敏
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.464-470, 2005
参考文献数
7
被引用文献数
2

【目的】花粉症患者数は増加傾向にあるが, 医療機関を受診せず市販薬ですませてしまう患者も多い. 患者動態を把握するにあたり, 医療機関だけでの調査では不十分と考え, 患者が比較的利用しやすいWebサイトを用いその実態についてアンケート調査を行った. 【方法】2003年2月1日から4月30日, B製薬会社のWebサイトによるアンケート調査を行なった. 花粉飛散数とアクセス数の相関, 花粉症情報収集源, 初期治療につき検討した. 【結果】Webへのアクセス数は348,045件, アンケートに回答した患者は1,612名であった. アクセス数と花粉飛散実測値には有意な正の相関がみられた. 花粉症の情報源はテレビ/ラジオが61.2%, インターネットが61.2%であった. 治療開始時期について, 年齢別には, 40歳未満は症状出現後が多く, 40歳以上は症状出現前が多かった. また, 地域別にみると, 東日本では症状出現前が多く, 西日本では症状出現後が多かった. 【結語】年齢, 地域などが受診状況に影響を与えることが認められた. 近年パソコンの普及率も急速に広がり, 今後さらにインターネットからの情報提供は重要性を増す. 情報提供者には信頼性の高いWebサイトの製作が求められる.