著者
林 光緒 荻野 裕史
出版者
日本生理心理学会
雑誌
生理心理学と精神生理学 (ISSN:02892405)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.52-64, 2021-04-30 (Released:2022-03-23)
参考文献数
61

入眠困難は,生理的覚醒だけでなく不安や懸念などの認知的覚醒によっても生じると考えられている。しかし認知的覚醒によって入眠過程のどの部分が妨害されるのかについては明らになっていない。本研究は,9つの脳波段階を用いて入眠努力が入眠過程に及ぼす影響を検討した。睡眠愁訴をもたない健常な男子大学生(9名,21―23歳)が2夜の実験に参加した。彼らは眠くなったら眠る(中性条件)か,できるだけ早く眠る(努力条件)よう教示された。その結果,努力条件において,脳波段階1(α波連続期)と4(平坦期)の出現時間延長した。これらの結果から,入眠努力は覚醒系の活動が低下する入眠期初期にのみ影響を及ぼす可能性が示唆された。
著者
廣田 新平 柴 喜崇 荻野 裕 高瀬 幸 畠山 莉絵
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.38 Suppl. No.2 (第46回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.EcOF2106, 2011 (Released:2011-05-26)

【目的】 近年,要介護者数は増加し,家族が介護を行う割合も高くなっている(荒井,2002).特にパーキンソン病(以下,PD)は60歳代での発症率が高く(Adams,2009),直接,死因となる疾患でないため,長期介護が必要となり,在宅介護での家族の介護負担が大きな問題になっている. 介護負担に関連する要素の一つである睡眠障害はうつ(兼坂,2007),蓄積疲労感(山田,1999)とも関連しており,主介護者の睡眠障害は長期間の介護を行う上で重要視すべき問題である.実際に,睡眠障害はPD患者だけでなく,主介護者でもみられ,主介護者とPD患者の睡眠障害には関連があることが報告されている(Pal,2004).本研究の目的は3年間のPD患者の症状変化が主介護者の睡眠障害に与える影響を明らかにすることとした.【方法】 特発性PD患者14名(Modified Hoehn & Yahr StageIII~V)と同居中の主介護者を対象に調査した.調査項目は睡眠障害の指標としてPittsburgh Sleep Quality Index(PSQI)(/21点),PDの重症度はUnified Parkinson`s Disease Rating Scale(UPDRS)(/202点),うつ病の評価はGeriatric Depression Scale15(GDS15)(/15点)を用い,その他,年齢,性別,介護サービス(訪問リハ,通所介護事業,通所リハ)の合計利用時間などの基本情報の調査も行った.なお,PSQIは6点以上で睡眠障害ありと判断される(Doi,2000).PSQI,GDS15は主介護者,患者を対象とし,調査を行った.1年目をベースラインとし,3年後に同項目の追跡調査を実施し,ベースライン調査時の値と追跡調査時の値の3年間の差を変化量とし算出した.また,PSQI,UPDRSに関しては下位項目の変化量を算出し検討した.それぞれの変化量の相関はSpearmanの順位相関係数,変化の相違はWillcoxon検定にて検討した.なお,有意水準は5%とした.【説明と同意】 参加者には本研究内容を口頭及び書面にて十分説明を行い,自署により同意を得た.【結果】 睡眠障害ありであったものは,全体対象者14名中,ベースライン調査時の主介護者6名(42.9%),PD患者9名(64.3%),追跡調査時の主介護者11名(78.6%),PD患者10名(71.4%)であった.ベースライン調査時,追跡調査時で主介護者のPSQI合計点,下位項目に有意な悪化はみられなかった.一方,PD患者でもベースライン調査時,追跡調査時でPSQI合計点,下位項目に有意な悪化はみられなかったが,下位項目[睡眠剤の使用]のみに悪化傾向がみられた(P=0.07). 主介護者のPSQI合計点の変化量とPD患者PSQI合計点の変化量の間に中等度の有意な相関がみられ(r=0.56,P=0.04),PD患者のUPDRSの変化量とPD患者のPSQIの変化量,PD患者のUPDRSの変化量と主介護者のPSQIの変化量の間には相関はみられなかった.一方で主介護者のPSQIとPD患者のGDS15の変化量の間に中等度の有意な相関がみられた(r=0.61,P=0.02). 3年間の変化量でみるとUPDRS合計点は15.4±20.8(点)と有意に悪化したが,GDS15は主介護者₋0.07±2.6(点),PD患者₋0.5±3.7(点)と,悪化はみられなかった.一週間の介護サービス時間は変化量3.1±5.6(時間)であり,有意に増加していた.【考察】 PD患者だけでなく,主介護者にも睡眠障害は多くみられた.主介護者とPD患者のPSQIの変化量に相関がみられ,PD患者自身の睡眠障害の変化が主介護者の睡眠障害に影響を及ぼすことが示唆された.また,主介護者の睡眠障害はPD患者のうつ症状の悪化に影響をうけることが示されたが,PDの総合的な症状の悪化による影響は見られなかった.PD患者のUPDRSとPSQIの変化量に相関はなく,睡眠剤の使用・介護サービス時間の増加から,PD患者は症状に伴う,睡眠障害の悪化を睡眠剤,介護サービスの利用で対処していると考えられる.また,主介護者は睡眠障害があるにも関わらず,睡眠導入剤などの医学的介入を行っていないことが推測された.【理学療法学研究としての意義】 本研究により,主介護者はPD患者と同様に睡眠障害があるが,PD患者に比べ睡眠障害への対処が十分でないことが示唆された.しかし,主介護者の睡眠障害はPD患者の睡眠障害,うつ症状の悪化に影響を受けるため,PD患者の睡眠障害やうつ病の症状の軽減を図ることで,主介護者の睡眠障害は軽減すると考えられ,主介護者の睡眠に対してもPD患者の睡眠障害,うつ症状を軽減することが重要であることが明らかになった.
著者
小田原 誠 荻野 裕司 瀧澤 佳津枝 木村 守 中村 訓男 木元 幸一
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.81-86, 2008-03-15 (Released:2008-04-30)
参考文献数
15
被引用文献数
1 1

大麦黒酢,大麦糖化液,酢酸を高血圧自然発症ラット(SHR)に与え,大麦黒酢が血圧に与える影響について調べた.その作用機序の検討としてin vitroにおけるアンジオテンシンI変換酵素(ACE)阻害活性の測定を行った.また,酸度とエキス分を等しくした大麦黒酢と米黒酢について,SHRを用いた単回投与試験を行い,血圧降下作用を比較した.(1)単回投与試験,連続投与試験のいずれにおいても,大麦黒酢は蒸留水(対照)と比較して有意に血圧を降下させることが示された.これにより,大麦黒酢は血圧降下作用を有することが明らかとなった.(2)連続投与試験において,酢酸だけでなく大麦糖化液においても血圧降下作用が認められたことから,大麦黒酢の血圧降下作用は,酢酸と大麦由来の成分の両方によるものと考えられた.(3)大麦糖化液ならびに中和した大麦黒酢においてACE阻害活性が認められたことから,大麦黒酢には大麦由来の血圧降下作用物質が含まれ,ACEを阻害することで血圧上昇を抑制していることが示された.(4)酸度とエキス分が等しくなるように調製した大麦黒酢と米黒酢について,SHRを用いた単回投与試験を行った.大麦黒酢と米黒酢はどちらも対照と比較して有意に血圧が降下しており,今回の実験では大麦黒酢の方が血圧降下の程度が高かった.このことから,大麦黒酢は米黒酢と同等以上の血圧降下作用を有することが示された.
著者
荻野 裕也 杉本 直也 片桐 滋 大崎 美穂
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告グループウェアとネットワークサービス(GN) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.13, pp.1-8, 2014-01-16

遠隔地間の利用者同士に同室感を与え共同作業を支援することを目的とした 「t-Room」 では,Windows 特有のメディア処理遅延の大きさを軽減させるために新たに Linux を OS とするミドルウェアの開発が進められている.新ミドルウェアによって制御される Linux 版 t-Room では,先行研究により開発済みの映像伝送システムと音響サーバをカメラなどのデバイスを制御するデバイスサーバとして使用するが,現状ではそれぞれ独立しており t-Room として機能させることはできない.t-Room として動作させるために,これらのデバイスサーバを制御するデバイス制御システムが必要であり,本研究にてその設計と実装を行った.本稿では,デバイス制御システムの設計と実装,3 地点間通信などの実際に想定される状況における動作確認の結果について報告する.To alleviate the processing delay of a remote collaboration support system called "t-Room" on Windows, we develop a new middleware on the Linux operating system. In previous research, video transmission system and acoustic server are developed on Linux and these work as device servers for video and sound transmission within the new middleware framework. To control these device servers as t-Room, we develop a device control system. In this paper, report its design and implementation result, and show its validation in various environment, like 3 points connection.